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資金調達ラウンドとは?スタートアップが知っておくべきステージや資金調達方法を解説

資金調達ラウンド(投資ラウンド)は、投資家が投資をする際や、スタートアップが必要な調達資金額や調達方法を判断する際に目安となる考え方です。事業段階ごとにラウンドが異なるため、まずは自社がどのフェーズなのか確認する必要があります。

今回は資金調達ラウンドの種類や、事業のフェーズに応じた資金調達方法について解説します。

目次

資金調達ラウンドとは

資金調達ラウンドは、投資家がスタートアップへの投資を判断する目安となる考え方である一方で、企業側が企業の成長段階を適切に把握し、必要な資金額や資金調達の方法を検討するための考え方でもあります。事業のフェーズによって検討すべき資金調達方法も移り変わるため、ラウンドと呼ばれます。

企業の状況に応じて、エンジェル(起業前)→シード期(起業前)→アーリー(起業直後)→プレシリーズA(事業の検証段階)→シリーズA(事業が本格的にスタートした段階)→シリーズB(事業が軌道に乗った段階)→シリーズC(安定した収益を確保できるようになり、事業の拡大を狙う段階)に区分されます。

初期のフェーズほど必要な資金額が少なく、調達方法の選択肢も限られていますが、成長に伴い、調達額が増えて多様な手法が取れるようになるのが一般的です。

資金調達ラウンドを意識して、今の状況に適した資金調達を行わないと、途中で資金不足に陥ったり、調達自体が難しくなったりするリスクが伴います。

事業段階ごとの資金調達ステージ

上記の通り、企業が置かれる事業段階ごとに、適切な資金調達ラウンドは異なります。それらのラウンドの大きなくくりとして、「ステージ」があります。

ここでは資金調達ステージの種類や調達額、それぞれのステージに該当する投資ラウンドについて解説します。

1.シードステージ

シードステージは起業前の準備段階を示し、商品開発や体制の構築に奔走するフェーズです。この段階では収益を生み出す商品や仕組みが存在しないため、赤字が続くことがあります。

実績も信用力もないのが通常なので、利用できる資金調達方法も限られます。商品開発や人材の確保など確実に費用を投じるものがあるため、選択肢が少ないなか、どのように資金を確保するかがカギをにぎります。

資金調達額は数百万円の規模になるのが一般的です。投資ラウンドは、エンジェルラウンドやシードラウンドが該当します。

2.アーリーステージ

アーリーステージは準備を重ねてきた事業計画や製品を形にして実際に会社を興す段階です。

会社の設立費用や運転資金、設備投資など、シードステージと比べて必要なコストが増えるのが特徴です。事業を始めて間もない段階のため収益性が低く、赤字が続くことも珍しくありません。

シード期と比べて資金調達の選択肢は増えるものの、信用力や実績が乏しく、十分な資金の確保が難しいことがあります。

コストが増えるため、数千万円規模の調達が必要な場合もあり、資金繰りに悩まされる可能性が高いフェーズです。

投資ラウンドはプレシリーズAラウンド〜シリーズAラウンドであるのが一般的です。

3.ミドルステージ

ミドルステージはアーリー期で形にした基盤を成長させる段階で、自社の製品やサービスが市場での認知を獲得し始めます。

とはいえ安定して収益を確保できるフェーズとはいえず、今まで以上に資金を調達して、優秀な人材の確保やマーケティングに注力する必要があります。

ミドルステージはグロースとも呼ばれ、売上や認知度が一気に向上する段階です。調達方法の選択肢が広がり、調達額も数億円の規模に達するケースも珍しくありません。

投資ラウンドはシリーズBであるのが一般的です。会社の未来を占う重要な局面なので、緻密な資金計画の策定や複数の投資先の検討などが必要です。

4.レイターステージ

レイターステージは会社が一定の規模に達して、さらに事業拡大を狙う局面で、新規事業の展開にもリソースをささげるような状態です。

投資ラウンドとしては、スタートアップの最終段階に位置するシリーズC以降が該当します。今まで以上に求める水準が高いこともあり、プラン次第では数億~数十億円の調達額に達するケースもあるでしょう。

信用力や知名度が向上しているため、資金調達の選択肢が豊富で、巨額の確保が期待できます。

起業時やスタートアップにおける資金調達の重要性

起業時やスタートアップは資金調達の重要性が大きいと言われます。資金需要が激しく、自己資金だけで賄うのは困難であるためです。

新規事業を軌道に乗せるためには、設備や技術への投資、人材の獲得や育成、顧客獲得のための広告宣伝など多方面でコストをかける必要があります。

とくに起業前〜起業直後のシード・アーリーステージでは、スピード感を持った事業展開が求められます。自己資金だけで何とかしようとするとタイミングや気運を逃しかねないため、資金調達の必要性が大きいのです。

