
エクイティファイナンスとは?向いている企業や成功させるポイントを紹介
- 投稿日:2024-05-10
- / 最終更新日:2024-12-20
エクイティファイナンスとは、株式発行による資金調達方法です。返済義務がないというメリットがあるものの、企業によって向き不向きがある資金調達方法のため、自社に合っているかどうかを確認したうえで検討する必要があるでしょう。
本記事では、エクイティファイナンスの基本情報と向いている企業や具体的な方法、成功させる方法、エクイティファイナンス以外の資金調達方法を紹介します。
目次
エクイティファイナンスとは?

エクイティファイナンス(Equity Finance)とは、企業が新株発行や、CB(転換社債型新株予約権付社債)によって行う資金調達方法です。融資と異なり、返済義務がないため、売上や利益の少ないスタートアップでもキャッシュを圧迫することなく資金調達できます。
ただし、株式を発行するため持株比率が薄くなったり、出資者が経営に参加したりすることがあります。詳しいエクイティファイナンスの種類やメリット・デメリットは、次の記事を参考にしてください。
エクイティ(Equity)とは株主資本のこと!メリットや手順を解説
デットファイナンスとの違い
デットファイナンスは、企業が借り入れによって資金を調達する方法です。銀行や金融機関からお金を借り、利息を上乗せして返済します。借り入れによる資金調達のため、経営権を維持できます。また、支払った利息を税務上、損金として処理できるため、節税効果が期待できるでしょう。
しかし、返済方法を一定期間定額にした場合は、毎月元本と利息を返済しなければなりません。また、借入金の使途は、あらかじめ金融機関と合意した範囲に限定される場合があります。この点が返済義務はなく、資金使途も幅広いことが多いエクイティファイナンスとの差異のひとつです。
安定した収益があり、確実に返済できる見込みがある企業は、デットファイナンスが向いているでしょう。一方、成長段階にあり、長期的な資金を必要とする企業は、エクイティファイナンスが適しているでしょう。
エクイティファイナンスの種類
エクイティファイナンスは、発行方法によって種別ができます。大きく分けて、次の4つです。
どの方法を選択するかは、企業の規模や資金ニーズ、経営戦略によって異なります。たとえば、多額の資金調達が必要な場合は公募増資、既存株主の権利を保護したい場合は株主割当増資といったように、それぞれのメリットとデメリットを考慮して最適な方法を選ぶことが大切です。
エクイティファイナンスが向いている企業

エクイティファイナンスが向いている企業は次のとおりです。
- 事業が成長している企業
- 財務体質を強化したい企業
- 新規事業や新規開拓を進めたい企業
詳しく解説します。
事業が成長している企業
エクイティファイナンスは事業が成長している企業に向いています。売上や利益が順調に伸びている企業は、投資家からの出資を受けやすいためです。
デットファイナンスの場合、金融機関は事業の成長性よりも返済能力の有無を重視する傾向にあります。売上や利益が伸びていたとしても、返済原資がなければ審査に通らない可能性があるでしょう。
一方、エクイティファイナンスは返済義務がないため、返済原資の有無よりも今後の成長戦略や事業計画が重要視されます。事業が成長している企業にとっては、デットファイナンスよりエクイティファイナンスのほうが向いているでしょう。
財務体質を強化したい企業
財務体質を強化したい企業にもエクイティファイナンスがおすすめです。株式を発行して資本を増強することで、借り入れに依存せず自己資本比率を高めることができます。
デットファイナンスは株式を発行しないで済むため、経営の自由度が高くなるものの、自己資本比率が低くなるうえに返済義務が生じます。一方で、エクイティファイナンスは借り入れが生じないことから、調達した資金を返済する必要がありません。
自己資本比率が高まると、企業の経営安定性や財務健全性が向上します。財務体質が強化されれば信用力が向上し、投資家や取引先からのさらなる信頼獲得につながるでしょう。
新規事業や新規開拓を進めたい企業
エクイティファイナンスは、新規市場への進出や新規事業を考える企業にとってもおすすめの方法です。月々の返済が発生しないため、キャッシュやリソースを新しい挑戦に投下できるためです。
一般的に、デットファイナンスは定期的な返済を重要視し、早期に黒字化が見込まれる事業に対して融資する傾向にあります。そのため、新規市場の開拓を目指す企業には向かない可能性があるでしょう。
一方、エクイティファイナンスは返済の制約がありません。また、「リスクを共有するパートナーを得る」ということでもあるため、出資者から事業に対する協力やバックアップを得られる可能性もあります。
具体的なエクイティファイナンスの方法

