クラウドファンディングとは、インターネットを通して多くの人から出資を受ける仕組みのことです。どのような種類があるのか、また利用するメリットや注意点についてまとめました。利用の流れも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
クラウドファンディングとは、インターネットを通して多くの人から資金調達することです。現在ではクラウドファンディング専門のサイトなども多数あり、それらのサイトに登録することで、広く資金を募ることができます。
なお、クラウドファンディングのクラウド(crowd)とは、群衆を意味する英語です。不特定多数の人から資金調達(funding)するため、一人ひとりから調達できる資金は少額でも、賛同を得られるような事業内容であれば多額を集めることができます。
クラウドファンディングでお金を集める人・事業者と出資者の関係により、クラウドファンディングの種類を以下の3つに分けることができます。
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
出資する代わりに、リターンとして商品やサービス、オリジナルのグッズなどを得られるタイプを「購入タイプ」と呼びます。例えば、リンゴの加工品販売を手掛けたいと考えるリンゴ農家が、1口1万円で出資者を募った場合について考えてみましょう。
1口出資するとリンゴジャム1瓶、10口出資するとリンゴパイ1ホールを受け取れることがわかっている場合、このクラウドファンディングは「購入タイプ」です。出資者は出資を行うことで、既定の商品を購入していることになります。
出資することで利息を得られるクラウドファンディングは「融資タイプ」です。例えば、新しいスタイルのシェアハウスを運営したいと考えている事業者が、1口1万円で出資者を募った場合について考えてみましょう。
シェアハウスの運営により利益が出た場合、出資者は出資口数に応じた利息を得られるのであれば、このクラウドファンディングは「融資タイプ」です。出資者は出資を行うことで、利息の得られる金融商品に投資をしたことになるでしょう。
なお、融資タイプのクラウドファンディングは「ソーシャルレンディング」と呼ばれることもあります。金融商品として扱われるため、金融商品取引法などの関連法律の規制を受ける点にも注意が必要です。
クラウドファンディングの中には、出資者が出資をしても見返りとして商品やサービス、利息などを得られないものもあります。このように見返りがないタイプのクラウドファンディングは「寄付タイプ」です。
寄付タイプのクラウドファンディングは、社会貢献目的のプロジェクトなどで活用される傾向にあります。例えば、被災地やひとり親家庭の支援などを実施するときに、寄付タイプのクラウドファンディングでお金を集め、活動資金にすることがあるでしょう。プロジェクトの趣旨や運営方法などに賛同するときは出資し、社会貢献の一端を担うことができます。
なお、寄付タイプのクラウドファンディングでは、出資者は何も見返りを受け取りませんが、お礼として手紙などを受け取ることはあるでしょう。手紙には寄付をしたお金がどのように使われたか、プロジェクトによりどのような変化があったのかなどが記載されていることがあります。
寄付タイプのクラウドファンディングには、ふるさと納税を活用したタイプもあります。商品やサービス、利息などを受け取れないという点は通常の寄付タイプのクラウドファンディングと同じですが、寄付金控除を利用できるため、出資者は税制上のメリットを受けることが可能です。
なお、ふるさと納税を利用したクラウドファンディングには、返礼品があるタイプもあります。こちらはクラウドファンディングの購入タイプと同じ仕組みですが、寄付金控除を利用できるため、出資者には税制上のメリットもある点が特徴です。
株式投資型タイプとは、未上場企業がインターネットを通じて多くの投資家から少額ずつ資金を集め、対価として株式を発行するクラウドファンディングです。企業にとっては資金調達の手段となるだけでなく、自社の製品やサービスをPRし、新たな顧客やファンを獲得するチャンスにもなります。
投資家は株主となり、企業の成長に伴って配当金や上場によるキャピタルゲインなどのリターンを得られる可能性があるでしょう。しかし、未上場企業への投資はリスクがあります。たとえば、企業が倒産した場合、投資した資金を失う可能性もあるため、企業側は事業内容や財務状況をしっかりと伝えることが重要です。
