事業拡大を目指すスタートアップの心強い存在。進化する「第3の」資金調達方法
今回、マネーフォワードケッサイにとって初となる、出資債権の買い取りによるサービス利用が実現。利用を進めたのはEC・D2Cにおけるビジネス支援の分野で急速な成長をみせているACROVE(以下、アクローブ)だ。さらに成長を加速させるために本サービスを利用した同社の狙いとは?マネーフォワードケッサイ ファイナンス事業本部 事業推進部部長の中野綾乃が、アクローブの代表取締役である荒井俊亮に話を聞いた。
ECブランドの販売支援とロールアップの2事業を手がけ、急速な成長をみせているアクローブ。自社開発のBIツール「ACROVE FORCE」を軸に「ECプラットフォーム事業(旧:ECサービス事業から変更)」ではEC売上成長率平均300%の販売支援を約160社に提供し、開始約1年の「ECロールアップ事業」では7件のM&Aを実現し、独自のデータ分析と手法により事業を成長させている。2023年6月に中部支店、9月に東北支店を開設するなど、その勢いは強まるばかりだ。
中野綾乃(以下、中野):ミドルレイターステージに入り、IPOの準備もされていると伺いました。
荒井俊亮(以下、荒井):はい。その原動力となっているのが私たちの強みであるビッグデータです。アマゾンや楽天といったECの小売の世界は日々ロジックやトレンドが変化しているので、いち事業者目線だとPDCAがたてにくい。「ACROVE FORCE」で複数の事業者のセールや広告による収益を集約・分析することで傾向が見えてきます。このデータを軸に、売上最大化のためのPDCAサイクルの回転をサポートしています。
中野:スタートアップでこれだけのM&Aを成功させているのも比類がありません。
荒井:ありがとうございます。ECロールアップ事業は、販売支援が非常に好評だったことを受け、「ブランドを自社のアセットとして伸ばしていきたい」という思いでスタートしました。
中野:「マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startup」をご利用いただくきっかけとなったのは、マネーフォワードグループ会社であるHIRAC FUND主催のイベント「YouthS」の情報交換会に御社CFOの吉田和樹さまがご来訪くださったことでした。資金調達をされているタイミングというお話だったので、「マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startup」の資料をお渡したんです。「エクイティでもデットでもない資金調達でスタートアップの支援をしています」とスキームの説明をしたら、「これが最後の一枚です」と名刺を出してくださって。
荒井:吉田から、出資債権の買い取りもできると聞いて驚いたと、話を聞いていました。短期の貸付は売り上げに対する債権が多いので、エクイティに対する債権は珍しいですよね。
その当時、当社は、まさにシリーズBラウンドをまわっているところでした。毎月10人規模の採用やM&Aを行っていたため、ブリッジファイナンスのニーズがあり、「資金調達のオプションが増えるかもしれない」と希望を感じ、zoomでお話を伺いました。
中野:その後、Facebookのメッセンジャーでのやりとりを経て、資金調達のフェーズへ移行していきました。事業成長のアクセルを踏み続けるためのご利用でしたね。
荒井:はい。余裕あるキャッシュフローの維持が目的でした。
荒井:今回は出資債権でのサービス利用でしたが、他のブリッジファイナンスと比較して一番大きなメリットとして感じたのは、スピード感と提出資料の少なさです。我々のようなストック型ビジネスの場合、一件あたりの契約金額が大きくない。だから、売上債権で進めようとすると何百社分の請求書や契約書を用意しなくてはならない。あの時期はエクイティの契約書の作成もあり、法務や経理が多忙を極めていましたから、そんな余裕は全くありませんでした。しかしエクイティの債権ひとつとなれば、提出書類は進行中の契約書や、先方とのやりとりの共有で済みます。スピーディーかつ、手間なく楽にできるのは非常に大きかったですね。
中野:まさに、スタートアップの負担を減らして資金調達してもらうのが私たちのミッションです。アクローブさんのように「小口の売掛債権がたくさんあってファクタリングするには膨大な手間と工数がかかる」というスタートアップに一括で資金をおだしできるのも強みです。VCさんからのエクイティ調達のエビデンスをいただいたのは、審査の面での安心材料にもなりました。
