スタートアップにとって、資金調達の失敗は経営そのものの失敗につながりかねません。事前に「どのような失敗例があるか」を把握し備えておくことで、リスクを回避し、より効率的かつ効果的に資金調達を進められます。
本記事では、スタートアップ企業の資金調達でよくある失敗例の紹介に加え、成功させるためのポイントも紹介します。
まず、スタートアップの資金調達に関するよくある失敗例を4つ紹介します。
それぞれ詳しく見ていきます。
スタートアップのなかには、持株比率を減らしすぎてしまうケースがあります。特にシードやアーリーのスタートアップは予算が限られているため、大規模な資金調達を狙って株式を多く譲渡しかねません。
必要以上に多くの株式を投資家に譲渡すると、創業者や初期の株主の持株比率が低くなります。持株比率が下がれば経営の自由度が低下し、現経営陣が会社の意思決定における裁量権を失うリスクが生じます。
さらに、経営者の持株比率が少ないことを懸念するベンチャーキャピタルもあります。持ち株比率を減らしすぎてしまうことが、将来の資金調達において不利に働く可能性があることを念頭に置きましょう。
資金調達契約には複雑な条項が多く含まれています。十分に吟味しないまま契約を結ぶと、予期せぬ問題が発生する可能性があります。たとえば、投資家に対する優先株の発行や特定の条件下で発生する株式買戻し条項などが含まれている場合、経営に大きな影響を与えかねません。
特に、契約書で次の点がどのように記載されているかはかならず確認しておきましょう。
資金調達を成功させるためには、これらの条項を含めた契約のすべてを専門家とともに検討し、企業にとって不利な条件を回避することが重要です。
投資家が運用しているファンドの契約期間が終了すると、投資した資金の回収が求められる可能性があります。手元に株式を買い戻す資金がない場合、新たな資金調達や事業資産の売却を余儀なくされることがあるでしょう。
たとえば、ベンチャーキャピタルから資金調達する場合、一定期間が経過してもIPOができないと、「創業株主の株式を含む全株式を出資者主導で売却する」または「発行会社が出資者の株式を買い取る」といった措置を取られる可能性があります 。結果として、不本意な状態で会社の経営権を手放すことになりかねません。
このような事態を避けるためには、契約の段階で資金回収に関する条項を慎重に確認することが重要です。契約内容をよく確認し、必要な準備を整えておくことで、将来的なトラブルを回避できます 。
法律の内容を十分理解せずに資金調達をすると、意図せず法に触れてしまう可能性があります。たとえば、金融商品取引法では、有価証券を発行する場合、有価証券届出書や通知書を財務局に提出する必要があると定めています。
違反が発覚すると、罰金や事業活動の制限、さらには信頼度の低下など、さまざまなリスクに直面しかねません。特に企業内に法律関連に詳しい人材がいない少人数のスタートアップの場合、社内だけで準備を行おうとすると知識が不十分なことが多く、場合によっては事業継続が困難になるリスクが高まります。
資金調達する際には、関連する法律や規制を十分に理解し、法的なアドバイスを受けることが重要です。
資金調達できたことに安心し、その後の判断を誤ってしまうケースも少なくありません。ここではスタートアップの資金調達後に起こりやすい4つの失敗例を紹介します。
それぞれ詳しく解説します。
予想以上にPMFを達成できるなど、早期に事業がスケール化するスタートアップがあります。ただし、意図しないスケール化は、場合によっては経営に大きな影響を引き起こしかねません。
特に注意すべきなのが人材の採用です。成長を期待して過度に従業員を採用すると、実際の業務量を超えた人員を抱えることになります。売り上げが予測どおりに伸びなかった場合、利益の圧迫や財務状況の悪化を招く可能性があるでしょう。
人材の増加は必ずしも売り上げの成長と比例しないため、状況に応じた採用戦略を取ることが重要です。現実的な業務量や売上予測に基づいて、慎重に採用計画を立てましょう。
市場の需要や自社の運用能力を考慮せずスケールアップすると、必要な経営基盤や業務プロセスが整わず、オペレーションが混乱する可能性があります。たとえば、業務量が急増する一方で管理体制や適切なシステムが整っていないと、サービスの品質が低下し、顧客満足度が損なわれる恐れがあるでしょう。
