資金調達は、会社経営に関して必要な資金を外部から調達することです。調達方法には主にデットファイナンス、エクイティファイナンス、補助金や助成金、アセットファイナンスの4つがあります。
本記事では各資金調達方法のメリット・デメリットや具体的な調達方法、資金調達を成功させるコツについて紹介します。
企業における資金調達とは、自己資本のみで資金の準備が難しい場合にその資金を調達することです。
企業が資金調達を行うタイミングは、設備投資や事業拡大、新規事業の立ち上げなどが挙げられます。その方法は負債や資本を増やしたり、保有する資産を現金化したりなどさまざまです。
また、返済する必要のある調達資金のうち、返済期間が1年未満の資金を「短期資金」、1年以上の返済期間がある資金を「長期資金」と呼びます。
資金調達が必要になるタイミングとしては、起業時と事業拡大時、経営難の3つが挙げられます。
起業する際にはまとまった資金が必要です。また、すでに起業している場合でも、新規事業を立ち上げるときには設備代や事務所を借りる費用、人件費などが必要になります。
事業を拡大するときも資金調達が必要です。短期間で収益増が見込まれる場合であっても、仕入れやスタッフを増やすために相応の資金が必要になるでしょう。
経営難のときも資金調達が必要になることがあります。収益が減っている場合でも、取引先への支払いや人件費などを減らすことはできません。金融機関から借入れるなどの方法を検討し、必要な資金を調達しておく必要が生じるでしょう。
企業が資金調達する方法は、主に次の4種類です。
それぞれメリット・デメリットが異なるため、詳細を確認し、自社にあう方法を選択する必要があります。
デットファイナンスは、負債の増加を見込む資金調達方法です。毎月の返済が必要であるため、自社に合った資金調達方法か見極めることが大切です。ここではメリット・デメリットと、主なデットファイナンスの種類を紹介します。
デットファイナンスによる資金調達のメリットは、次の通りです。
デットファイナンスは借り入れであるため、株式の発行や譲渡の必要はありません。現在の自由度を保ったまま経営を続けることができます。また、支払利息は損金として会計処理ができるため、一定の節税効果も期待できるでしょう。
一方、デメリットは次の通りです。
返済期限を守り、最終的には利息分を上乗せした金額を返済する必要があります。返済できなければ企業の信用力が低下するでしょう。また、借り入れた資金は負債であり、自己資本比率の低下や財務諸表への影響も懸念されます。
デットファイナンスとは?メリット・デメリットや向いている企業を解説
デットファイナンスには、主に5つの方法があります。
詳細について解説します。
公的融資とは、政府が運営する金融機関からの借り入れです。日本政策金融公庫による「新創業融資制度」や地方自治体による「制度融資」など、種類が豊富で条件を満たせば自己資金不要で利用できるケースもあります。
保証人・担保不要で利用できるケースが多く、借り入れのしやすさと返済期間が長期に設定されている点、比較的低めの金利設定が特徴です。ただし、銀行融資と比べ審査に時間がかかるため、借り入れスピードを求める場合には不向きです。
銀行融資は、民間金融機関からの借り入れです。契約相手は、銀行や信用金庫、信用組合などです。
融資金額や希望内容によっては、担保が不要なケースもあります。銀行融資の金利はおおむね4%程度と、ほかの方法に比べ低い点が特徴です。一方で、審査に時間がかかることが多いです。
ビジネスローンは、運転資金や設備資金など事業資金としての利用を目的にしたローン商品です。民間の金融機関や信販会社などが提供しており、最短即日で借り入れできるという特徴があります。
なかには、無担保で借り入れできるローン商品も用意されています。一方、高金利であることが多く、借り入れ上限が低いという点もデメリットです。
手形割引とは、保有している約束手形を、支払い期日より前に銀行もしくは手形割引業者に売却して現金化することです。手形取引が主流だった頃には、多くの中小企業が利用していましたが、現在では減少傾向にあります。
社債発行とは、企業が債券市場から資金を調達する手段のことです。事業会社が事前に発行金額や期日・利息などを決めて債券を発行し、一般の投資家に売り出すため、大規模な資金調達に向いています。
社債発行時には、有価証券報告書や有価証券通知書の提出などの手続きが必要です。企業の信用力が高ければ、低い金利での社債発行が可能です。ただし、基本的に返済は一括で行わなければなりません。
エクイティファイナンスは株式の譲渡を伴う資金調達方法です。株式の一部を受け渡すため、しっかりとメリット・デメリットを把握しておきましょう。ここではエクイティファイナンスのメリット・デメリット、そして具体的な方法を4つ紹介します。
