急成長を描くスタートアップにとって、エクイティファイナンスは重要な資金調達方法の一つです。しかし、エクイティファイナンスは株式発行を伴うため、メリットとデメリットを十分に理解したうえで慎重に検討することが重要です。
本記事では、エクイティファイナンスとは何かを紹介し、スタートアップがエクイティファイナンスで資金調達するメリットとデメリットを解説します。
エクイティファイナンスとは、企業が株式を発行して資金を調達する方法です。返済義務のない資金調達手段である点や、自己資本が増加するため財務体質を強化できる点がメリットです。
一方で、株主への利益還元が必要となり、経営権が希薄化するリスクもあります。詳しくは次の記事を参考にしてください。
エクイティファイナンスによる資金調達には、スタートアップにとってのメリットとデメリットが存在します。それぞれを把握したうえで、自社にとって最適な資金調達方法を選ぶことが大切です。
ここではメリットを3つ紹介します。
エクイティファイナンスは返済義務がないため、調達した資金をプロダクト開発やマーケティング施策等に集中投下できます。借金の返済に追われることなく、事業成長に専念できるのは大きなメリットです。
また、企業が利益を上げた場合、一部を株主へ配当金として支払うことがありますが、配当金の支払いは義務ではなく企業の業績や経営判断によって決定されます。
エクイティファイナンスは自己資本比率を高めます。自己資本比率は企業の財務安定性を示す重要な指標です。自己資本比率が低いと借入金が多いことを意味し、財務基盤や経営が不安定になりかねません。
エクイティファイナンスによって自己資本比率が高まると、借入金への依存度が低下して財務基盤が強化され、安定した経営が可能になります。金融機関からの信用力も高まり、資金調達もスムーズに進めやすくなるでしょう。
個人投資家やVC（ベンチャーキャピタル）は、投資先企業の成長と株式価値の上昇を期待して出資します。そのため、出資に加えて経営に関するアドバイスや人材紹介、事業提携先の紹介など、さまざまな形で支援してくれる可能性があります。
たとえば、VCは、業界動向や競合分析、経営ノウハウ、人脈などの提供を通じて、事業戦略の立案や人材採用を支援してくれるでしょう。
スタートアップがエクイティファイナンスで資金調達することには、デメリットもあります。ここでは2つのデメリットを紹介します。
エクイティファイナンスでは新しい株式を発行して資金を調達するため、発行済株式総数が増加します。既存株主の持ち株比率が低下し、1株あたりの利益が減少することがあるでしょう。
議決権の割合も低下するため、経営への影響力が弱まる可能性も出てきます。あまりにも希薄化が進むと、株主からの苦情や不信感にもつながりかねません。
譲渡する株式の比率によっては、出資者が経営に介入する機会が増える可能性があります。たとえば、資金調達のために新株発行を検討しているとき、既存の株主がそれに反対するといったことが考えられるでしょう。
また、新しい事業への進出や大型投資、役員人事など、企業の将来を左右するような決定においても、株主の意向を無視できなくなる可能性があります。特に、VCなど専門的な知識や経験を持つ投資家の意見は、経営判断に大きな影響を及ぼしかねません。
スタートアップは、「プレシード」「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」といったラウンドにわかれています。自社のラウンドを把握し、最適な資金調達方法を選ぶことが大切です。
ここではラウンドごとによるエクイティファイナンスの方法を紹介します。資金調達シリーズによる資金調達方法は、次の記事でも詳しく解説しています。
プレシードラウンドは起業アイデアが形になり始めたばかりの段階で、プロダクトやサービスがまだ市場に投入されていない、あるいはごく初期の段階にあるスタートアップを指します。
プレシードラウンドで調達する資金は、一般的に数百万円から数千万円程度です。大規模な設備投資やマーケティング費用などを必要としないため、資金調達額も比較的少額です。
プレシードは「エンジェルラウンド」とも呼ばれています。その名のとおり、エンジェル投資家からのエクイティファイナンスが一般的です。エンジェル投資家については、次の記事を参考にしてください。
エンジェルラウンドとは？主な資金調達方法と成功のコツ・注意点を紹介
シードラウンドはプロトタイプの開発やアイデアの実現を目的とした資金調達ラウンドを指します。調達金額は数百万円から数千万円程度が一般的です。
資金調達先は、主にVC、エンジェル投資家、アクセラレーターなどです。収益化はまだ見込めない一方で、調達した資金は、主に製品開発、人材確保、販売リソースの確保などに使われます。
アーリーステージはプロダクトやサービスが市場に投入され、初期の顧客を獲得し始め、事業が軌道に乗り始めた段階です。シリーズAからシリーズBの投資ラウンドで資金調達を行うケースが一般的です。シリーズAは本格的な事業拡大のための資金調達を目的とし、シリーズBはさらなる成長加速や市場シェア拡大のための資金調達を目的とします。
資金調達先は主にVCとCVC（コーポレートベンチャーキャピタル）が挙げられます。VCは高い成長が期待される未上場企業に出資する投資会社です。CVCは事業会社が戦略実現を目的に自己資金を基にファンドを組成し、投資活動を行う組織です。シリーズAについては、次の記事を参考にしてください。
シリーズAとは？各ラウンドの特徴や資金調達方法、成功させるポイントを解説
ミドルステージはプロダクトやサービスが市場で一定の成功を収め、安定的な収益をあげている段階です。企業はさらなる成長を目指して、事業拡大や新たな市場への進出などを計画します。
ミドルステージにおける資金調達先として代表的なのはベンチャーキャピタル（VC）です。資金調達金額が数億円から数十億円と比較的大規模になるため、複数のベンチャーキャピタルから出資を募ることもあります。複数のVCから出資を受けることで、多様な視点や専門知識を取り入れられ、企業の成長をさらに加速できるでしょう。
レイターステージはプロダクトやサービスが市場で確固たる地位を確立し、安定した収益基盤を築いている段階であり、企業はさらなる事業拡大やIPO（新規株式公開）を視野に入れています。
レイターステージにおける資金調達先として代表的なのもVCです。レイターステージのVCはIPOの可能性が高い企業や、すでにIPOの準備を進めている企業に投資する傾向があります。
スタートアップが利用できる資金調達方法は、エクイティファイナンス以外にもいくつか存在します。代表的なものとして、アセットファイナンスとデットファイナンスが挙げられます。
アセットファイナンスとしてメジャーな資金調達方法がファクタリングです。ファクタリングは売掛債権を現金化する方法で、審査完了後、最短翌営業日に資金調達できるという特徴があります。また、エクイティファイナンスのように株式を譲渡する必要はありません。
デットファイナンスは銀行や金融機関から融資を受ける方法で、返済期限までに元本と利息を支払う必要があります。株式の希薄化を招かない一方で、返済負担が大きいため、安定した収益基盤を持つ企業に向いています。
スタートアップの資金調達方法は、次の記事でも解説しています。
スタートアップ企業の資金調達方法5選！メリットデメリットも解説
エクイティファイナンスは、返済義務がなく自己資本比率を高めるという利点がある一方で、株式の希薄化や経営の自由度低下といったリスクも伴います。また、一般的に、資金調達まで数ヶ月の時間を要します。
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