エクイティファイナンスには、主に次の4つの方法があります。
- VC(ベンチャーキャピタル)
- CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)
- エンジェル投資家
- 株式投資型クラウドファンディング(CF)
各方法について、詳しく解説します。
VC(ベンチャーキャピタル)
VC(ベンチャーキャピタル)とは、主に未上場企業を対象とした投資会社または投資ファンドです。出資と引き換えに株式を取得し、出資先のIPOやM&Aなどのイグジットによって株式を売却し利益獲得を目指すビジネスモデルです。
VCで資金調達する主なメリット・デメリットは次の通りです。
積極的に経営ノウハウを得たい場合や財務状況の改善に努めたい場合は、効果的な方法といえます。ただし、株式の一部を譲渡するため、経営の自由度が下がる可能性があります。また、IPOやM&Aなどの出口戦略を求められるため、自社のペースでの成長が困難になる場合もあるでしょう。
具体的なメリット・デメリットや資金調達方法は次の記事で解説しています。
ベンチャーキャピタル(VC)とは未上場企業への投資会社!メリットや注意点は?
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)
CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは、未上場のベンチャー企業に出資を行う事業会社です。VCと似ていますが、CVCは自社の既存事業とシナジーが期待できる企業に出資します。
CVCで資金調達する主なメリット・デメリットは次の通りです。
CVCから投資を受けることで、事業会社から開発基盤などのバックアップが期待できます。また、信頼性が高まるため、ほかの金融機関や投資家から資金調達しやすくなるメリットもあります。
一方で、母体となる事業会社の会社風土に影響を受けかねません。また、取引先がCVC出資元の競合である場合、ビジネス上の利益相反や情報の共有制限が生じる可能性があります。
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、スタートアップなど実績が少ない企業に出資を行う個人投資家です。出資金額は数十万円から数千万円と幅広く、個人の判断で出資するため、金融機関からの融資が困難な企業にもチャンスがあります。
エンジェル投資家から資金調達する主なメリット・デメリットは次の通りです。
エンジェル投資家は自らの経験や個人の価値観により出資を判断するため、アイデア段階のシード期でも資金調達しやすいといえるでしょう。また、個人であるためVCやCVCよりもフットワークが軽く、取引先を紹介してもらえる可能性もあります。
一方で、VCやCVC以上にイグジットを求められることも少なくありません。さらに、個人だからこそ出資額が小さくなる点にも注意が必要です。
具体的なメリット・デメリットやエンジェル投資家の探し方は次の記事で解説しています。
エンジェル投資家とは?メリットや注意点、探し方について解説
株式投資型クラウドファンディング(CF)
株式投資型クラウドファンディング(CF)は、株と引き換えにクラウドファンディングで資金を調達する方法です。WEB上にプロジェクトを公開し、一般の投資家から少額(主に50万円まで)の資金を集めます。
株式投資型クラウドファンディングから資金調達する主なメリット・デメリットは次の通りです。
株式投資型クラウドファンディングは特定の人物に経営権を握られにくく、株式の希薄化を抑えられるメリットがあります。
一方、資金調達額や投資家1人あたりの投資可能額に限度があるため、十分な資金を調達できない可能性があるでしょう。
エクイティファイナンスのメリット

