資本政策はスタートアップにおいても必要です。特にシード期から準備しておくことが求められます。
本記事ではスタートアップに資本政策が重要な理由を説明し、考える際のポイントやラウンド別の重要性、成功させるコツを解説します。
スタートアップにとって資本政策は、将来的な出口戦略を成功させる道筋を明確にするうえで重要です。資本政策は一度策定すると、株主の権利関係により変更が困難なため、慎重に検討し実行する必要があります。
資本政策の中核となるのが「資金調達」「株主構成」「創業者の利益」という3つの要素です。資金調達は事業成長に必要な資金を確保する手段です。株主構成は企業の意思決定や出口戦略に影響を与えます。創業者の利益は、起業家としてのモチベーション維持や事業展開への意欲向上につながります。
資本政策を策定したくても、「どう考えればよいかわからない」と悩む方も多いでしょう。
ここではスタートアップが資本政策を考えるポイントを5つ紹介します。
スタートアップは、事業の成長ステージや事業内容によって必要な資金が異なります。まずは必要な資金を正確に算出し、適切な資金調達方法を選択することが大切です。
資金調達方法はさまざまありますが、主体となるのがエクイティファイナンスとデットファイナンスです。それぞれにメリット・デメリットがあるため、慎重に比較検討する必要があるでしょう。詳しくは次の記事で解説しています。
スタートアップ企業の資金調達方法5選!メリットデメリットも解説
持株比率は企業経営への影響力に直結するため、慎重に検討する必要があります。たとえば、持株比率が全体の3分の1を超えると、重要な決定事項に対して拒否権を行使できます。過半数を超えると、取締役の解任などが可能です。
さらに、3分の2を超えると、特別決議事項に対して決定権を持つことになり、会社の合併や解散といった重要な事項を左右するようになります。このように、資本政策において適切な持株比率を設定し、資金調達と経営権のバランスを保つことが重要です。
資本政策を立案する初期段階から、目指す市場の上場基準を把握しておくことも重要です。各証券取引所は、独自の上場基準を設けています。
上場基準を満たしていないと、投資家から上場の可能性が低いと判断されるリスクがあるため注意が必要です。自社の事業計画や成長戦略を踏まえ、どの市場への上場を目指すのかを明確にし、資本政策に反映させていく必要があるでしょう。
株式上場によって創業経営者や初期からの株主は、多額のキャピタルゲインを得られる可能性があるでしょう。キャピタルゲインは資本政策における重要な要素であるものの、資金調達や持株比率とトレードオフの関係にあります。
たとえば、新たな株式を発行すると、既存株主の持株比率が希薄化し、将来的なキャピタルゲインの減少を招きかねません。どれくらいのキャピタルゲインが見込めるかを事前に計算しておく必要があるでしょう。
従業員に対するインセンティブ設計も、資本政策の重要な一環です。代表的なものは、従業員持株会制度とストックオプションが挙げられます。
従業員持株会制度は、従業員が自社株を取得することを奨励する制度です。ストックオプションは従業員や役員に対して、将来のある時点で、あらかじめ定められた価格で会社の株式を購入できる権利を付与する制度です。詳しくは次の記事を参考にしてください。
スタートアップは主に4つのラウンドに分けられます。
ここではラウンドごとに資本政策の重要性を紹介します。
シード期は実績や信用性に乏しいため、資金調達には入念な準備が必要です。投資家や金融機関に、将来性や成長可能性を具体的に示すことが求められます。
資本政策は、企業の将来的な資金調達や株式上場を見据え、適切な持株比率や資本構成を構築するための重要な計画です。シード期における資本政策は、いわば成長の土台をつくる作業といえるでしょう。
シード期に比べ、アーリー期は資金調達の選択肢が広がります。しかし、事業の成長性や将来性を投資家に納得させる必要があり、説得力のある資本政策が求められます。
