起業するときや事業を拡大するときなどは、資金調達が必要になることも少なくありません。資金調達の方法は、事業者が法人か個人かによって異なるので注意が必要です。どのような方法を利用できるのか紹介し、それぞれのメリットや注意点について解説します。
日本政策金融公庫や民間の金融機関(銀行や信用金庫など)からお金を借りる方法を検討できます。金融機関からの借入れは、法人・個人を問わず利用できる資金調達方法です。
金融機関からの借入れは、どこからお金を借りるか、どのローン商品を選択するかによって、適用される金利や毎月の返済額、借入期間などの条件が異なります。いくつかの金融機関やローン商品を比較してから、借入れの申し込みを行いましょう。
金融機関からの借入れは、以下の手順で利用します。
申し込む際には、各金融機関で指定する申込書に加え、登記事項証明書などの事業者や事業内容が分かる書類、事業計画書、資金繰り表なども併せて提出することが求められます。提出する書類は金融機関ごとに異なるので、申し込む前に確認しておきましょう。
審査によっては無保証人・無担保でも借りられることがあります。保証人や担保の準備が難しいときも、検討できる資金調達方法といえるでしょう。
事業実績が融資の判断基準の一つとなることもありますが、日本政策金融公庫の新創業融資のように起業したばかり、あるいは創業前の事業者でも利用できるものもあります。
また、日本政策金融公庫では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的に業績が悪化している事業者や、災害により被害を受けた事業者向けの融資制度もあります。金融機関やローン商品によって利用の条件が異なるので、事前に確認し、状況に合ったローンに申し込みましょう。
民間の金融機関からの融資は、事業実績がないと難しいことがあります。創業時の資金調達は、日本政策金融公庫の新創業融資などの創業向けのローン商品を選ぶようにしましょう。
また、融資を受けると返済の義務が発生するだけでなく、利息も併せて支払う必要があります。金利があまり高くないローン商品を選ぶだけでなく、可能な限り短期間で返済するなど、利息を減らす工夫をするようにしましょう。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「日本政策金融公庫で融資を受ける流れを解説!注意点や審査のコツも紹介」
国や自治体では、創業や事業拡大の際に利用できる補助金制度や助成金制度を実施していることがあります。
補助金制度・助成金制度はいずれも返済不要で利用できる資金調達方法です。事業内容が地域振興や雇用創出につながること、特定の地域に拠点を置いていること、創業してからあまり年数が経っていないことなど、制度によって条件が異なります。各条件を確認し、利用できるときは申し込みを検討しましょう。
補助金制度・助成金制度は以下の手順で利用します。
補助金制度・助成金制度では、条件をすべて満たしているか確認するための審査が実施されます。また、条件を満たしている場合でも、申込者が多いときなどには審査によって制度利用者が決まるため、審査に落ちたときは制度を利用することはできません。
補助金制度・助成金制度の最大のメリットは返済不要であることです。
金融機関から融資を受ける場合は必ず返済をしなくてはいけないため、資金調達後の資金繰りを悪化させる可能性があります。しかし、補助金や助成金には返済義務がなく、資金繰りに影響を与えることもありません。
また、補助金制度・助成金制度は補助の意味合いが強いため、事業実績や収益性などについてはあまり問われません。起業前から利用できるものもあるので、金融機関からの融資が難しいときも検討してみましょう。
申請から入金までに時間がかかる制度もあります。補助金や助成金を当てにして資金計画を立てていると、必要なときに間に合わないことも想定されます。
また、申込期限が短いこともあるので注意が必要です。先着順で決まる制度もあるため、こまめに国や自治体で公開している情報を確認しておきましょう。
補助金制度・助成金制度によっては、資金使途が限定されているものもあります。例えば、IT化促進のための費用にしか利用できない補助金制度などもあるので、申込条件だけでなく使途も正確に把握しておきましょう。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「補助金と助成金の違いは?申請の手順や注意点も解説」
法人や個人が利用できる資金調達方法としては、クラウドファンディングやベンチャーキャピタルもあります。いずれも融資ではないため、返済義務がない点が共通しています。特徴を以下にまとめました。
クラウドファンディングを利用して資金調達するときは、まずはクラウドファンディングサイトに登録することが不可欠です。クラウドファンディングサイトではプロジェクトページを作成し、どのような事業を行うのか、また、将来性やビジネスモデルなどについても細かく紹介します。
サイト閲覧者はプロジェクトページの内容によって出資するかどうかを決めるため、わかりやすく、なおかつ魅力的な事業としてアピールすることが必要です。また、出資者にはこまめに進捗報告し、不安を抱かせないようにします。
一方、ベンチャーキャピタルによる資金調達では、ベンチャーキャピタル側が有望な会社や個人を探してアプローチするため、基本的には出資を受ける側からのアプローチはできません。ただし、起業家が集まるイベントやベンチャー企業を支援する集会などでベンチャーキャピタルからアプローチを受けることがあるため、該当しそうな集まりへの参加も検討できます。
クラウドファンディングもベンチャーキャピタルも、融資ではなく出資を受ける形での資金調達方法のため、基本的には返済不要です。そのため、出資を受けた後、資金繰りに影響が及ぶことはありません。
