売上高の増加は企業にとって喜ばしいことですが、リスクが増えることも把握しておかなければなりません。
本記事では、増加運転資金とはなにかを説明し、増加運転資金が増える要因や計算方法、資金調達方法などを解説します。
増加運転資金とは、売上高の増加に伴って必要になる資金のことです。たとえば、事業が拡大し売上が増加すると、それに伴って仕入れや在庫の量も増えるため、運転資金も増加します。この運転資金を「増加運転資金」と呼びます。
そもそも運転資金とは、事業を運営していく際に必要な資金です。たとえば、次の費用を支払うために、準備しておく資金といえるでしょう。
▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「融資で運転資金を調達する5つの方法!融資額の目安や受けるコツを解説」
「運転資金の目安とは?資金の種類や調達方法まで詳しく解説」
運転資金は、大きく分けて4つの種類があります。
設備の購入にかかる費用など突発的なものは、運転資金には分類されません。安定した事業の運営を進めるためには、それぞれの運転資金について理解を深めておくことが大切です。
企業によっては売掛金が発生し、売上が立つ時期と実際に着金するまでの期間にズレが生じることがあります。こうしたケースでは手元の資金が不足しやすくなります。資金に十分な余裕があれば問題ありませんが、そうでない場合は資金繰りに苦労しかねません。
特に注意すべきなのが、売掛金と買掛金の支払いサイトです。たとえば、1本あたり100万円の売上がある事業で、仕入れに60万円かかるとします。契約数が3倍に増えると、300万円の売上が期待できる一方、仕入れも180万円になります。
このときに売掛金の支払いサイトが遅く、買掛金の支払いサイトが早ければ、増加運転資金が不足します。最悪の場合、黒字倒産につながりかねません。黒字倒産については、次の記事で詳しく解説しています。
リスクを最小限に抑え、効率的に事業を展開していくためには、増加運転資金が増える原因を把握しておくことが大切です。
ここでは増加運転資金が膨らむ原因を5つ紹介します。
需要が多く見込まれる場合、企業は販売機会を逃さないように在庫を増やします。在庫の増加に伴い、増加運転資金もより多く必要になります。
サプライチェーンの供給が止まってしまうなど不測の事態に備えるために、通常より多めに仕入れることで、増加運転資金が多くなる場合もあります。また、サプライヤーからの大量仕入れによる割引を利用することで、通常よりも多くの在庫を抱えるケースも見られます。
販路が拡大すると、さまざまな顧客に対応するケースが増えるため、債権回収の遅延リスクが高くなります。売掛金は売上が計上されてもすぐには現金として回収されません。このため、売上が増加すると手元資金が少なくなりやすく、企業のキャッシュフローに深刻な影響を及ぼしかねません。
特に、支払い遅延が続くと売掛金の回収期間が延び、現金化が遅れることになります。結果として、追加の資金調達が必要となり、運転資金が増加します。このような状況を避けるためには、適切な売掛金管理と顧客の信用調査が重要です 。
ランニングコストとは、従業員の給与や福利厚生費、施設の維持管理費、公共料金など、企業が日常的に支出する費用のことです。従業員の給与や福利厚生費が上昇すると、毎月の支出が増加し、運転資金の必要性が高まります。
また、電気代やガス代などの光熱費が上昇する場合も、追加の運転資金が必要になる要因の一つです。
新しい事業を立ち上げるためには多額の運転資金が必要です。具体的には、設備投資やマーケティング費用、新しい市場や顧客層を開拓するための費用を準備しなければなりません。
新規事業にかかる費用は、売上が軌道に乗るまでの間、企業のキャッシュフローに大きな負担をかけることになります。そのため、事業拡大を計画する際には、運転資金の増加を見込んだ計画が求められます。
運転資金の計算方法を把握しておけば、精度の高い事業計画をつくりやすくなります。ここでは必要な運転資金の目安も解説します。
増加運転資金の計算方法は次のとおりです。
増加運転資金が増える要因によって、計算方法も異なります。たとえば、次のとおりです。
一般的な運転資金の計算方法は次の通りです。
次の方法でも計算できます。
たとえば、売掛債権が100万円、棚卸資産が50万円、買入債務が30万円の場合、運転資金は次のように計算されます。
このようにして運転資金を計算し、適切な資金計画を立てることが大切です。
必要な運転資金の目安として、一般的には3〜6カ月分の運転資金を準備しておくことが望ましいとされています。予期せぬ支出や収入の遅れに対処するためです。ただし、業種や業態によって必要な運転資金の額は異なります。
たとえば、飲食店のように資金の回転が速い業種では、手元に必要な資金は比較的少なくて済む傾向にあります。一方、不動産業など回収までに長い期間がかかる事業では、より多くの運転資金を準備しておくことが重要です。事業の特性に応じて、適切な運転資金額を見極めましょう。
運転資金が増加すると、資金調達方法の検討が必要になることもあるでしょう。ここでは4つの資金調達方法を紹介します。
日本政策金融公庫は、国が100%出資・運営している機関で、小規模企業や中小企業を対象に支援を行っています。銀行よりも融資を受けやすく、金利が低めに設定されているのが特徴です。
事業目的に応じたさまざまな融資制度が設けられており、条件を満たせば無担保、無保証人での融資を受けられることもあります。ただし、審査が比較的長く、申込から結果がわかるまで3週間~1か月程度かかることもあります。
日本政策金融公庫で融資を受ける流れを解説!注意点や審査のコツも紹介
都市銀行や地方銀行などの民間銀行も融資を行っています。融資の申請時には、決算書や事業計画書などの資料をもとに審査が行われ、金利や返済期間などの条件が決定されます。
審査は厳しい傾向にあり、銀行によって条件はさまざまです。場合によっては、担保や保証人が必要になることもあります。
中小企業や小規模事業者の資金支援を目的とした融資制度を、都道府県などの自治体、金融機関、信用保証協会が連携して提供しています。比較的、低金利で借り入れできるため、中小企業におすすめです。
ただし、手続きが複雑で、融資までに3カ月ほどかかることもあります。また、自治体によって金利や融資の上限が異なるため、事前に確認が必要です。
ファクタリングとは、支払い期日前かつ未回収の売掛債権を現金化するサービスです。上述した融資では、資金調達に数カ月かかることも珍しくありません。しかし、ファクタリングなら最短で審査後の翌営業日に現金を確保できます。
ファクタリングは売掛債権を売却する仕組みであるため、銀行の融資のように審査が複雑でなく、提出書類が少ないのも特徴です。ただし、一定の手数料がかかるというデメリットもあります。
一般的に、売上の増加に伴って運転資金も増えます。重要なのは、増加運転資金が増える要因をあらかじめ把握し、適切なタイミング・方法で資金調達することです。
増加運転資金の調達方法として、当社の『マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups』の利用も検討できます。当サービスは、次のような特長があります。
資金調達をした経験がないスタートアップでも利用可能です。将来の資金繰り次第では億単位の資金調達も可能ですので、まずはお気軽に資料ダウンロード・お問合せからご相談ください。
「マネーフォワード トランザクションファイナンス for Startups」は売掛債権を売却していただくことで、最短翌営業日に資金化できるスタートアップのための新しい資金調達手段です。資金調達をご検討中のスタートアップは、ぜひご相談ください。
ファクタリングに関するお役立ち情報を、マネーフォワードケッサイ株式会社が提供いたします。ファクタリングサービス「マネーフォワード アーリーペイメント」は、お客様の所有する売掛債権(売掛金)を売却することで、一定の手数料を差し引いた金額を受け取ることができる2者間ファクタリングサービスです。