資金調達の方法にはさまざまな種類がありますが、中でもクラウドファンディングを利用して出資を募ることには多くのメリットがあります。主なメリットとしては、次の3つが挙げられるでしょう。
それぞれどのような点がメリットと呼べるのか、詳しく解説します。
例えば、事業を始める場合、金融機関から融資を受けられないことがあります。これは多くの金融機関では、融資を希望する個人・法人の事業実績や今まで築いてきた信用などに基づいて審査を実施するためで、事業実績や取引履歴がないと審査通過は難しくなるでしょう。
しかし、クラウドファンディングであれば、事業実績や金融機関との取引履歴がない事業者でも、出資者の賛同さえ得ることができれば利用できます。金融機関にこだわらず、広く資金調達したいときには、クラウドファンディングは良い方法となるでしょう。
事業を始める際、あるいは規模を拡大する際には、市場に受け入れられるかリサーチすることが必要です。事業者自身にとって魅力的な商品・サービスであっても、市場ニーズがなければ事業として成り立たない可能性があります。
クラウドファンディングは、消費者の反応を知るための方法としても活用可能です。事業内容や商品、サービスをクラウドファンディングサイトで紹介し、多くの消費者から賛同を得られれば、事業としても成立する見込みが高いと判断できるでしょう。
出資者に対してこまめに連絡を取ることで、ファンを増やすこともできます。例えば、リンゴジャム作りに取り組むプロジェクトであれば、リンゴの花が咲いた様子や収穫作業の様子などを写真に取って出資者に送ることもできるでしょう。
出資者はプロジェクトの当事者としての意識を持てるようになるだけでなく、応援したいという気持ちも抱くようになるかもしれません。クラウドファンディングを通して接点を得た人々に地道に関わることで、将来の事業拡大にも役立ちます。
クラウドファンディングを活用する場合、それぞれのタイプにデメリットがあることを把握しておきましょう。どのようなデメリットがあるかを知っておくことで、ほかの資金調達方法も含めて選択肢が広がります。
ここではタイプ別に、クラウドファンディングのデメリットを紹介します。
購入タイプのデメリットは次の4点です。
それぞれ解説します。
購入タイプは自由な発想で資金調達できる一方、トラブル防止のため、融資希望者の信用性や実現性のチェックが必要です。具体的には、クラウドファンディング取扱業者がプロジェクトの内容やリターンの商品を精査してから公開となります。
プロジェクトが十分な資金を集められず、支援者へのリターンが難しくなると予想される場合には審査に通らない可能性があります。審査にかかる期間も資金調達のスケジュールに考慮しましょう。
購入タイプには「All In」と「All or Nothing」の2種類の方式があります。「All In」型では目標金額に達しなくても事業を実施し、出資者にリターンを行います。 「All or Nothing」型では、目標金額に達しなければ出資金を返金する義務が生じます。
どちらも一度プロジェクトを公開してしまうと、原則として途中で中断したり、内容を変更したりすることができません。目標未達成の場合は信用を失うリスクがあるため、慎重に目標金額を設定することが重要です。
購入タイプはプロジェクト募集期間終了後から商品開発が進むことが多く、完了時期が遅くなったり製品が当初の予定と異なったりする場合があります。製品開発に失敗するリスクもあり、支援者の期待に応えられない場合は、大きな不満を招く可能性があるでしょう。
リスクを最小限に抑えるためには、綿密な計画と準備、柔軟な対応力が必要です。出資者の信頼を保つためにも、進捗状況の共有やリスクの説明をしっかり行いましょう。
購入タイプは実現していないアイデアを公開することになるため、類似品を開発・販売されたり、アイデアそのものを盗用されたりする可能性もゼロではありません。特に、新商品の魅力を伝えるために詳細な情報を公開すると、開発前に模倣品が市場に出回る可能性が高まります。
アイデア盗用を防ぐためには、クラウドファンディングページに掲載する情報量を調整したり、特許出願などでアイデアを守る対策を講じたりすることが重要です。
融資タイプのデメリットは次の3点です。
それぞれ解説します。
融資タイプは、融資を受けられるテーマが限定されていることが多いです。たとえば、次の分野だけが対象になっていることも少なくありません。
また、投資対象のテーマが限定されているため、投資家も自分の計画に合った案件を見つけにくかったり、計画通りのリターンを得るのが難しかったりする場合もあります。