また、急速な拡大により組織文化の確立が追いつかず、従業員の士気や生産性が低下するリスクもあります。新たに採用された従業員が既存のチームに適応できなかったり、連携がうまく取れなかったりすると、職場環境が悪化し、組織全体のパフォーマンス低下につながりかねません。そのため、事前に適切な経営基盤と業務プロセスを整えることが重要です。
広告費を過剰に使うことは、予算の無駄遣いにつながります。過剰に広告投資してしまうと、ほかの経費に使える資金が減り、財務状況の悪化を招きかねません。一方で、広告費が少なすぎると期待した効果が得られず、商品の認知度や売り上げの向上につながらない場合があります。
また、広告のタイミングを誤ると、せっかくの投資が無駄になる可能性があるでしょう。たとえば、消費者の購買意欲が低い時期に広告を打ち出しても効果が薄く、逆に需要が高い時期を逃すと売り上げのチャンスを逃してしまいます。市場の動向や消費者の行動を考慮し、最適なタイミングで広告を展開することが重要です。
シリーズAまでのスタートアップにありがちなのが、ニーズのない製品開発に資金を投じてしまうことです。市場のニーズや顧客の要求を理解せずに製品開発を進めてしまうと、完成したプロダクトが顧客に受け入れられず、十分な収益が得られません。
シリーズAまでにPMFの達成状況をきちんと確認し、顧客のニーズや市場の動向を深く理解することが重要です。PMFが達成できていない段階で大規模な開発に資金を投じると、リソースの浪費や財務的なリスクの増大につながりかねません。
スタートアップの資金調達で失敗しないためには、次の2点に注意しましょう。
また、資金調達のタイミングについても解説します。
スタートアップが資金調達で成功するためには、明確なビジネスプランを策定しましょう。ビジネスプランの策定では、具体的なビジョンや目標を設定し、収益性や成長戦略を投資家に理解してもらうことが大切です。
ビジネスプランを策定する際は、必ず対象市場の分析を行い、競争状況や顧客ニーズ、市場動向を評価して、製品やサービスが市場で成功するための戦略を計画しましょう。競合他社の状況も分析し、自社の強みを活かし、「他社とどう差別化するか」を考えます。
さらに、収益の見込みや必要な資金を計算し、事業計画書や資金調達計画書に落とし込むことで、自社の評価額に合った資金調達を実現できるようになります。
適切な資金調達方法を選ぶことも重要です。自社の財務状態や成長段階、そして業界の特性を考慮し、複数の資金調達方法から最適なものを選択しましょう。
資金調達には、主に3つの種類があります。
特に、スタートアップは自社の資金調達ラウンドに応じた方法を選ぶのが賢明です。資金調達ラウンドについては次の記事で詳しく解説しています。
「資金調達ラウンド(投資ラウンド)とは?スタートアップが知っておくべきステージや資金調達方法を解説」
スタートアップの資金調達で失敗しないためには、経済状況や金融市場のトレンド、顧客のニーズなどを考慮し、最適なタイミングを見極めることが求められます。たとえば、業界が注目されている時期に資金調達すると、投資家の関心が高く、条件も優遇されやすくなります。
スタートアップの成長段階や事業計画に基づいて、資金が最も必要な時期を特定し、その時点で資金調達を行うことも大切です。たとえば、初期段階では、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからのエクイティファイナンスが適しています。成長が進むと、銀行融資やクラウドファンディングといったデットファイナンスやアセットファイナンスも役立ちます。
経済状況や市場の動向、成長段階を考慮しながら、事業計画に基づいて最適なタイミングで資金調達を行うことで、よりスピーディーな成長につながるでしょう。
スタートアップの資金調達では、さまざまな失敗例が挙げられます。今回紹介した失敗例を事前に把握しておくことでリスクを回避でき、資金調達をより効率的かつ効果的に進められるでしょう。
資金調達を成功させるためには、自社に合った方法やタイミングを見極めることが大切です。スピーディーな資金調達なら、当社の『マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups』がおすすめです。主な特長を紹介します。
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