銀行の法人融資は、企業にとってメジャーな資金調達の一つです。ただし、銀行によって金利相場が大きく異なる点に注意が必要です。
安定した経営を実現するためにも、できるだけ低金利の融資を受けることが大切です。本記事では、金融機関ごとの金利相場を紹介し、金利を左右する要素や低金利を実現するためのポイントを解説します。
銀行によって法人融資の金利は異なります。個人が受ける融資よりも大きな金額を動かす法人の場合、金利の差異がわずかであっても、軽視していると経営に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。
ここではメガバンク、地方銀行、信用金庫の3つについて法人融資の金利相場を紹介します。
メガバンクとは、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3行を指します。メガバンクの法人融資の金利相場は、一般的に1.0%〜3.0%程度と言われています。
ただし、いわゆる「ビジネスローン」は金利が高くなる傾向にあります。たとえば、三菱UFJ銀行では次のとおりです。
参考:三菱UFJ銀行|税理士会提携ビジネスローン「融活力」
※2024年12月時点
ビジネスローンは法人融資の一つですが、審査が柔軟かつ無担保・無保証で借り入れできる可能性がある一方、金利が高めに設定されています。
法人融資の金利相場は、のちほど詳しく解説しますが、一般的な指標として短期プライムレート(短プラ)が用いられます。2024年8月、日銀が政策金利を0.25%に引き上げたことを受け、メガバンク各行は短プラを1.475%から1.625%へと0.15%引き上げました。
短期プライムレートは一般的に、最優良企業向けの最低貸出金利を示しています。実際の融資金利は、短期プライムレートに各企業の信用リスクや担保の有無などを考慮して決まります。一般的に信用力の高い企業ほど低金利で融資を受けることが可能です。
地方銀行(地銀)は各都道府県に本店を置き、主に地域を中心に営業する銀行のことです。地方銀行の法人融資金利は、企業の信用力、担保の有無、返済期間などによって異なりますが、0.9%から15.0%程度と幅広く設定されています。
たとえば、静岡銀行の場合は次のとおりです。
参考:静岡銀行|しずぎんビジネスクイックローンの特徴
※2024年12月時点
地方銀行はメガバンクに比べて審査基準が柔軟で、地域密着型のきめ細やかな対応が強みです。メガバンクでは融資を受けにくい中小企業でも、比較的融資を受けやすいというメリットがあります。
また、地方銀行は信用保証協会と連携した保証付き融資にも力を入れています。保証付き融資は、信用保証協会が債務を保証するため、より低金利で企業は融資を受けやすくなります。
信用金庫は地域の中小企業や住民が会員となり、相互扶助を目的とする協同組織の非営利金融機関です。地域の経済状況や業種、企業の財務状況などを総合的に判断し、適切な金利を設定しています。一般的には年利2.0%から6.0%程度が多いとされています。
たとえば、多摩信用金庫の場合は次のとおりです。
参考:多摩信用金庫|たましん事業性ローン(法人向け)
※2024年12月時点
自治体の制度融資を活用することで、通常よりも低い金利での融資を受けられる場合もあります。
銀行以外の法人融資としては、日本政策金融公庫とノンバンクが挙げられます。
ここではそれぞれの金利相場を紹介します。
日本政策金融公庫(日本公庫)は、国が株式の100%を所有する政府系金融機関で、主に中小企業や小規模事業者の資金調達を支援しています。一般的に、民間金融機関よりも低金利で融資を行っています。
具体的な金利相場は次のとおりです。
※1 参考:日本政策金融公庫|国民生活事業(主要利率一覧表)
※2 参考:日本政策金融公庫|中小企業事業(主要利率一覧表)
※3 参考:日本政策金融公庫|農林水産事業(主要利率一覧表)
※2024年12月時点
日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者の支援を目的としているため、民間の金融機関で融資を受けにくい企業でも、比較的審査に通りやすいメリットがあります。さらに、融資期間が最長20年と長く設定されている制度もあり、長期的な事業計画を立てやすくなっています。
ただし、日本政策金融公庫の融資は、ケースによっては審査に時間がかかる点に注意が必要です。また、融資制度によっては、保証人や担保が必要となる場合もあります。
ノンバンクの法人融資は、銀行以外の金融機関が提供する事業者向けの資金調達手段であり、一般的に金利は年3%から18%の範囲で設定されています。
大手消費者金融の金利相場は次のとおりです。
※1 参考:AGビジネスサポート
※2 参考:アコム|ビジネスサポートカードローン(個人事業主向け)
※3 参考:プロミス|自営者カードローン
※4 参考:レイク|レイク de ビジネス
※2024年12月時点