融資タイプは融資という特殊な性質を持つため、資金が集まりにくい傾向があります。支援者は「お金を貸す」ことになり、元本割れのリスクや金利の低さなどを強く意識します。そのため、購入タイプに比べて、支援のハードルを高く感じられる可能性があるでしょう。
プロジェクト内容が魅力的でない場合や企業の情報が不十分だと、思ったように資金を集められないリスクがさらに高まります。 特に、実績の少ない企業は信用を得にくく、十分な出資が集まらずにプロジェクトの実行が困難になってしまう可能性もあるでしょう。
融資タイプは、銀行融資などと比べると金利が高い傾向にあります。具体的には、出資者への金利が5%から10%と高めに設定されることが多く、システム使用料を含めると実質的な金利は7%から15%になる場合もあります。
金融機関での資金調達が難しい場合には仕方がないともいえますが、高い金利による毎月の支払いが企業の負担になることは避けられません。金利負担が経営を圧迫しないよう、資金調達の計画が重要です。
寄付タイプのデメリットは次の2点です。
それぞれ解説します。
寄付タイプは金銭的なリターンがないため、購入タイプと比べて支援が集まりにくい傾向があります。プロジェクト自体に魅力があっても、リターンがないことで支援を避ける人も少なくありません。
支援者が強く応援したいと感じる要素や、支援者自身が「自分もこのプロジェクトを実行したい!」と思えるような魅力が必要です。
支援者は「集まったお金がどのように使われるのか」「本当に社会貢献につながるのか」を重視します。たとえば、被災者支援のために資金を集めた場合、支援者はそのお金が本当に被災者に届いているのか、どのように使われているのかを注視します。
資金使途や活動状況が不明確な状態が続くと、SNSなどで炎上し、プロジェクトの評判を落とすリスクもあります。プロジェクトの目的や活動内容、資金の使い道などを具体的に提示し、透明性をアピールすることが重要です。
株式投資タイプのデメリットは次の3点です。
それぞれ解説します。
株式投資タイプで成功するには、事前の準備や工夫が欠かせません。未公開株に対する警戒感から、購入タイプに比べて資金が集まりにくいためです。成功させるには実績や独自の技術、有名企業との取引実績など企業の信用度が重要です。
また、プラットフォーム上でのPRも重要です。動画や画像を効果的に活用し、出資者の関心を惹き付けましょう。
株式投資タイプでは、企業の情報が競合他社を含む多くの人に知られてしまうというデメリットもあります。たとえば、次のような情報が公になります。
さらに、出資者が株式を保有するため、期待する実績やリターンが得られない場合や企業が倒産する事態になると、直接クレームを受けるリスクがあるでしょう。適切に情報を発信し、ネガティブな情報も迅速かつスムーズに公表することが重要です。
株式投資タイプは小口の株主が増えるため、株主名簿の管理や決算・業務内容の公開に関する事務負担が増える可能性があります。多くの出資者を対象とした株主総会や決算報告の準備も必要になり、手間がかかることが予想されるでしょう。
株主の承諾が必要な書類を集める作業の負担も増えるため、プロジェクトを公開する前にしっかりとした計画を立てることが重要です。
クラウドファンディングを通して出資を募るときは、次の2点に注意しましょう。
それぞれのポイントについて解説します。
クラウドファンディングを実施しても、思ったような資金調達ができないこともあります。プロジェクトに賛同が得られない場合やリターンが少ない場合などには、資金が集まりにくくなるかもしれません。
プロジェクトを紹介する際に、事業スケジュールやリターンを提供する時期などについての情報も公開することが一般的です。しかし、思ったように事業が進まない場合や資金が集まらない場合は、スケジュールに遅延が生じ、出資者に迷惑をかけることがあるかもしれません。
クラウドファンディングを利用して出資を受け取る大まかな流れは、以下のとおりです。
それぞれの段階で何を行うのか、詳しく解説します。
クラウドファンディングの際に活用できるサイトは数多くあります。それぞれの特徴や手数料を比較し、プロジェクトの内容などに合うものを選びましょう。
また、クラウドファンディングサイト自体の知名度にも注目することができます。どんなに魅力的なプロジェクトを打ち立てる場合でも、掲載サイトの知名度が低いと、出資者を集めることは難しくなるでしょう。
