資金調達の種類は、大きく「アセットファイナンス」「デットファイナンス」「エクイティファイナンス」「その他の方法(自己資金・クラウドファンディング・助成金・補助金)」の4つに分類できます。状況や企業形態によって適している方法が異なります。
各方法をわかりやすく分類し、状況・企業形態に応じて検討可能な種類を具体的にまとめました。
また、適切な資金調達方法を選択するためのコツも紹介します。
資金調達の方法は、大きく次の4つに分けられます。
また、それぞれの方法は、さらにいくつかの種類に分けられます。資金調達の種類を方法別に見ていきましょう。
アセット(asset)とは資産のことです。すでに保有している資産を活かして資金調達することを、アセットファイナンス(asset finance)と呼びます。
アセットファイナンスは保有する資産によって資金を調達するため、返済する必要がないというメリットがあります。ただし、資金調達に使った資産を失うことになる点に注意が必要です。アセットファイナンスの代表的な種類について見ていきましょう。
ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで資金調達する方法です。本来であれば売掛金は指定の期日までは回収できません。しかし、ファクタリング会社に売掛金を買い取ってもらうことで、期日よりも早期に現金を得られ、資金サイクルを早められます。
ただし、ファクタリングには審査があり、必ずしもすべての売掛金を買い取ってもらえるわけではありません。審査に通過するかどうかは、基本的には売掛先の信用度によって決まります。売掛先の信用度が高く、指定の期日に売掛金全額が支払われる可能性が高いと判断されるときには、ファクタリング会社に買い取ってもらうことが可能です。
なお、ファクタリングで調達できる金額は、ご利用企業が所有している売掛金が上限となります。そのため、売掛金の金額以上の資金が必要なときには、ほかの資金調達の種類と併用しなくてはいけません。
また、ファクタリングには2者間と3者間の2つの種類があるため、適切に使い分けることが必要です。
▼ファクタリングの種類
2者間ファクタリングでは売掛先に知られずに資金調達できますが、少し手数料が高めになることがあります。一方、3者間ファクタリングは手数料が低めの傾向にありますが、売掛先に告知する、あるいは了承を得る必要があるため、資金繰りが厳しいことを知られてしまうリスクがあります。
不要な資産がある場合は、資産の売却により資金調達できます。たとえば使っていない不動産や車両、また、特許権や商標権などの無形固定資産も売却が可能です。
不動産や車両は保有しているだけで課税されることがあるため、売却により維持費がかからなくなるというメリットもあります。不動産管理会社に管理を委託している場合や、駐車場を借りている場合には、売却によって削減できるコストがさらに増える場合があります。
メリットもある一方で、デメリットも少なくありません。たとえば事務所や自宅として使っていた不動産であれば、売却すると新たに賃貸物件を借りる必要が生じます。毎月の固定費が増えるだけでなく、長期的に見れば数百万円単位の莫大な資金を失うこともあるでしょう。
また、賃貸物件として収入を得ていた不動産を売却するなら、長期的な利益を失うことにもなりかねません。この場合も、長期的に見れば数百万単位の莫大な損失になる可能性があります。
売掛金を約束手形としている場合は、銀行に手形を買い取ってもらうことで資金調達が可能です。買取の際に手数料がかかりますが、ファクタリングと比べると低い傾向があります。また、ファクタリングよりも資金調達までの時間が短い点もメリットです。
しかし、売掛先が倒産したときなど、約束手形が不渡りになったときは、銀行に弁済しなくてはいけません。かえって多額の負債を抱えることにもなりかねないため、売掛先に支払い能力があることを確認してから銀行に買い取ってもらいましょう。
M&Aとは、事業や会社を売却することで資金調達する方法です。たとえば複数の事業を手がけている場合、収益があまり上がっていない事業を売却できるかもしれません。自社にとってはあまり利益に繋がっていない事業でも、別の企業にとっては販路拡大やノウハウ取得に役立つ「金の卵」になり得る可能性があります。また、会社全体を売却することも検討できます。