エクイティファイナンスによる資金調達のメリットは、次の通りです。
金融機関からの借り入れとは異なり、エクイティファイナンスは株式の発行や譲渡で資金を得るため、返済義務は発生しません。新株を発行し、株主が増えることで、自己資本比率も増加します。投資家は自らの利益が増えるよう取引先などを紹介してくれることもあり、人脈の拡大も期待できるでしょう。
一方、デメリットは次の通りです。
株式の増加に伴い、事業者の持株比率が低下します。結果として株主が事業運営に積極的に関わり、経営をコントロールされるリスクがあるでしょう。エクイティファイナンスに関する詳しい情報は、次の記事を参考にしてください。
エクイティ(Equity)とは株主資本のこと!メリットや手順を解説
エクイティファイナンスの資金調達方法は、次の通りです。
それぞれの内容を紹介します。
事業者が時価で新株を発行し、資金調達をする方法です。自社の時価が高ければ高いほど少ない発行数で調達できるため、スモールビジネス向きではありません。
すでに知名度のある上場企業であれば、さまざまな企業に株式を発行できる利点を生かし、効率的に資金を調達できるでしょう。
事業者が発行する社債を買ってもらうことで資金調達する方法です。転換社債型新株予約権付社債とは、株価が一定価格(転換価格)に達したとき、株式に転換できる権利がついた社債のことを意味します。公募増資同様、スモールビジネス向きではありません。
大量の株式が一気に市場に出回る恐れがないため、株価の影響も出にくい点がメリットです。
事業者が新たに発行した株式を第三者に引き受けてもらうことで資金調達する方法です。ここでの第三者とは、取引先や会社の役職についている個人、ベンチャーキャピタルなどを指します。
取引先や業務提携先との提携を強めたい場合や、株価が低いときにおすすめの方法です。
株主の持株比率に応じて新株を発行できる権利を与え、出資金を募る資金調達方法です。ただし、新株の申し込みや払込みを行う義務はありません。あくまでも権利のみであるため、既存株主が希望しなければ権利は失効します。
既存株主が希望しない場合、資金を得られない点に注意が必要です。対して株主構成に変化がないことがメリットです。
補助金や助成金は「返済しなくてもよい」というメリットがある一方で、デメリットも存在します。ここではメリット・デメリットを紹介し、補助金と助成金の違いについても解説します。
補助金や助成金による資金調達のメリットは、次の通りです。
給付を受ける際には、定められた条件を満たす必要があるものの、基本的に返済は不要です。政府、自治体、一般企業など各カテゴリから補助金・助成金が提示されているため、種類も豊富です。自社にあった制度を選ぶことで、事業の再構築に役立てられるでしょう。
一方、デメリットは次の通りです。
補助金・助成金の申請には、書類作成や提出、面接など、さまざまな手続きが必要です。また、前払いではなく後払いのため、手元にキャッシュがなければ、一旦は別の方法で資金を調達しなければならなくなる可能性もあるでしょう。
消費税は発生しないものの、収益が増えることで、タイミングによっては納税額が増える可能性もあります。補助金と助成金に関する詳しい情報は、次の記事を参考にしてください。
補助金と助成金の違いは次の通りです。
補助金は政策を推進するうえで、有効な内容である場合に限り支給されます。
【代表例】
助成金は、一定の条件を満たせばほぼ確実に支給される点が特徴です。
【代表例】
また、東京都の創業助成金のように自治体ごとに設けられている助成金もあります。お住まいや本社を置く自治体に問い合わせてみましょう。
アセットファイナンスはいわゆる「つなぎ融資(ブリッジファイナンス)」や、短期的な資金調達の際にも役立ちます。ここではメリット・デメリットと主な種類を紹介します。
アセットファイナンスによる資金調達のメリットは、次の通りです。
融資と比較すると返済義務がない点は大きなメリットです。また、ファクタリングは業績が悪化していたり、直近の売上が乏しかったりする場合でも資金調達しやすいという特長があります。また、負債ではないため、会社の財務状況に影響を与えにくい点もポイントです。
一方、デメリットは次の通りです。
アセットファイナンスの利用には、担保となる資産を所有していることが前提です。業者により手数料は異なるため、あらかじめ確認が必要です。また、土地や建物などの不動産資産を売却すると、取引先などから「財務状況が悪化している」と思われる可能性があります。
アセットファイナンスに関するさらに詳しい情報は、次の記事を参考にしてください。
アセットファイナンスとは?メリットや資金調達方法の違いなどを解説
アセットファイナンスの種類は、次の通りです。
それぞれの内容を紹介します。