ノンバンクの法人融資は銀行よりも審査基準が柔軟で、担保や保証人がなくても融資を受けられる傾向にあります。そのため、創業間もない企業や銀行では融資を受けにくい中小企業でも、比較的容易に資金調達できるでしょう。
ただし、金利が高い分、返済負担が大きくなる点に注意が必要です。また、ノンバンクのなかには法外な金利を要求する悪質業者も存在するため、利用する際は慎重に業者を選ぶ必要があります。
クラウドファンディングは、インターネットを通じて資金を必要とする個人や団体がプロジェクトを公開し、不特定多数の人々から資金を募る仕組みです。手数料はプラットフォームの運営会社によって異なりますが、一般的な相場としては9%から20%程度とされています。
一部のプラットフォームでは、目標金額達成時にのみ手数料が発生する「All-or-Nothing方式」と、目標金額に達しなくても集まった資金を受け取れる「All-in方式」を選択できる場合があります。All-in方式の場合、手数料率が少し高くなる傾向があります。
ファクタリングは企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に資金を調達する手法です。ファクタリングの手数料は、契約形態によって異なります。
一般的に、売掛債権の額が大きくなるほど、また期間が短くなるほど、手数料率は低くなる傾向があります。また、取引先の信用力が高いほど、ファクタリング会社のリスクが低くなるため手数料率も低くなります。このようにファクタリングはスピード重視の資金調達に適していますが、手数料負担を考慮する必要があります。
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法人の銀行融資には、固定金利と変動金利があります。それぞれで特長が異なるため、自社にとってどちらが合っているかを慎重に見極めなければなりません。
ここでは固定金利と変動金利をそれぞれ詳しく解説します。
固定金利とは、借入期間中、金利が変動しないタイプです。返済計画が立てやすく、将来の金利上昇リスクを回避できるメリットがあります。
一般的に、固定金利は銀行が将来の金利変動リスクを負うため、変動金利よりも金利が高めに設定されています。また、経済情勢が変化して変動金利が下がっても、同じ利率での支払いが必要なため金利低下の恩恵は受けられません。
固定金利には、全期間固定金利と当初固定金利の2種類があります。全期間固定金利は、完済まで金利が固定されるのに対し、当初固定金利は一定期間(たとえば5年や10年など)だけ金利が固定され、その後は変動金利に切り替わります。
変動金利とは、市場金利の変動に合わせて金利が見直されるタイプです。短期プライムレートを基準に設定されることが多く、半年ごとに見直されます。経済情勢によっては返済額が変動する可能性があるため、柔軟な資金計画が必要です。
変動金利のメリットは、金利が下降すると返済額が減る可能性がある点です。ただし、金利が上昇した場合は返済額が増加するリスクがあります。金利の上昇局面では、当初の想定よりも返済負担が大きくなり、資金繰りが悪化する可能性もあるため注意が必要です。
銀行の法人融資は、企業によって大きく金利が異なる傾向にあります。銀行融資を検討している場合、あらかじめどのような要素が金利を左右するのか知っておくとよいでしょう。
ここでは銀行の金利を左右する要素を4つ紹介します。
一般的に、返済期間が長ければ長いほど、金利は高くなる傾向があります。金融機関にとって、長期間にわたる融資は貸し倒れのリスクが高まります。このリスクを補うために、長期の融資には高い金利が設定されます。
たとえば、返済期間が5年であれば金利は2%、10年であれば金利は3%といったように、同じ1,000万円を借り入れる場合であっても返済期間が長くなるほど金利も高くなるケースが多いです。
担保や保証人を提供できると、金利が低くなる傾向があります。これは、銀行の貸し倒れリスクが軽減されるためです。金融機関側から見ると、保証人がいれば返済不能時に保証人に請求できるため利率も低くなります。
逆に、担保や保証人を提供できない場合は、金利が高くなる可能性があります。とりわけ、創業間もない企業や、経営状況が不安定な企業は、担保や保証人を求められるケースが多いです。
担保や保証人は金利だけでなく、融資の審査にも影響します。担保や保証人を提供することで、融資が承認されやすくなる可能性があります。
貸し倒れリスクとは、文字通り貸したお金が返ってこない危険性のことです。企業の業績が悪化したり、倒産してしまったりすると、銀行は貸したお金を回収できなくなることがあります。
貸し倒れリスクが高い企業ほど、基本的に銀行は高い金利を設定します。リスクに見合ったリターンを得たり、貸し倒れが発生した場合の損失を補填したりするためです。
たとえば、財務状況が不安定な企業や、新規事業に挑戦する企業は、貸し倒れリスクが高いと判断され、高めの金利が設定されることがあります。このように、金利は銀行にとってリスクマネジメントの一環として機能しているといえるでしょう。
金利は金融機関にとって重要な収益の一つです。銀行も民間企業である以上、収益を確保し、事業を継続していく必要があるためです。