荒井:エクイティやデットの場合、通常は着金まで半年から一年はかかります。その間に何度もミーティングやメールを何十回、何百回と重ねる必要があるのですが、2~3週間程度のスムーズなやりとりで期待値を超える金額をだしていただいたので、本当に驚きました。
中野:経営者の労力を減らしたいので、書類提出の手間をいかに減らすかは常に考えています。スピード感を重視して、連絡ツールはメッセンジャーでしたね。
荒井:メッセンジャーは、LINEのような感覚でやりとりができるのが良いですね。当初は売掛債権でのファクタリングを検討していましたが、「出資債権の方が工数もかからず、良いかもしれない」とわかり、クイックに切り替えることができました。不明な点がでてきてもその都度、素早く解決していただけたので、信頼感が生まれるのも早かったと思います。
中野:メールのように「お世話になります。」「よろしくお願いします。」と形式張る必要がないので、時間短縮になりますよね。そのおかげで、こちらの審査もスムーズに進めることができました。
中野:アーリーステージのスタートアップになるほど、VCさんからの調達が難しいケースも発生するかと思います。
荒井:スタートアップの界隈では、知り合いの経営者同士で貸し付けしていたという話も聞きます。監査法人からも指摘が入るし、クリーンな決算でなくなってしまうので、できれば選択しない方がよい。スタートアップのためのこのような資金調達の手段があるのは、業界全体をみたときに、非常に良いことだと感じています。
中野:ありがとうございます。ただ、私たちのサービスの認知がまだまだ少ないのが課題だと感じています。荒井さまは、資金調達の手段についてどのように情報収集をされていますか?
荒井:私自身、ファイナンススキームに関する情報のキャッチアップは怠らないようにしています。CFOの吉田ともよく話をしますし、メンターとなってくれているベテランの経営者の方から経験を踏まえたアドバイスをいただくようにしています。
中野:なるほど。私自身も、荒井さまをはじめ、スタートアップの方々から様々な実例についてお話をお伺いすることで、スタートアップの経営に関する知識を集積することができています。
荒井:スタートアップのビジネスへの理解があるファクタリング事業者は珍しい。すぐに認知拡大するのではないでしょうか。
中野:ありがとうございます。今後は、よりスタートアップのビジネスを加速させるため、審査にかかる手間をより軽減していきたいと考えています。例えば、マネーフォワードグループが提供する当社のマネーフォワード クラウド会計等のサービスとの連携を行い、活用できれば、手動での書類提出そのもののフローを省くことができる可能性があります。
荒井:私たちが都度書類を送らずとも、財務状況から資金額を算出していただけるのですね。それが実現すればかなりの工数の削減になりますし、着金までの期間も短縮できる。もちろん今回も非常にスムーズでしたが、そうなるとより嬉しいですね。
中野:経営者が本業に集中しながらスムーズに資金調達できるような世界をつくっていきたいので、そのために私たちは、スタートアップにとって縁の下の力持ちとなるような存在を目指していきます。
荒井:アクローブも今後、素敵な商品を展開される地方の事業者様のご支援の強化、素晴らしい事業を次世代に紡ぐように継続してM&Aを実施していきたいというビジョンを持っています。私たちのようにスピード感をもって事業拡大を目指すスタートアップにとって、非常に心強い存在だと思います。
「社会の果樹園を創造する。」をミッションに、一つでも多くの素敵な事業・モノ・想いを次代に紡ぐために、販売支援とM&Aの2事業を展開しております。自社独自のビッグデータを活用した、EC売上最大化を実現する一気通貫の販売支援「ECプラットフォーム事業」と、ブランドと事業の育成を目的としたM&Aや事業承継型M&Aを実現する「ECロールアップ事業」の2事業です。世界でも類を見ない2事業同時展開のユニークなビジネスモデルが特徴であり、2事業の相乗効果が強みです。
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