起業前後(シードステージ)の資金調達方法

シードステージはビジネスモデルの大枠は決まっている一方で、商品やサービスの開発にはいたっていない段階を指します。

企業前後のフェーズでは活用できる調達方法が限られ、希望調達額を確保しにくい傾向があるのが一般です。

シードステージであるエンジェルラウンドとシードラウンドの資金調達方法を解説します。

エンジェルラウンド

エンジェルラウンドはプレシードラウンドとも呼ばれ、スタートアップの最初期を示します。

資金調達の主な用途は製品開発の体制構築にかかわる人材の確保です。調達額は数百万円程度が一般的で、他のフェーズと比較して相対的に少額・短期間で行われます。

エンジェルラウンドで有効な資金調達の方法は、エンジェル投資家の活用です。両者の語源は同じく、創業間もないイギリスの劇団に融資した富裕層を意味します。

エンジェル投資家は挑戦をしたい起業家に対して無償で出資を行う、まさに天使のような存在です。しかし、協力を仰ぐには収益性の高いビジネスモデルを提案し、事業への熱い想いを語る必要があります。

シードラウンド

シードラウンドは今後収益を高めるために、緻密な計画の策定や商品の開発を進める段階です。

この段階では信頼性が乏しく、公的機関の融資や自治体の補助金の利用は難しい傾向があります。シードラウンドの資金調達方法は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の活用が一般的です。

将来的に収益が見込めるビジネスモデルを策定し、投資家に期待感をもたせるアピールができるかが重要なポイントです。

スタートアップ期(アーリーステージ)の資金調達方法

スタートアップは革新的なアイデアやサービスをもとに事業を展開する企業です。

こちらでは、アーリーステージに該当するプレシリーズAとシリーズAの資金調達方法について解説します。

プレシリーズAラウンド

プレシリーズAラウンドはシリーズAラウンドにふさわしい規模や目標を目指している企業です。シリーズAよりも必要となる調達金額は少額になる傾向があります。

プレシリーズAラウンドではVC(ベンチャーキャピタル)の活用が有効です。多数の投資家から資金を集めて運用し、規模の大きな出資を受けられる傾向があります。事業に対する経営支援のサポートを受けられる場合もあるため、事業拡大を目指すなら積極的に活用したい方法です。

シリーズAラウンド

事業が本格的にスタートして顧客も増え始めるシリーズAは、エクスパンション(拡大・拡張)とも呼ばれ、認知度の拡大を図る市場調査やマーケティング費用に多額の費用が生じます。

プレシリーズAラウンドと同様にVCを活用するほか、クラウドファンディングの活用も有効な選択肢の一つです。

クラウドファンディングとは、インターネット上でビジネスモデルや事業への想いをアピールして、一般の人から広く出資金を募る方法です。一人当たりの出資額が小さくても母数が大きいため、成功すれば目標額以上の出資を受けられる可能性があります。

クラウドファンディングで失敗を防ぐには、実績が豊富で評判が良いプラットフォームを選ぶ必要があります。

資金調達で気をつけるべきポイント

資金調達で資金繰りの悪化を引き起こさないためには、自社のステージを把握し、適切な規模の借り入れが求められます。

中長期的な視点を持ち、次の投資ラウンドを見据えて調達先や調達額を決めることも重要です。あまりにも外部の資金に頼りすぎると経営権を奪われかねないので注意が必要です。

資金調達で気をつけるべき3つのポイントを解説します。

自社のステージを把握する

自社が置かれたステージを把握することで、効果的な資金調達の実現に結びつきます。ラウンドごとに必要な資金調達額や適した調達方法が異なるので、まずは今どの段階なのかを確かめましょう。

シード期やアーリー期は銀行融資や補助金、助成金の活用は難しい可能性があります。信用度や実績に応じて使える調達方法は変わるので、調達先を間違えないようにしましょう。

次の投資ラウンドを見越して資金調達をする

投資を申し込んでから実際にキャッシュを得られるまでにはタイムラグが生じます。基本的に資金が必要な段階で投資先を探しても、すぐに新しい投資先を見つけることはできません。

中長期的な資金需要には何があるか把握し、先を見越した資金調達が必要です。そのため、フェーズに応じた資金調達の目的を考えましょう。

たとえばシリーズAでは、事業を軌道に乗せるための費用確保がメインです。また、次のフェーズであるシリーズBでは、規模の拡大や株式上場を見据えた資金調達になるでしょう。

出資を受ける際のリスクを把握する

基盤が脆弱な段階で株式を投資家に渡しすぎると、経営権が奪われる危険性があります。原則として、経営権は持ち株比率で決まります。比率によっては株主の判断で取締役を解任できるので、経営者が経営権を失いかねません。

また、投資契約書の内容にも十分な注意が必要です。なかには取締役をベンチャーキャピタルから直接派遣するという趣旨の条文が含まれる場合があります。

契約書を結ぶ際は、必ず会社にどのような不利益が生じるか確認し、必要があれば弁護士への相談も検討しましょう。反社会的勢力の投資家がいないとも限らないので、融資を受ける際は複数の投資先の話を聞くことも重要です。

まとめ

スタートアップの創業期や事業を開始した直後は資金需要が激しく、融資や出資の積極的な活用が求められます。

企業が適切な資金調達を行うには、いまどのラウンドにいるかを意識した調達が必要です。信用力や実績に乏しい段階では活用できる方法が限られるので、いかに資金需要を満たすか、策を巡らせなくてはなりません。

資金調達の方法の選び方が分からない場合は、スタートアップ支援に強い弁護士や税理士のサポートを受けることを検討しましょう。

Moner Forward Kessai

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