ただし、クラウドファンディングでは、出資者が無償で資金を提供する寄付型もありますが、出資を受ける代わりに自社商品やサービスを提供する購入型や、出資した金額にいくらかの利息を上乗せして還元する融資型もあります。融資型や購入型で資金を調達した場合は、約束通りに商品や利息を出資者に提供しなくてはいけません。事業が思ったように進まない場合は、出資者への還元が難しくなることもあるでしょう。
クラウドファンディングは還元タイプ選びに注意が必要です。資金調達する側にとっては、寄付型がもっとも負担の少ないタイプですが、災害支援などの社会貢献性の高いプロジェクトを除き、寄付型で資金を集めることは簡単ではありません。
出資者が納得でき、なおかつ資金調達する側も負担が大きすぎない還元方法を考えるようにしましょう。また、こまめに経過報告することも大切です。出資者の立場に立ち、不安なく出資できるように工夫します。
ベンチャーキャピタルから資金を調達するときは、経営権について明確にしておくことが大切です。ベンチャーキャピタルによっては、出資する条件として経営に積極的に参加することを要求することもあり、思うように経営できなくなる可能性があります。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「クラウドファンディングとは?種類や出資を得るメリット、注意点を解説」
法人の場合、資金調達方法としてM&Aを検討できます。M&Aにはいくつか方法がありますが、その中で資金調達方法として活用されることが多いのが事業譲渡です。
事業譲渡とは、会社で扱っている事業を売却することを指します。本業との関連性が薄い事業や、収益率が低く人件費などが負担になっている事業などを売却し、まとまった資金を調達します。
M&A(事業譲渡)は、大まかには以下の手順で進めていきます。
M&A仲介会社を利用すると、譲渡先の選定から契約まですべて任せることができます。譲渡時のトラブルも回避しやすくなるため、事業譲渡に不慣れな場合や譲渡先の目星がついていない場合は利用を検討できるでしょう。
M&A(事業譲渡)は、事業を売却して対価を得る資金調達方法です。融資を受けるわけではないため、返済義務がなく、資金調達後に資金繰りが厳しくなることもありません。
また、事業の規模や評価によっては多額の資金を調達することが可能です。既存事業を拡大する資金や新規事業を始める資金として活用できます。
事業譲渡により会社をスリム化し、財務基盤を盤石にできる点もメリットです。収益性が良くない事業であっても、他社から見れば既存事業との相乗効果が期待できたり、販路拡大などのメリットがあったりする可能性があります。資金調達の必要があるときは、一度、各事業を見直してみるとよいでしょう。
M&A(事業譲渡)を進める際には、費用がかかります。例えば、契約の際にかかる印紙税や専門家への報酬、M&A仲介会社へ支払う手数料などもかかるでしょう。そのため、売却価格より受取額は少なくなる点に注意が必要です。
また、譲渡先が見つからない可能性や、見つかっても条件が合わず交渉が成立しない可能性もあります。時間がかかり、資金が必要な時期までに資金調達できない恐れもあるでしょう。
譲渡事業に関わる社員や取引先から承諾を取り付けることも必要です。承諾を得られない場合は、M&A完了までにさらに時間がかかることもあります。
競業避止義務によって、一定期間は譲渡した事業と競合する事業を行えない点にも注意しましょう。同一市町村や隣接する地域では、基本的には20年間競合事業に携わることができません。また、M&Aの契約時に特約を定めているときは、最長30年間競合事業を行えないこともあります。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「M&Aの資金調達方法を紹介!各方法のメリットやコストも解説」
法人の場合、増資や社債によっても資金調達できることがあります。それぞれの違いは以下のとおりです。
増資による資金調達の手順は以下のとおりです。
上場企業の場合は、証券会社を通して公募することもあります。一方、社債による資金調達の手順は以下のとおりです。
社債により調達した資金は資本金の一部とはならないため、資金調達後に登記する必要はありません。
増資による資金調達では、返還義務がありません。増資後に資金繰りが悪化することはないため、比較的利用しやすいです。
一方、社債は返還義務がありますが、有名企業や大企業であれば広く資金を集められるというメリットがあります。また、増資による資金調達も、上場している企業であれば証券会社を通して出資者を募ることができるため、広く資金を集めることが可能です。
株式は企業の所有権を小分けにしたものでもあるため、発行する数によっては経営権が揺らぐことがあります。例えば、新たに発行した株式のうちの多くを特定の投資家や法人などが買い取ると、大株主が誕生し、今までと同じようには経営できない可能性があるでしょう。
また、増資をするためには株主総会で決議を得ることが不可欠ですが、株主から賛成を得られないことがあります。特に大株主は自身の経営権が揺らぐ恐れから、増資に反対する可能性があるでしょう。
社債であれば、経営に影響を及ぼさずに資金調達することが可能です。しかし、社債は償還義務があり、償還日までには全額を返還しなくてはいけません。また、規定に従い、定期的にクーポン(利息に相当するもの)を支払う必要もあり、経営状態によっては支払いが厳しくなることもあります。
資金調達の方法は数多くあります。しかし、それぞれメリットもあれば注意点もあるので、よく吟味してから方法を決めることが必要です。
法人の場合は、個人よりもさらに多くの資金調達方法があります。しかし、融資や社債などの方法には返還する義務があり、資金調達後の資金繰りに影響を与えることもあるので注意が必要です。事前に長期的な資金計画を立てておくと、より無理のない資金調達を実現できます。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「資金調達時の金利相場を調達先別に解説!金利が決まる要素も紹介」
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