ただし、売却までに時間がかかる点に注意が必要です。事業内容や経営状態によっては、なかなか買い手がつかず、数か月~数年かかることも珍しくはありません。また、売却価格の交渉も容易ではありません。M&Aを仲介する専門会社に相談することで、買い手が見つかりやすくなりますが、手数料もかさむため、受け取れる金額が減ってしまう可能性があります。
デット(debt)とは借入れのことです。借入れによって資金調達することをデットファイナンス(debt finance)と呼びます。
デットファイナンスは資金を借りることで調達するため、売却できる資産がないときでも利用可能です。しかし、借りるためには、担保となる不動産や企業としての信用力・将来性などが求められるため、必ずしも資金調達できるとは限りません。デットファイナンスの代表的な種類を見ていきましょう。
▼金融機関の種類(審査に2~6週間かかる)
銀行や信用金庫、日本政策金融公庫等の金融期間から融資を受け、資金調達できることがあります。担保や会社の信用力などをベースとして審査を実施したうえで借りられる金額が決まるため、希望の金額を借りられない可能性がある点に注意しましょう。審査結果によっては、借りられない可能性もあります。
また、金融機関から資金調達すると、通常は翌月から返済が始まります。毎月の返済額を低く設定すると返済負担は軽減しますが、借入期間が長引くと、その分利息が高くなってしまう可能性に注意しましょう。
利息を抑えるなら短期間で返済する必要がありますが、その場合は毎月の返済額が高額になり、資金繰りが厳しくなるだけでなく、借りる前よりも経営状態が悪化するかもしれません。金融機関の担当者と話し合い、毎月の返済額を適切に設定することが大切です。
どの金融機関から借りるか迷ったときは、まずはすでに取引がある金融機関から検討してみましょう。取引が長い場合は、信用力を高く評価してもらえるかもしれません。長く取引をしている金融機関がないときは、地元の銀行や信用金庫も検討できます。
低金利で借りたいときや、創業するときなら、日本政策金融公庫も検討してみるといいでしょう。日本政策金融公庫は政府系金融機関で、低金利で借りられるだけでなく、創業時などまだ企業として実績がないときでも利用しやすく工夫されています。
ただし、どの金融機関を利用する場合でも、審査に2~6週間ほどかかることが一般的です。そのため、急いでいるときには不向きです。
▼ノンバンクの種類(審査が速い傾向にある)
急いでいるときは、消費者金融や信販会社などのいわゆるノンバンクから借りることも検討できます。早ければ即日に借りられるケースもあります。ただし、金利が高い傾向にあるため、長期間借りると利息が高額になる可能性がある点に注意してください。短期間で返済できるとき、あるいは少額のみを借りるときに、ノンバンクを利用するほうがよいかもしれません。
自治体では中小企業支援の目的で、制度融資を実施していることがあります。金融機関からの融資を受けやすくするための制度であるため、金融機関の審査通過が厳しいと思われるときは検討してみましょう。
また、制度融資を利用すると、金融機関から融資を受けるときにかかる信用保証料などの手数料の一部を、自治体が負担してくれることがあります。そのため、金融機関から直接融資を受けるよりも、少ない負担で借りられる場合があります。
メリットの多い制度融資ですが、審査に時間がかかる点に注意が必要です。状況にもよりますが、制度融資に申し込んでから金融機関から融資を受けるまでに2~3か月ほどかかることもあります。
自治体によって制度融資の内容等が異なる点にも注意が必要です。手続きの手順が異なるだけでなく、申し込みの条件も異なるため、利用できない可能性もあります。また、申し込む際に専門家との面談が必要になることもあり、手間がかかる点にも注意しましょう。
社債を発行することで、資金調達できることもあります。社債とは企業が発行する債券のことです。企業側は既定の期日になると、債券の額面金額に利息を加えて、債券を購入した投資家に支払います。社債には公募債と私募債の2つの種類があります。
エクイティ(equity)とは出資のことです。出資によって資金調達をすることをエクイティファイナンス(equity finance)と呼びます。
出資は借入れとは異なり、基本的に返済不要です。そのため、資金調達後に経営が苦しくなりにくいというメリットがあります。また、不動産や売掛金などの資産がなくても利用できる点もメリットです。
しかし、出資するかどうかは、あくまでも投資家の意思にかかっています。もし出資したいと考える投資家がいないときは、エクイティファイナンスは利用できない点に注意が必要です。
