消込とは、売掛金や買掛金などの勘定科目の残高を消していく作業のことです。たとえば入金消込であれば、商品やサービスの提供に対する入金情報を通帳記帳やネットバンキングなどで照合し、入金が確認できた案件から消込作業を行います。
入金額や振込名義人名などをしっかり確認し、ミスを起こさないように注意しなければなりません。また、入出金数が増えるほど経理担当者の業務負荷が大きくなることも課題です。本記事では、消込の意味や仕訳方法、起こりやすいミスや課題を詳しく解説します。消込業務を効率化する方法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
消込とは「けしこみ」と読み、経理業務の1つで、売掛金や買掛金など債権・債務の勘定科目の残高を消していく作業を指します。
企業間の取引において、商品の受け渡しのタイミングごとに代金の支払いをするよりも、期日までにまとめて支払う掛取引を採用しているケースが主流です。請求金額と実際に入金および出金した金額を照らし合わせて、売掛金や買掛金などの残高を消していく作業が、消込です。
消込には、入金時に行う「入金消込」と、代金の支払時に行う「支払消込」の2種類があります。それぞれの作業内容について確認しましょう。
入金消込とは、売掛金や未収金などが入金された際に行う、債権・債務の勘定科目の残高を消していく作業のことです。入金消込をすることで、回収が遅れている売掛金はないか、入金金額が正しいかどうかを把握できます。
具体的には、商品・サービスに対する入金情報を通帳への記帳やネットバンキングなどで照合し、入金が確認できた案件から消込作業を行います。
入金作業が正しく行われていないと、実際には入金されているのに催促の連絡をしてしまったり、代金の回収ができていない案件を見落としてしまうため、未払いが発生したりするリスクが生じます。入金消込が適切に行われていないと、二重請求をしてしまう可能性があり、取引先からの信頼を失いかねません。
支払消込とは、買掛金や未払金などを支払った際に行う、債務の残高を減らす業務のことです。支払消込は、支払い漏れや支払金額の相違などを防ぐために行います。
取引先からの請求金額と実際の支払い金額を照らし合わせ、誤りがなければ会計帳簿の買掛金を消していきます。
消込と相殺の主な違いは、入金を伴うかどうかという点にあります。売掛金の相殺は、取引先に対して債権と債務の両方を持っている場合に、取引先の合意を得ることで債権と債務を同額ずつ減額する手法です。
たとえば入金消込は、その入金がなされることが前提ですが、売掛金の相殺は、代金の回収を買掛金などの債務を減額することで行うため入金を伴いません。
ここからは入金消込の流れと仕訳について、売掛金を例に解説します。
商品やサービスを販売し、それらを取引先に提供したタイミングで売上が発生します。代金を受け取っていない場合に計上するのは、まだ回収していない代金を受け取る権利をあらわす「売掛金」です。
たとえば、30万円の商品を掛取引にて販売したケースにおける仕訳は、以下のように行います。
上記のように、帳簿において「借方/売掛金300,000円」「貸方/売上300,000円」で仕訳します。
売掛金を計上した後、支払期日が到来して取引先から入金されたら、入金消込の処理を行いましょう。たとえば、普通預金に入金があった場合、その金額に間違いがなければ売掛金の残高の消込を行い、普通預金の勘定科目に振り替えます。実際の仕訳は、以下のとおりです。
このように帳簿上では、「借方/普通預金300,000円」「貸方/売掛金300,000円」で仕訳します。
消込には、入金消込のほかに支払消込もあります。ここでは、支払消込の流れと仕訳について、買掛金のケースで確認しましょう。
商品を注文したタイミングでは、物品や金銭の授受は発生していません。したがって、注文時は仕訳をする必要はありません。
掛取引で商品を仕入れたら、勘定科目を買掛金として記帳します。掛取引とは、商品やサービスの提供時に代金を支払わず、後日まとめて精算する取引のことです。取引のたびに代金の清算をすると、事務負担が増えてしまいますが、掛取引であれば支払いをまとめることができ、自社と取引先の双方で管理の手間が軽減されます。
たとえば、30万円の商品を掛取引で仕入れた場合は、以下のように仕訳を行います。
帳簿では、「借方/仕入高300,000円」「貸方/買掛金300,000円」で仕訳します。
取引先から受け取った請求書に記載されている支払期限までに、買掛金として処理した金額を支払わなければなりません。支払いが済んだら、消込をしましょう。たとえば、買掛金30万円を普通預金から振り込んだ場合の仕訳は、以下のとおりです。
このように帳簿上では、「借方/買掛金300,000円」「貸方/普通預金300,000円」で仕訳を行います。
消込の際に起こりがちなミスやトラブルとして挙げられるのは、主に以下のとおりです。事前に、よく起こるミスやトラブルの内容を把握しておくことは、同じような事態を防止するために有効です。
それぞれの内容を解説します。
差額の発生は、消込の際に発覚しやすいトラブルの1つです。たとえば、請求書に記載した金額と、取引先が入金した金額が異なるようなケースです。差額を発見した場合、原因を明らかにしたうえで、差額の請求や返金をする必要があります。