エクイティファイナンスは自社株式の譲渡というリスクを伴います。そのため、自社に適した資金調達方法かどうかを慎重に見極める必要があるでしょう。
ここでは自社に合っているか判断する材料として、エクイティファイナンスのメリットを4つ紹介します。
返済の必要がない
デットファイナンスは元本と利息を返済する義務が生じ、返済計画を立てて返済しなければなりません。一方、エクイティファイナンスは元本を返済する必要がないため、キャッシュフローへの負担が軽く、事業拡大や研究開発に資金を集中投下できます。
景気変動や業績が悪化したときにも、財務的な安定性を保ちやすくなります。デットファイナンスの場合、業績が悪化すると返済が滞り、最悪の場合は倒産に追い込まれるリスクもあります。エクイティファイナンスであれば、このようなリスクを回避することが可能です。
自己資本比率が向上する
自己資本比率は、企業の総資本に占める自己資本の割合を示す指標です。エクイティファイナンスでは、得られた資金は返済不要の「自己資本」として扱われます。自己資本が増加すると総資本における負債の割合(負債比率)は低下し、自己資本比率が向上します。
自己資本比率が高いと借り入れに頼らずに事業を運営できることを意味し、財務基盤が安定しているという評価を受けやすくなります。格付け機関からの評価向上にもつながり、より良い条件での資金調達が可能になる場合もあるでしょう。
赤字やアイデア段階の企業でも資金調達できる
デットファイナンスは過去の業績や担保能力を重視します。そのため、赤字が続いている企業や創業間もない企業にとって資金調達は非常に困難です。エクイティファイナンスでは、企業の将来性や成長可能性を評価して投資判断が行われます。
現時点は赤字であっても、革新的なビジネスモデルや将来有望な技術を持っている企業なら、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受けられる可能性があるでしょう。
人脈が広がりさまざまな支援を受けられる
エクイティファイナンスの投資家は、豊富な経験や専門知識、幅広いネットワークを持っていることが多いです。たとえば、ベンチャーキャピタルは長年にわたり多くの企業の成長を支援してきた実績があり、事業戦略、マーケティング、財務、法務など、さまざまな分野に精通しています。
そのため、資金調達だけではなく、事業戦略や経営に関するアドバイス、人材紹介、提携先の紹介など、多岐にわたるサポートを受けることができるでしょう。特に、起業初期の段階では、経営支援が事業の成功に大きく影響する可能性があります。
エクイティファイナンスのデメリット

エクイティファイナンスが自社にとって最適かどうかを検討するためには、デメリットも知っておくことが大切です。ここでは4つのデメリットを紹介します。
経営権が希薄化するリスクがある
エクイティファイナンスは既存株主の持ち株比率を低下させ、経営権の希薄化を招くリスクがあります。特に、創業者が過半数の株式を保有していない場合、新たな投資家が大株主となることで、経営方針や重要な意思決定に影響を与える可能性が出てきます。
たとえば、新規事業への投資、人員削減、M&Aなど、会社の将来を左右するような重要な決定において、創業者の意向が通らなくなる可能性も考えられます。極端なケースでは敵対的買収などにより、経営権を完全に奪われるリスクもあるでしょう。
配当金の支払いが必要になることもある
エクイティファイナンスは投資家に対して配当金の支払いが必要になることがあります。特に、高い配当利回りを求める投資家から出資を受けた場合、多額の配当金を支払う必要が生じ、企業の財務を圧迫するケースも考えられるでしょう。
高成長を遂げている企業は利益を再投資に回し、成長をさらに加速させたいと考えるのが一般的です。しかし、エクイティファイナンスを実施した場合、たとえ再投資の必要性が高くても、投資家への配当金の分配を優先しなければならない場合に直面する可能性もあります。
経営陣の負担が増える可能性がある
エクイティファイナンスは新たな株主を迎えることで、経営陣の負担を増やす可能性があります。企業は株主に対して、経営状況や財務状況に関する情報開示や説明責任を果たす必要があるためです。具体的には、定期的な報告書の作成や説明会の実施、株主からの問い合わせへの対応などが求められます。
上場企業の場合、さらに負担は増えます。証券取引法などの法令に基づき、より厳格な情報開示が求められるからです。決算短信の作成・提出、適時開示、有価証券報告書の作成・提出など、法令で定められた情報開示を適切に行う必要があり、専門的な知識や対応能力が求められます。
中小企業向け優遇税制の対象外になる
日本の税制は資本金の額によって企業の規模を区分し、中小企業に対してさまざまな優遇税制が設けられています。しかし、エクイティファイナンスによって資本金が増加すると、優遇税制の対象外となってしまう可能性があります。
具体的には、次のような優遇税制があげられます。
- 法人税率の軽減
- 欠損金の繰越控除
- 欠損金の繰戻還付
- 交際費課税の特例
- 固定資産税・都市計画税の減免措置
さらに、資本金1,000万円を超えると、法人住民税の均等割りの金額が上がります。
参考:総務省|法人住民税
また、資本金が1億円を超えると、外形標準課税の適用事業者になるため、損益に関わらず事業税を納めなければなりません。このように企業の税負担が増加し、財務に影響を与える可能性があります。
エクイティファイナンスを成功させるポイント