ファクタリングは、売掛債権を売却して回収予定日よりも前に早期資金化する方法です。日本では、一般的に後払いの取引が行われているため、資金繰りが困難になる企業が少なくありません。黒字倒産などのリスクを避けるためにも、活用されています。
スタートアップにおいては、ランウェイを乗り越える場合や局所的な投資に用いられるケースもあります。例えば、商品が予想以上に売れたため、仕入れや人材の採用を強化したいと考えた際に、ファクタリングを利用して資金を確保し、スピーディーに事業のアクセルを踏むというケースも少なくありません。
ファクタリングに関しては、次の記事で詳しく解説しています。
保有している不動産を売却したのちに、その物件の賃貸契約を結ぶ方法です。メリットは、売却することでまとまった資金を確保できる点と、同じ物件で賃貸契約を結ぶことでそのまま利用ができる点です。
売却することによって固定資産税や管理費も削減できる一方、一般的には市場価格よりも安い金額での売却になる点に注意が必要です。
自社が保有している不動産や機械設備などを売却して資金を調達する方法です。目に見える有形資産だけでなく、商標権や特許権などの無形資産も売却できます。有効活用できていないものを売却することで、管理費などの費用の削減にもつながります。
一方で、無形資産の売却は企業の競争力に大きく関わるものもあるため、慎重に検討する必要があります。
事業を運営していくうえで、資金調達は重要な位置を占めます。例えば、必要な資金を調達できないと、起業や事業拡大が実行できず、将来得られるはずの利益も得られなくなるかもしれません。また、経営難の際に必要な資金を調達できない場合は、倒産という結末を迎えることになります。
資金調達をスムーズに進めるためにも押さえておきたいコツとして、次の4点が挙げられます。
それぞれのコツについて解説します。
資金調達をするときは、まず「何に使う資金か」そして「どの程度の金額が必要なのか」について明確にする必要があります。また、金額は明確な根拠に基づかなくてはいけません。
金融機関から融資を受ける際にも、まずは資金使途や金額、金額の根拠が問われます。誰が見ても納得できるように、この3点について明確にしておきましょう。
資金使途と借入額、金額の根拠の3つが明確であっても、借りた資金を使ってどのように事業を進めていくのかが明確でないときは、金融機関は安心してお金を貸すことができません。
詳細な事業計画書を作成し、金融機関が不安なく融資できるようにしておきましょう。想定されるリスクや対応法なども網羅しておくと、より良い事業計画書に仕上がります。
金融機関から融資を受けて資金調達する場合は、借入先を吟味することが必要です。金融機関やローン商品によって、適用される金利や借入可能な金額、担保有無などが異なります。丁寧に吟味してから、借入れを申し込みましょう。
なお、事業規模や事業体によって適した借入先が異なります。ベンチャー、スタートアップ向けの借入先とスモールビジネス向けの借入先を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
事業を拡大し、将来的に事業売却や上場を目指している場合であれば、ベンチャーキャピタルや投資家からの出資を検討しましょう。
出資は借入れとは異なり返済の義務がないため、資金調達後の資金繰りに影響が及びにくく、事業拡大のスピードを加速させやすいというメリットがあります。また、ベンチャーキャピタルから出資を受けると、経営や事業全般にわたって有益なアドバイスを得られることもあります。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「ベンチャーキャピタル(VC)とは未上場企業への投資会社!メリットや注意点は?」
スピーディーに資金調達したいというスタートアップには『マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups』がおすすめです。売掛債権を売却していただくことで早期資金化が可能です。
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事業規模の拡大よりも、新しいビジネスに挑戦したいときや、社会貢献性のある仕事をしたいと考えているときであれば、クラウドファンディングによる資金調達も検討できます。
クラウドファンディングサイトに登録し、事業の新規性や社会貢献性についてアピールしましょう。賛同者から資金を集めることができれば、元手がなくても新規事業に着手することができます。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「クラウドファンディングとは?種類や出資を得るメリット、注意点を解説」
資金調達は、時期によっても適した方法が異なります。起業時と事業拡大時、経営難時に分けて解説します。