ベンチャーキャピタルとは、未上場のベンチャー企業に出資する投資会社のことです。出資をする代わりに株式を受け取り、上場したときに株式を売却することで利益を獲得します。また、上場しない場合でも、企業価値が十分に高くなったと思われるときにM&Aを実施し、株式譲渡により利益獲得を目指します。
このような事情から、ベンチャーキャピタルから出資を受けるためには、次のいずれかを満たしていることが必要です。
ベンチャーキャピタルは、単に出資をするだけでなく、ビジネスについてのアドバイスも行うことが多いです。
また、コーポレートベンチャーキャピタルからの出資も検討できるかもしれません。コーポレートベンチャーキャピタルとは、出資を専門としているベンチャーキャピタルとは異なり、本業は別にあるが出資も行う企業のことです。
出資する企業の種類
コーポレートベンチャーキャピタルでは、自社事業とのシナジー効果を目的として出資を行うため、関連性の低い事業を行っている場合は出資を受けられません。しかし、シナジー効果を期待できると判断された場合には、出資を受けられるだけでなく取引先も増えることになるため、長期的な企業成長も期待できます。
エンジェル投資家などの個人投資家から、出資を受けられることもあります。経営にかかわる投資家もいるため、ビジネスや経営に対して有益なアドバイスを得られることがあります。
なお、個人投資家が出資をする目的は、ベンチャーキャピタルと同じく、上場やM&Aの際に株式を売却して利益を得ることです。そのため、将来性がある企業でないと判断されると、出資は受けられない可能性があります。
個人投資家から出資を受けるメリットとしては、短期間で資金調達できる点が挙げられます。ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルとは異なり、出資するかどうかを企業内で話し合う必要がないため、投資家自身が決意さえすれば即日にでも出資が可能です。
しかし、個人として出資をするため、ベンチャーキャピタルなどの企業と比べると出資額は少なくなる傾向があります。多額の資金調達が必要な場合は、個人投資家以外の方法も検討しておく必要があるでしょう。
公募増資とは、新たに株式を発行し、購入する投資家を広く募集することで資金調達する方法です。不特定多数の個人・法人から出資を募れるため、多額の資金調達も可能な場合があります。
ただし、公募増資は上場企業のみ利用できる方法である点に注意しましょう。また、新しい株主が増えることで配当金が増える可能性があること、議決権が希薄化し、場合によっては経営陣の支配権が弱まることもあることにも注意が必要です。
資金調達はアセットファイナンス・デットファイナンス・エクイティファイナンスの3つが基本ですが、いずれにも分類できない方法もあります。
主な3つの種類について見ていきましょう。
経営者自身の自己資金を活用するという方法も検討できます。預貯金を利用したり、不動産を売却したりすることで資金を準備し、事業に活用します。
返済不要の方法ですが、生活を脅かさない程度に留めておくことが必要です。まずは経営者の生活を確保したうえで、近い将来、必要にならない程度の金額を活用するようにしましょう。
クラウドファンディングにより、不特定多数に出資を募ることもできます。クラウドファンディングで資金調達できるかは、事業やビジネスモデルに魅力や新規性があるかどうかなどで決まります。企業の魅力を伝えるテキストや動画を作成し、オンラインで公開しましょう。
なお、クラウドファンディングには次の3つの種類があります。
クラウドファンディングの種類
出資のみなら返済は不要のため、企業側の負担はありません。しかし、投資家が満足できる事業内容でないときは、多額の出資は集まらない可能性があります。
広く出資を集めるなら、返礼品や配当金を設定する方法も検討できます。ただし、事業がうまくいかないときは、返礼品や配当金を投資家に渡せない可能性もあるため、注意が必要です。
国や自治体で実施している、補助金制度や助成金制度を利用する方法もあります。返済不要のため、負担なく利用できる点がメリットです。
しかし、資金調達が必要なタイミングで、申し込みの条件を満たす補助金制度・助成金制度を実施しているとは限りません。また、制度によっては申し込みから資金の受け取りまでに時間がかかるため、急いでいるときにも利用が難しいでしょう。
紹介したように資金調達方法には多くの種類があります。ここでは、企業規模別に利用できる方法をいくつか見ていきましょう。
