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売掛金・未収入金・買掛金・未払金の違いは?仕訳例も紹介

自分の会社の財務状況を把握するために、経営者は貸借対照表の見方を理解する必要があります。しかし勘定科目の売掛金・未収入金、買掛金・未払金の違いを理解できているでしょうか。

今回の記事では、一見紛らわしい勘定科目の違いについて、仕訳例も紹介しつつご説明します。

目次

売掛金と未収入金の違い

売掛金と未収入金の違いは、どちらも貸借対照表上の資産の部にある債権の科目です。
売掛金営業活動により、サービスや商品を販売した対価の債権であり、現金で回収するものです。通常の商取引では、一定期間に発生した取引分をまとめて翌月などに請求します。

例えば、12月中に20回の取引があった場合には、月末に締めて20回分の取引をまとめた請求書を発行し、1月末に売掛先企業から支払ってもらう形です。業種によっては「工事未収入金」や「営業未収入金」と記すこともありますが、営業活動にかかる債権なので売掛金として考えます。

売掛金を立てる場合は、売掛先企業の信用力を確認する必要があります。売掛金が回収できなくなった場合には、資金繰りが困窮してしまう恐れがあるからです。取引を始める前には、売掛先の信用力を確認するために信用情報などのデータを確認したり、経営者と面談して問題ない人柄かを確認したりしましょう。

また、売掛金の回収サイトが長くなれば長くなるほど、資金繰りは苦しくなります。資金繰りを改善したい場合には、回収サイトを短くできるように売掛先企業に交渉しましょう。

一方で未収入金は、商品や製品以外のものを売却して得た収入の債権です。具体的には、車両や機械などの固定資産や備品などを売却した際に後から入金される債権などが該当します。回収までに1年以上を有する物については長期未収入金です。

このように、営業活動に関係する売上で現金で回収する債権が売掛金営業以外の売上で未回収の債権が未収入金と覚えておきましょう。

買掛金と未払金の違い

買掛金と未払金は、どちらも貸借対照表上の負債の部にある科目で確定済みの債務になります。

買掛金は、営業活動で必要になる商品や材料の仕入代金や外注費などを後払いする債務です。取引先から一定期間分をまとめた請求をされて、支払期日までに支払います。買掛金の支払いサイトが短いと資金繰りを圧迫するので、支払いサイトをなるべく延ばすことができないか交渉してみましょう。

未払金は、本来の営業と結びつかない事務用品や備品を購入して後払いをする際に使う科目です。営業に関係する支払いで、現金で支払いする予定の債務が買掛金営業以外の支払後払いになっている債務が未払金と覚えておきましょう。

未払金と未払費用の違い

未払金と混同しがちな言葉に「未払費用」があります。未払費用とは、継続する契約を記録する際に用いる経過勘定科目の一つで、定期的に支払うことが決まっているものに対して使用します。

例えば、家賃や雇用契約を締結している従業員へ支払う給与など、決算時点より後払いになる費用は未払費用です。継続したサービスの提供を受ける契約でありながら、支払い自体は翌期以降に行われる場合であれば、未払費用として決算処理します。

一方、繰り返すことがないと想定される支出、例えばインターネット回線の工事費用や、イベントなどのために単発で契約したアルバイトスタッフへの給与などは未払金です。未払費用と同じく、支払いが翌月以降に繰り越されるときは、適切な月に帳簿に記載して処理を行います。

未払金と未払費用を使い分けるメリット

継続する契約に対する支出かどうかで、未払金と未払費用を分けます。また、未払金と未払費用は計上時期だけでなく仕訳の方法も異なるため、別の勘定科目を用いることで経理上のミスを減らせるというメリットもあります。

支出の見直しを行う際にも、未払金と未払費用を分けておくと便利です。未払金と未払費用を比較することで、支出の中で単発的な性質のものが多いのか、それとも固定費用が多いのか、ある程度の傾向を知ることができるでしょう。

未払金が多いと、単発的な性質の支出が多いと考えられます。同じ目的の支出が繰り返されている場合は、定期契約などに切り替えて単価を安くできるかもしれません。また消耗品などの購入が繰り返されるときには、まとめて購入して単価を安くすることも可能です。

未払費用が多いと、固定費用が多いと考えられます。固定費用は経営状態に関わらずほぼ一定の支出となるため、現状では問題がなくても、収入が減ったときには負担になることが想定されるでしょう。本当に必要な支出なのか定期的に見直し、コストのかかりにくい経営を実現します。

未払金と長期未払金の違い

未払金は、支払うタイミングによって通常の未払金と「長期未払金」に分ける必要があります。決算の翌日から1年以内に支払うときは未払金、1年を超えてから支払うときは長期未払金となります。

未払金は流動負債に計上しますが、長期未払金は固定負債に計上することが一般的です。例えば、1年以上支払いが行われていない債務や、1年を超える割賦払いを予定している場合には、長期未払金の勘定科目を用いて仕訳をします。

なお、流動負債と固定負債を分けて記載することは、財務分析においても重要なポイントです。流動負債よりも固定負債が多いと、短期的に支払いが迫っているものが少ないと考えられるため、資金繰りは安定していると考えることができます。反対に固定負債よりも流動負債が多いときは、支払いが迫っている負債が多く、資金繰りも不安定になりがちと分析できるでしょう。