エクイティファイナンスはスタートアップの資金調達方法として一般的ですが、成功させるためにはタイミングや投資家の意図を汲む必要があります。エクイティファイナンスを成功させるためのポイントは次の3つです。
- 調達するタイミングを見極める
- 出資の意図をしっかり認識する
- 実現まで期間に余裕を持っておく
それぞれ詳しく説明します。
調達するタイミングを見極める
エクイティファイナンスのタイミングは、企業の成長フェーズや財務状態、市場の状況、業界のトレンドなど、複数の要素に基づいて慎重に判断することが大切です。タイミングによって、条件が良くなったり悪くなったりするためです。
たとえば、市場のニーズが不明で事業の具体的な成長戦略を描けない場合、企業価値を低く見積もられることがあります。こうしたケースでは調達額が少なくなるのに対し、株式を多く求められる可能性があるでしょう。多角的な視点から、自社に必要な資金調達方法はエクイティファイナンスなのか、それともほかに選択肢があるのかを検討することが重要です。
出資の意図をしっかり認識する
自社に対する出資者の期待や目的を理解し、共有することが大切です。投資家はイグジットでの利益が大きな目的ではあるものの、「企業の成長を支援したい」「社会的に貢献したい」といった動機を持っていることも少なくありません。
そのため、単にイグジットの見込みを提示するだけでなく、企業がいかにビジョンや価値観に沿った成果を出せるかを明確に伝えることが求められるでしょう。
実現まで期間に余裕を持っておく
エクイティファイナンスは、実際に資金を調達するまでに時間を要することを認識しておきましょう。資金調達方法や事業の内容などによっては、数ヶ月以上かかることも少なくありません。
場合によっては、必要なタイミングで必要な資金調達が困難になる可能性もあります。なるべく余裕のある資金調達計画を立てておくことが必要です。
エクイティファイナンス以外の資金調達方法

資金調達の方法は、エクイティファイナンスだけではありません。主な資金調達の方法は、次の2つです。
- デットファイナンス
- アセットファイナンス
持株比率を減らさずに経営体制を変えたくない場合・金利を抑えたい場合はデットファイナンス、スピーディーに資金調達したい場合・負債を増やしたくない場合はアセットファイナンスがおすすめです。
デットファイナンス
デットファイナンスとは、金融機関からの融資や社債、私募債の発行により資金調達を行う方法です。持株比率が変わらず、利息は損金算入できることに加え、アセットファイナンスに比べて金利が安い点がメリットです。
デメリットは、返済義務と返済期限があることです。また、経営基盤が安定していない状態では、融資自体を断られる可能性もあります。銀行融資を検討する場合は、次の記事を参考にしてください。
法人が銀行から融資を受ける方法とは?必要書類や流れもわかりやすく解説
アセットファイナンス
アセットファイナンスは、自社が保有する資産をもとに資金調達を行う方法です。アセットファイナンスの1つであるファクタリングは、売掛債権を売却することで早期資金化を行います。
アセットファイナンスは、エクイティファイナンスやデットファイナンスよりも簡潔かつスピーディーに資金調達できます。 『マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups』では、最短で審査通過後の翌営業日に入金可能です。
具体的なメリット・デメリット、資金調達方法は次の記事で解説しています。
アセットファイナンスとは?メリットや資金調達方法の違いなどを解説
まとめ
エクイティファイナンスは、株式の発行などを通じて事業資金を調達する手段です。銀行などからの融資が受けにくい企業や財務体質を強化したい企業に向いています。
資金調達の方法として、エクイティファイナンス以外にデットファイナンス、アセットファイナンスがあります。スピーディーな資金調達を求めるなら、アセットファイナンスのファクタリングがおすすめです。
当社の「マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups」では、売掛債権を売却することで早期資金化することができます。特徴は以下の通りです。
- 業界最低水準の手数料0.5%~
- 審査通過後、翌営業日に入金可能
- 複雑な書類手続きは不要
これまでに資金調達をした経験がなくてもサービスの利用が可能です。将来の資金繰り次第では億単位の資金調達も可能であるため、まずはお気軽に資料ダウンロード・お問合せからご相談ください。
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