たとえば、貸した金額と同じ額をただ返済してもらっただけでは、金融機関は収益を得ることができません。銀行の運営には人件費やオフィスの賃料、システムの維持費など、さまざまなコストがかかっています。 金利によって得られる収益は、これらの事業経費を賄うために必要不可欠であるといえます。
金利の利率は、金融機関の経営方針によって大きく左右されます。たとえば、積極的に事業を拡大したいと考えている金融機関は、多くの融資を実行するために低めの金利を設定するかもしれません。 一方、堅実な経営を重視する金融機関は、リスクを抑えるために、高めの金利を設定する可能性があります。
銀行融資を検討するうえで重要なのは、「いかに金利を下げるか」という点です。金利を下げられれば、キャッシュフローが安定し、安定した経営を目指すことができます。
ここでは銀行の金利を下げるポイントを5つ紹介します。
低金利で銀行融資を受けたいと考えているなら、計画的に返済実績を積み重ねることが重要です。金融機関は融資の審査をする際、企業の返済能力を重視します。過去の融資で延滞なく返済してきた実績は、企業の信用力を高め、返済能力が高いと判断される材料となります。
返済実績を積むには、まず金融機関から融資を受け、きちんと返済することが第一歩です。ただし、返済実績を積む際には、利用する金融機関にも注意が必要です。ノンバンク系の高金利商品ばかりを利用していると、「返済能力に問題がある」「資金繰りに困っている」など、ネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。
なるべく銀行など低金利の金融機関から融資を受け、返済実績を積み重ねることが大切です。日本政策金融公庫や信用金庫・信用組合は、起業して間もない法人にも積極的に融資を行っています。これらの金融機関で返済実績をつくることは、信用力向上につながり、将来的にメガバンクなどから低金利で融資を受けやすくなる効果も期待できます。
信用保証協会とは、中小企業が銀行から融資を受ける際に、その債務を保証する公的機関です。企業が返済できなくなった場合、信用保証協会が銀行に代わって返済してくれるため、銀行の貸し倒れリスクが軽減されます。
そのため信用保証協会の保証が付いた融資は、保証がない場合に比べて、低金利で借り入れできるケースが多いです。ただし、信用保証協会を利用するには、いくつかの注意点があります。
まず、信用保証協会に加盟するには審査があり、財務状況や事業計画などがチェックされます。加盟後も会費などの費用が発生します。
銀行融資の金利を下げるには、銀行が行う企業格付けを意識することが重要です。格付けとは銀行が独自に設定した基準に基づいて、企業の財務状況や経営能力などをランク付けしたものです。格付けが高いほど信用力が高いと判断され、審査で有利になり、低金利で融資を受けやすくなります。
銀行は主に決算書の内容をもとに、財務状況や収益力、資金繰りなどを評価し、返済能力に応じて格付けを決定します。格付けを上げるには、黒字決算やキャッシュフローの改善などが大切です。
さらに、中小企業の会計に関する指針に準拠した会計処理を行うことも、格付け向上に有効です。指針に準拠した会計処理を行うことで、低金利で融資を受けられる可能性もあるでしょう。
銀行から低金利で融資を受けやすくするには、返済能力の高さを銀行にアピールすることが重要です。そのためには事業計画書と面接に力を入れましょう。
事業計画書では、過去の決算書や試算表を通じて、安定した収益と健全な財務状況をアピールしましょう。自己資本比率や流動比率が高いほど、財務基盤が安定していると評価されます。中長期的な損益計画や、計画を裏付けるデータを詳しく示すことも重要です。
面接では事業の成長性や収益性、返済能力について、具体的なデータや根拠を示しながら説明することで説得力が増します。事業計画書と面接を通して、銀行に「この企業なら安心して融資できる」と思わせることが、低金利での融資につながります。
銀行融資の審査では、担当者とのコミュニケーションが非常に重要です。融資の可否は、大きく分けて「定量評価」と「定性評価」の2つで判断されます。
定量評価とは、決算書などの数値データを基にした評価です。財務状況や収益性、返済能力などが客観的に分析されます。一方、定性評価は、担当者の主観が大きく影響する評価です。経営者の人柄や事業への熱意、将来性など、数値化できない要素が重視されます。
つまり、いくら数値的に優れていても、担当者に「この企業に融資したい」と思ってもらえなければ、融資は実行されない可能性があります。逆に、数値的に多少課題があっても、担当者が「この経営者を応援したい」「この事業は将来性がある」と感じれば、融資が実行される可能性が高まります。
法人への銀行融資は、金融機関によって金利相場が大きく異なります。安定した経営を目指すためにも、少しでも低い金利で融資を実現させましょう。
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