主な差額の原因は、以下のとおりです。
差額が220円や440円などの一定額であるときは、振り込む側が振込手数料を差し引いて振り込んだ可能性があります。振込手数料は、原則として支払いをする側が負担します。しかし、特別な契約を結んでいないにもかかわらず、支払う側の企業が代金から差し引かれた場合は、支払額が請求額よりも少なくなることがあります。
また、消費税の処理方法が異なることで、差額が生じるケースも少なくありません。消費税の処理の相違は、たとえば、自社は端数切り上げで請求したのに対して、取引先は端数切り捨てで計算すると、消費税に1円程度の差額が生じることを指します。
振込金額の認識間違いや振込忘れは、単純に取引先によるミスも考えられます。たとえば、金額の勘違いや、金額の桁を間違えているケースなどです。ただし、請求側が請求書の金額を間違えたことによって過不足が生じることもあるため、原因を確認し迅速な対応を取る必要があります。
買掛金や経費との相殺による差額の発生は、請求側と支払側のコミュニケーション不足によって起こり得るトラブルです。基本的に、売掛金を買掛金と相殺する場合は双方合意のうえで行います。しかし、合意がないまま片方の企業が相殺をしてしまうと、消込の際に差額に気づくといった状況に陥るでしょう。
そのほか、複数の請求書をまとめた入金は、たとえば翌月分も合算して振り込んだために、請求額と入金額の差額が生じるといったケースが該当します。
消込を忘れることも、起こりやすいミスといえます。とくに銀行振込による入出金を通帳と帳簿の突き合わせにより確認している場合、消込漏れが起こりやすいため、注意が必要です。
また、取引先が予定よりも遅く入金したり、システムエラーが発生し入金処理が正常にシステムに反映されていなかったなどのケースでも、消込漏れが起こりやすいといえるでしょう。
似ている企業名や振込人名義を混同してしまい、誤って消込をしてしまうケースもあり得ます。振込人の情報はカナ名義を確認することが一般的です。しかし、カタカナ表記であるため、名前が似ているほかの取引先と混同し、別の取引先の売掛金を消し込んでしまうといったミスが起こり得ます。
入出金の件数が増えるほど消込を行う相手の数が増えるため、注意が必要です。
消込業務は、掛取引を行う企業によって欠かせない業務です。しかし、いくつかの課題があることも事実といえるでしょう。消込業務でみられる課題は、以下のとおりです。
それぞれの課題の内容について、解説します。
消込業務を行ううえで、ヒューマンエラーを完全に防ぐことは困難だといえるでしょう。そのため、入金額や振込名義人名などをしっかりと確認しなければなりません。とくに、振込名義人名と売掛帳の法人名を照合して管理する作業が煩雑になりやすく、ミスが発生しやすい傾向があります。
入金消込に誤りがあると、入金済みにもかかわらず二重請求してしまったり、未入金に気づかなかったりするリスクが生まれます。取引先に二重請求をしてしまった場合、返金対応や謝罪が必要になるでしょう。自社の信用を損なう問題に発展しかねないため、誤りがないように細心の注意を払わなければなりません。
人為的なミスは発見が遅れがちになり、問題が深刻化してしまうことも少なくありません。事前に消込業務で起こりやすいミスを共有しておき、注意を促すなどの対応が求められます。
経理担当者にとって、消込業務は業務負荷のかかる業務の1つです。事業規模が大きくなるほど入出金の件数が増え、パターンも複雑化します。
正確さだけでなく、ある程度のスピードも求められるため、件数が増えると目視による確認や手作業での対応では対応しきれなくなるでしょう。そのうえ、金額が合わなかったり未入金があったりする場合は、速やかに取引先や担当部署に確認を取らなければならず、余計に手間と時間を要してしまいます。
このように消込業務はミスが許されないにもかかわらず、ミスが発生しやすい業務であるため、経理担当者に精神的な負荷がかかるでしょう。
経理部門は、消込業務のみを行っているわけではありません。消込業務に多くの時間を割かざるを得ない状況では、ほかの業務に集中する時間が減ってしまう可能性があります。
属人化しやすい点も消込業務の課題として挙げられるでしょう。消込業務は、正確性とスピードが求められるため、経験豊富な経理担当者に業務が偏りやすい側面があります。「この振込人名義での振込は〇〇社の△△さんから」「この金額の差額が生じるのは、先方が振込手数料を差し引いてしまっているため」など、ベテランの経理担当者のみが把握する事柄が少なくありません。
その結果、ほかの従業員が消込を行うとミスや漏れが生まれてしまい、取り扱う入出金の件数が増えたとしても分担しにくくなるでしょう。業務が属人化することで、その経理担当者が休んだり退職したりすると経理業務が滞る事態を招く可能性があります。
消込業務は人の手で行う業務が多く、ミスや漏れが起こりやすい傾向があります。入出金の件数が増えるほど業務は煩雑になり、ミスが起こるリスクが高まるでしょう。
しかし、たとえば消込の漏れにより取引先に二重請求をしてしまうと、請求先に確認の手間を取らせるだけでなく、信用問題にかかわる事態に発展しかねません。そのため、消込業務を効率化する必要があります。消込業務を効率化するために有効なのは、以下の5つの方法です。