▼中小企業が利用しやすい資金調達方法の種類
未上場の中小企業が利用しやすい資金調達方法としては、日本政策金融公庫からの融資が挙げられます。中小企業向けの融資商品もあるため、銀行よりも借りやすいことがあります。
また、成長性が期待できる場合は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資も利用できるかもしれません。ただし、まずはベンチャーキャピタルやエンジェル投資家に企業の存在が知られている必要があります。そのため事業内容やビジネスモデルを自社ホームページやニュースリリースで発信するなど、アピールすることも大切です。
▼ベンチャー企業・スタートアップ企業が利用しやすい資金調達方法の種類
日本政策金融公庫では、ベンチャー企業やスタートアップ企業向けの融資商品もあります。新規性のある事業や国の発展につながる事業に取り組んでいる場合は、ぜひ相談してみましょう。
また、ベンチャー企業・スタートアップ企業で成長性が期待できる場合は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資も受けやすくなります。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から打診があったときにすぐに対応できるよう、事業内容や将来性についてわかりやすくまとめたプレゼン資料を準備しておきましょう。
資金調達が必要な状況によっても、適切な資金調達方法は異なります。よくある状況別に、検討できる資金調達の種類をいくつか紹介します。
▼起業時に利用できる資金調達方法の種類
起業時には、まず自己資金を利用できないか考えてみましょう。融資などで資金を借りた場合、事業が軌道に乗るまでの間など収入よりも出費が多いときには、融資に対する返済が加わることで、さらに厳しい状況になってしまいかねません。
とはいえ自己資金だけでは不足する場合、日本政策金融公庫からの融資も検討してみましょう。日本政策金融公庫では、起業時に利用できる融資商品も提供しています。また、起業を対象とした補助金・助成金を実施している自治体もあります。忘れずに確認しておきましょう。
▼事業拡大時に利用できる資金調達方法の種類
事業拡大向けの融資商品も、日本政策金融公庫では提供しています。業種によって利用できる融資が異なるため、まずは問い合わせてみましょう。
また、ある程度実績を積み重ねているなら、民間金融機関からの融資も受けやすいと考えられます。取引している金融機関に相談してみてください。
▼事業存続時に利用できる資金調達方法の種類
経営が危ういときも、まずは日本政策金融公庫に相談できます。事業再建や一時的に経営が悪化している企業向けの融資商品もあります。
とはいえ、事業存続が危機状態にあるときは、融資を受けることは簡単ではありません。そのような場合は、補助金・助成金、アセットファイナンス全般の利用を検討しましょう。
▼会社・事業の買収目的で利用できる資金調達方法の種類
ほかの企業や事業を買収するときにも、資金調達が必要になることがあります。金額が大きくなるため、アセットファイナンスは難しい場合があります。民間金融機関からの融資や公募増資での資金調達を検討しましょう。
資金調達方法を選ぶときは、次の点に注目してみましょう。
それぞれのポイントを説明します。
資金調達方法によっては、コストがかかるものがあります。たとえば、金融機関から借入れるときなら、保証金や融資手数料などが発生することがあります。また、クラウドファンディングを利用するときなら、クラウドファンディングサイトに手数料を支払うことが必要なケースも多いです。
コストが多いと、その分、調達できる資金が減ります。各手法を利用する前にコストを考慮しておきましょう。
たとえば、コーポレートベンチャーキャピタルから出資を受けるなら、業務提携や取引先を紹介してもらえることも多いです。金額だけでないメリットがあるかも考慮しましょう。
資金調達方法は多くありますが、企業規模や状況によって適切なものが異なります。また、ベンチャーキャピタルなどからの出資が決まった後、実際に入金されるまでの手元資金を増やすためにファクタリングを利用するなど、組み合わせて利用することも可能です。
資金調達のコストや金額以外のメリットなども考慮し、適切な種類を選ぶようにしましょう。
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