事業実績がない状態では、銀行などの民間金融機関からの借入れは難しいといえます。日本政策金融公庫の新創業融資など、起業時向けの資金調達方法を選ぶようにしましょう。また、事業のアイデアに新規性や社会貢献性があるときは、クラウドファンディングも検討できます。
事業を拡大するときには、ベンチャーキャピタルや投資家などからの出資や、民間金融機関からの借入れを検討できます。いずれも事業計画書を丁寧に作成して将来性があることをアピールすることで、資金調達しやすくなることがあります。
経営難のときは、日本政策金融公庫からの借入れを検討してみましょう。日本政策金融公庫では、新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢の影響による、経営難の方向けの融資制度も実施しています。また、新型コロナウイルス感染症の影響による経営難に関しては、国や自治体の補助金制度も検討してみましょう。
日本政策金融公庫や補助金制度の条件に合わず、資金調達を受けにくいときは、ファクタリングも検討できます。比較的短期間で資金調達できるため、急ぎのときにも利用可能な方法です。
企業が資金調達する方法はさまざまに存在するものの、必ずしもすべての方法が利用できるとは限りません。企業の資金調達における主な課題は次の3つです。
企業規模や経営状況によっては、これらの課題が大きく影響します。ここでは、課題ごとに詳しい内容をみていきましょう。
企業によっては、担保や信用力が影響して借入れができないケースもあります。融資には必ず審査があり、担保や信用力、業績などをもとに返済能力の有無を判断されます。
特に成長初期の企業は信用力を証明する実績も少なく、担保となる不動産や設備も保有していないケースが多いでしょう。さらに、創業直後であれば赤字経営である企業も少なくありません。
このような経営状況を金融機関が高リスクと判断して融資を受けられず、資金の調達先を確保できない企業があるのも事実です。
株式や社債などによる資金調達は、ハードルが高いと言わざるを得ません。なぜなら、商品やサービスの知名度が低い企業に資金援助する人は少ないからです。
ベンチャーキャピタルや個人投資家などの多くは出資先の企業を成長させ、将来的にリターンを得るために出資します。今ある担保や信用力をもとに融資を判断する金融機関とは異なり、ビジネスモデルや市場の成長性、優位性などを軸に判断します。
このため株式や社債などによる資金調達は、成長性や独自性の高い企業でなければ現実的に難しいといえます。
資金調達の目的が、赤字の補填になっている企業は少なくありません。売り上げが減少すれば、商品の仕入れなどにかかる変動費は同じく減少します。
一方、人件費や家賃、水道光熱費といった固定費は売り上げの大小に関わらず支払いが発生します。その不足を補うために資金調達を求める場合、収益性や財務状況自体に問題があるケースが多いです。
赤字になっている企業は融資を受けにくいのが実情です。融資や出資よりも人件費や経費の圧縮による経営の立て直しを優先する必要があります。
前述のように担保や信用力がなかったり、赤字の補填が目的になっていたりすると資金調達が難しい場合もあります。ただし、最適な調達方法を選んだり、事業計画書を作成したりするなど、取り組み次第では資金調達を成功に導くことが可能です。
最適な資金調達の方法は、自社の現金や預金の流れによって異なります。例えば、利益を得るまでに時間がかかるビジネスモデルと前入金がベースのビジネスモデルでは、資金に対する捉え方が異なります。
信用力があり担保の準備も可能なら「銀行借入」、資金調達を急ぐなら手数料を支払うことで、売掛金を決済日よりも前に現金化できる「ファクタリング」といったように、自社の資金ニーズ・ビジネスモデルに適した調達方法を選ぶことが重要です。
また、企業の信用を証明するためにも「事業計画書」の作成もおすすめします。事業計画書とは、企業の戦略や収益の見込みなどを伝えるための書類です。
事業計画書は金融機関などが融資を検討する際の判断材料になり、ビジネスプランの実現性や成功確率を客観的に伝えられます。その結果として、資金調達の成功確率を高めることが可能です。
資金調達にはエクイティファイナンスやアセットファイナンス、補助金・助成金をはじめさまざまな方法があります。それぞれのメリット・デメリットを確認したうえで、自社に合う方法を選ぶことが重要です。
スタートアップの場合、資金調達のコストを抑えることも重要です。当社では、スタートアップ向けに売掛債権を早期現金化できる『マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups』のサービスを提供しています。特徴は次の3つです。
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