プロジェクトの内容やリターンについて紹介するプロジェクトページを作成します。プロジェクトを魅力的に見せるために、写真を多用したり、数字などを用いてより具体的な情報を公開したりできるでしょう。
また、掲載後もこまめに更新し、最新の情報を紹介することもポイントです。あまり更新できていないと閲覧者に不安を与え、出資のアクションにつながりにくくなります。
出資者とのコミュニケーションも大切です。クラウドファンディングサイト上でプロジェクトの進捗状況を紹介したり、感謝の思いを伝えたりしましょう。
また、クラウドファンディングサイトを通して閲覧している方へのアピールも大切です。質問をもらったときには丁寧に返答することや、見るだけでも楽しいプロジェクトページに仕上げることも意識してみましょう。
集まった資金でプロジェクトを実施します。また、リターンを約束している場合には、適切なタイミングでリターンを提供しましょう。
資金が集まらないなどの理由でプロジェクトが遅延するときは、早めに出資者に連絡することも大切です。プロジェクトページにも遅延情報を掲載したり、どの時点までプロジェクトが進んでいるかを逐一写真などで報告したりすることで、出資者の理解を得られるようにしましょう。
クラウドファンディングは必ずしも成功するとは限りません。場合によっては資金調達できないどころか、時間やリソースの無駄になる可能性もあるでしょう。
ここではクラウドファンディングを成功させるポイントを5つ紹介します。
クラウドファンディングを成功させるには、支援者に対して、プロジェクトが成功した未来を具体的にイメージさせることが重要です。明らかに失敗しそうなプロジェクトには、支援者は集まりません。
「資金が欲しい」「支援をお願いします」と訴えるのではなく、「プロジェクトが実現したら、どんな素晴らしい未来が待っているのか」を明確に示す必要があります。スケジュールや予算の使い道、メンバー構成、課題と解決策など、プロジェクトの全体像を魅力的に伝えましょう。
クラウドファンディングの成功には、人々の心を動かし「応援したい!」と思わせるような工夫が重要になります。「なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか」「どんな未来を目指しているのか」を明確に伝え、支援者と価値観を共有することが重要です。
共感をうまく得ることができれば、個人的なプロジェクトでも成功する可能性があります。
クラウドファンディングでは、視覚的なアピールが重要です。多くのプロジェクトがあるなかで、いかに支援者の目を惹きつけ、興味を持たせるかが鍵となります。
支援者からの共感を集めるためには、動画を効果的に使うと良いでしょう。動画は文章や画像より情報量が多いため、より高い共感を生み出せます。プロジェクトへの思いや成功後のビジョンを熱く語ることで、感情や情熱を直接伝えられます。
購入タイプでは、魅力的なリターンが大切です。支援者の多くはプロジェクトへの共感だけでなく、リターンの魅力にも惹かれて支援を決めます。そのため、「支援してよかった!」と思えるリターンを用意することが重要です。
リターンの金額設定を「3,000円以下」「3,000〜10,000円」「10,000円以上」など3パターン以上に分けることで、幅広い支援者が参加しやすくなります。
クラウドファンディングを成功させるには、広告やSNSの発信といった宣伝活動が欠かせません。プロジェクトをサイトに掲載するだけでは、多くの支援者を集めることは困難です。
プロジェクト開始の1ヶ月前にはサイトを完成させ、SNSやリアルの場で事前告知を行いましょう。開始後3日以内に目標金額の30%以上の支援を集められれば、成功の確率が大幅に高まるといわれています。
クラウドファンディングを利用することで、広く出資を募ることができます。また、プロジェクトを開始する前からファンを獲得できるだけでなく、知名度や認知度の向上にも役立つでしょう。
クラウドファンディングを利用するときは、希望額まで資金が集まらない可能性についても考慮しておくことが必要です。万が一に備えて、クラウドファンディング以外の資金調達の方法なども検討してみましょう。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「【資金調達の方法】各方法のメリットや注意点を法人・個人別に解説」
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