それぞれの方法について解説します。
消込業務を効率化する方法として、注文単位での消込が挙げられます。注文時の明細書や請求書をまとめて保管しておき、取引先の入金を確認できた際に、注文番号や請求番号を特定して消込を行う方法です。
この方法は、消込作業を効率的に行えるほか、未入金の確認などの請求業務もあわせて行える点がメリットといえます。
銀行振込は、消込漏れやミスが起こりやすいため、とくに注意が必要です。したがって、銀行振込には個別で対応することが、消込業務の効率化につながるといえるでしょう。たとえば、振込時には振込人名義だけではなく、事前に発行しておいた顧客番号や請求書番号をセットで入力してもらうようにする方法がおすすめです。
前提として、銀行振込は引き落としやクレジットカード決済・コンビニ決済と異なり、支払う側が請求された金額を自ら振り込む必要があります。
クレジットカード決済やコンビニ決済では、注文番号や顧客番号と入金データがセットで入手でき、データ同士の紐付けを容易に行えます。しかし、銀行振込で取り決めをしていない場合、振込人名義のみで振り込んだ相手を判別しなければなりません。
振込人名義はカタカナ表記であるため、振り込んだ相手とは異なる、名称が似た取引先の案件と混同してしまいがちです。また振り込む際に、登録してある企業名とは異なる名前で入力されるケースも珍しくありません。
そのため銀行振込については、相手先にそれぞれ顧客番号や請求書番号を発行しておき、振込人名義と一緒に入力してもらうようにすると、消込漏れやミスを防ぎやすくなるでしょう。
リアルタイムで口座確認ができるようにすることも、消込業務を効率化するために有効な手段です。入金を確認するために銀行に出向いて通帳記帳を行うのは、入金確認までにタイムラグが発生する要因になるほか、経理担当者の時間を奪うため、効率性の観点からみて避けたほうが賢明です。
銀行によっては、口座に入金されるとメールなどで知らせてくれるサービスがあります。また、残高照会アプリを利用すれば、銀行窓口やATMに足を運ばなくても、口座残高や入金の確認が可能です。
このように、リアルタイムで口座確認ができるような銀行口座を用意することで、時間や場所の制約を受けずに入金などの状況が把握できるようになり、入金消込の業務がスムーズになります。
消込業務を効率化するために、システムを導入する方法です。従来のExcelなどを使用した管理方法に比べて効率化が期待できます。システム導入や運用には一定のコストがかかるものの、経理担当者の業務負荷の軽減やミスの削減などが期待できるため、長期的には導入するメリットが大きく上回るでしょう。経理担当者のスキルに頼って業務を回す必要がなくなり、業務の属人化や特定の担当者に負荷が集中するといった状況の改善も目指せます。
消込業務は、支払側の都合に合わせなければならない場面が少なくありません。たとえば前月分の支払日が翌月末の企業もあれば翌々月末の企業もあるほか、決済手段も「半分は現金で残りは手形」という企業があるなど、支払日や決済手段は企業によってさまざまです。そのため、このような条件に対応できるシステムを選ばなければなりません。
消込を自動化できるシステムは、「入金消込に特化したタイプ」「請求書発行サービスに消込機能が付帯したタイプ」「販売管理システムに消込機能が付帯したタイプ」に大別されます。
入金消込に特化したタイプは、すでに請求書発行サービスや販売管理システムを利用している企業に適しており、消込業務をピンポイントでフォローすることが可能です。そのほか、請求書発行サービスや販売管理システムに消込機能が付帯されているものもあります。
請求代行サービスの利用も、消込業務の効率化のためにおすすめの方法です。消込業務は支払側の要望に合わせることが多く、定型化や自動化がしにくいといえます。そのため、請求代行サービスを利用して請求業務全般を自社業務から切り離してしまうことも選択肢の1つです。
請求代行サービスは、与信管理や請求業務全般を行うものが多く、入金管理や消込業務まで代行するサービスもあります。消込業務から解放されることで、経理担当者の業務負荷が軽減されるほか、ヒューマンエラーによるミスの抑制が実現できるでしょう。
消込とは、売掛金や買掛金など債権・債務の勘定科目の残高を消していく作業のことを指します。消込業務は人の手で行う業務が多くミスや漏れが起こりやすい傾向があることや、経理担当者の負担が大きいこと、属人化しやすいことなどが課題です。
少しでもミスを抑制し経理担当者の業務負荷を軽減させるためには、消込業務の効率化が欠かせません。消込業務の効率化には、注文単位での消込や銀行振込への個別対応などのほか、システムの活用や請求代行サービスの導入などが効果的です。
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消込業務を含めたすべての請求業務全般を自社から切り離すことで、注力すべきコア業務にリソースを割けるようになり、企業の生産性の向上にもつながるでしょう。
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