未払金の仕訳

未払金があるときは、次の2つのタイミングで帳簿に記録することが必要です。

  • 未払金が発生したとき
  • 未払金を支払ったとき

それぞれどのように仕訳をするのか、いくつかの具体例を挙げつつ解説します。

商品・サービス以外を後払いで購入したとき

イベント時に使用する受付用デスクを後払いで購入したとしましょう。後払いとするならば、以下のように仕訳をすることができます。

借方 貸方 摘要
消耗品費 50,000円 未払金 50,000円 受付用デスク A商店で購入

1年以内に代金を支払ったときは、支払ったタイミングで帳簿に記録します。普通預金から代金を一括で支払った場合は、以下のように仕訳をしましょう。

借方 貸方 摘要
未払金 50,000円 普通預金 50,000円 受付用デスク A商店

未払金が年度をまたぐとき

取引から1年以内に支払う予定であっても、支払いが年度をまたいでしまうことがあります。このようなときは勘定科目は未払金のままで、摘要欄に詳細を記載するようにしましょう。

例えば、クレジットカードの引き落としが次年度に行われる場合には、次のように仕訳ができるでしょう。

借方 貸方 摘要
消耗品費 50,000円 未払金 50,000円 〇月にクレジットカードで引き落とし予定

また、本来は未払金とするところを異なる勘定科目で仕訳をしてしまうと、経費とならないものが経費となったり、所得が過少に申告されたりすることになります。

例えば、営業に使用する自動車をローンで購入した場合、ローンの返済は借方に未払金となりますが、誤って「車両費」とすると経費計上され、故意ではないものの不正が生じてしまいます。ミスを回避するためにも、ローン残高と帳簿を照らし合わせるようにしましょう。

家事按分が必要なとき

プライベートと仕事で共通したものやサービスを利用しているときは、家事按分をして、仕事にかかった費用を適切に帳簿に記録することが必要です。

例えば、自宅に事務所を構え、同じインターネット回線を利用している場合について考えてみましょう。月額料金が5,000円で、仕事で8割、プライベートで2割の割合でインターネット回線を利用しているとするならば、以下のように仕訳をすることができます。

借方 貸方 摘要
通信費 4,000円 未払金 5,000円 インターネット回線料
事業主貸 1,000円

なお、家事按分の割合には、明確なルールがありません。しかし、あまりにも妥当性を欠いた家事按分では、帳簿の信頼性を損なうことになってしまいます。使用する時間や面積などの根拠のある数字を用いて、家事按分の割合を決めるようにしましょう。

例えば100平方メートルの床面積の住宅を借り、そのうち、事務所として使用しているスペースが30平方メートルであれば、仕事とプライベートの家賃の割合は3:7(30平方メートル:70平方メートル)に按分することができます。家賃が10万円で、仕事で使用している口座からまとめて引き落とされたのであれば、以下のように仕訳ができるでしょう。

借方 貸方 摘要
地代家賃 30,000円 未払金 100,000円 事務所・自宅の家賃
事業主貸 70,000円

電気代も同じく面積で按分することができますが、使用している時間で按分することもできます。例えば、一人で暮らしているマンションで業務を行っている場合、業務時間はプライベートの電気利用はないと考えられるでしょう。週に42時間働いている場合であれば、仕事とプライベートの電気代の割合は1:3(42時間:126時間)と按分できます。

リースで購入したとき

リースで購入した場合は、料金を後払いしているわけではないため、未払金の勘定科目を使用しません。リースは本来、物品を賃貸する目的の契約なので、それぞれの契約に従って会計処理をすることが必要です。

例えば、ファイナンスリースで検品ロボットを借り、1年間のリース料を普通口座から支払った場合について考えてみましょう。支払利息が10%、リース料が110万円であれば、以下のように仕訳をすることができます。

借方 貸方 摘要
リース債務 1,000,000円 普通預金 1,100,000円 検品用ロボットリース料
支払利息 100,000円

売掛金には時効がある

売掛金には時効があります。2020年4月以降に発生した売掛債権の請求書の時効は、売掛金の支払期日から5年間です。

売掛金の決済をしてもらえない場合には、請求書を何度も送ったり、支払いを催促することができます。しかし相手に支払う気がなく、5年間請求先に支払を無視され続けた場合は時効となってしまうのです。時効が成立したら請求先は支払の義務がなくなり、売掛金の回収ができません

ただし、内容証明を利用した催告をすれば、時効の完成が6ヶ月猶予されます。内容証明による請求の「催告」について、民法150条で以下のように記載されています。

(催告による時効の完成猶予)
第百五十条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

この通り、内容証明を利用した催告により時効の完成が6ヶ月猶予されます。しかし、支払うつもりがない企業に何回依頼しても売掛金が回収できることはないでしょう。

裁判をするのは精神的・金銭的に負担です。特に売掛金が小さな金額の場合は、回収できる金額より弁護士費用のほうが高くなることもあるので、裁判になるのは避けたいところです。

まとめ

売掛金と未収入金、買掛金と未払い金、それぞれ、営業活動に関係するかどうかにより区別されていることを説明しましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

また、売掛金に関しては未回収リスクがあることを把握した上で、掛取引を行う前にしっかりと取引先の与信を見極める必要があります。

売掛金を確実に回収する方法として「ファクタリング」があります。ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に手数料を支払うことで買い取ってもらう資金調達方法です。売掛先の業績に不安がある場合などには、ファクタリングを活用して確実に回収できるようになります。

ファクタリングとよく比較される手形割引は、手形を金融機関などで割り引いて(買い取って)もらうことで資金調達できる方法ですが、手形を発行した企業が貸し倒れた場合には裏書人に遡及されます。ファクタリングは売掛先企業が貸し倒れても、ファクタリング会社に買い取ってもらえば補填する必要がない点も安心です。

ファクタリングは、銀行融資よりも審査から資金調達までの時間が早いのもメリットです。売掛債権を確実に回収したいというニーズと資金繰りの安定のために資金調達をしたい場合には、ファクタリングの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

▼より詳しく知りたい方は、以下の記事もご参考ください。
「ファクタリングのメリット・デメリットとは?」

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