具体的には、適切なバリュエーションに基づいた資金調達、投資家との適切な関係構築、将来のIPOやM&Aを見据えた資本構成などが重要な要素です。アーリー期の詳細については、次の記事も参考にしてください。
シリーズAとは?各ラウンドの特徴や資金調達方法、成功させるポイントを解説
ミドル期における資金調達の選択肢や調達可能な金額は、シード期やアーリー期よりもさらに増加します。事業の成長性や収益性が評価され、ベンチャーキャピタルからの大型投資や銀行融資なども視野に入ってくるでしょう。
また、IPOに向けた準備も本格化し、企業としての体制整備も重要な課題となります。ミドル期に該当する「シリーズB」については、次の記事を参考にしてください。
シリーズBとは?資金調達方法や評価される点、成功させるポイントについて解説
レイター期の資本政策は、企業価値の最大化と上場準備、あるいはM&Aに向けた最適化が焦点になります。具体的には、IPO前の大型資金調達や株式公開に向けた資本構成の調整、ストックオプション制度の最終的な見直しなどが課題です。
M&Aを視野に入れる場合は、買収企業との交渉やデューデリジェンス(買収監査)を円滑に進めるための準備も必要となります。詳細については、次の記事も参考にしてください。
資本政策は資金調達の成否を大きく左右します。資本政策がうまく策定できなければ、投資家にネガティブな印象を抱かれてしまうだけでなく、資金調達が困難になる可能性もあるでしょう。
ここではスタートアップが資本政策を成功させるコツを5つ紹介します。
資本政策を策定する際には、目標となる時価総額を数値化することが大切です。時価総額を算出するには、将来必要となるコストや見込まれる利益を予測し、想定されるPERから上場後の時価総額や一株あたりの株価を算出します。
また、必要な投資資金の割合や発行株式数を算出し、資金調達額やキャピタルゲインも見積もりましょう。
各ラウンドごとに必要な資金を明確にし、達成すべきトラクションやマイルストーンとの整合性が取れているかを確認します。調達が困難と判明した場合、「実際に調達可能な金額で、どのような目標を達成できるのか」を再考し、必要に応じてラウンドの位置づけや目標設定を修正しましょう。
また、予期せぬ事態の発生によって目標金額を調達できない場合に備え、事業計画を見直す想定もしておくべきです。
適切なバリュエーションを設定するためには、必要な資金調達額と株式の希薄化の許容範囲を明確にすることが大切です。それぞれのバランスをもとに、適切なバリュエーションを逆算して導き出しましょう。
設定したバリュエーションを投資家に納得してもらうためには、事業の牽引力や成長性を示す具体的なトラクションを提示し、類似企業の資金調達事例と比較検討することも有効です。また、投資家の求めるリターンに合わせたバリュエーションを検討することも重要です。
投資家のなかには、自らのネットワークや影響力を活かし、ベンチャーキャピタルを巻き込む力を持つ人もいます。このような投資家にフォローオンしてもらうことができれば、資金調達がスムーズに進むだけでなく、ほかの投資家から認知されやすくなるでしょう。
専門知識や経験が豊富な投資家も、スタートアップにとって貴重な存在です。業界の動向や競合他社に関する情報が手に入りやすく、戦略策定や意思決定を行いやすくなるでしょう。
資本政策を成功させるには、時価総額を高めたうえでのIPOが重要です。時価総額が低いと個人投資家中心の株主構成になりやすく、株価変動が大きくなるリスクがあります。一方、時価総額が高い状態で上場すると、機関投資家からの資金流入を促し、安定株主層の形成につながるでしょう。
高い時価総額でのIPOを実現するためには、IR活動を積極的に行い、機関投資家の投資方針に合致するような情報開示やコミュニケーションが重要です。
スタートアップは資本政策の策定が大切です。早めに策定しておくことで、スムーズに資金調達できるでしょう。ただし、すべてが計画どおりに進むとは限りません。たとえば、急成長する際に、次のラウンドまでに急遽、資金調達が必要になることもあります。
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