督促状とは、期限までに支払われなかった未払金に対して、支払いを促すための書面です。督促状とはそもそもどのような効果があるのか、また、書き方や記載する内容について紹介します。督促状を受け取ったときの対応も説明しますので、ぜひ参考にしてください。
督促状とは、代金の支払いが行われていないことを債務者に伝える書面のことです。たとえば、売掛金が指定の期日までに支払われなかったときなどに、取引先に督促状を送付します。
督促とは、そもそも「約束の実行を促すこと」という意味があり、支払いなどの約束が守られなかったときに督促を行い、早く支払うように促します。つまり、督促状はあくまでも受け取った側が自主的に支払うことを促す書面であり、支払いを命じるものではありません。
督促状と同じく、催告状・催告書も、約束の期限を過ぎたことを債務者に知らせ、早く代金を支払うように伝えるための書面です。督促状が法的な強制力を持たないのと同様、催告状・催告書も法的拘束力を持ちません。
債権者が書面に「督促状」と記載すれば督促状、「催告状」や「催告書」と記載すれば催告状・催告書と呼ばれます。
しかし、慣例的に次のように使い分けられることが一般的です。
催告状・催告書は、督促状を何度か送っても、未払金が解消されないときや債務者から連絡を受け取れないときに送付する書面です。そのため、自然と督促状より強い文言で記載されることもあるでしょう。また、催告状・催告書には「支払わないときにはすぐに法的手段を取る」といった内容も含まれることが少なくありません。
借金には時効があり、支払われない状態が一定期間過ぎると、債務者の返済義務もなくなってしまう場合もあります。しかし、督促状や催告状、催告書を送付することで時効完成が6か月猶予されるため、書面で返済を請求すれば、時効が成立する可能性を低くできるかもしれません(ただし請求によって時効完成が猶予されるのは一度のみで、2回目以降の請求をしても1回目の請求から6か月で時効が完成してしまうので注意が必要です)。
しかし、督促状自体は代金を支払うように伝えるための書面で、法律的な強制力は持っていないため、注意が必要です。そのため、督促状を送付したからといって、強制的に債務者の財産を差し押さえたり、預貯金から未払金に相当する金額を引き出したりすることはできません。
なお、督促状と混同されやすい書面に「支払督促」があります。債権者が債務者に個人的に送付する督促状とは異なり、支払督促は債権者の申し立てにより裁判所から債務者に送付される法的書類です。支払督促を受け取った債務者が2週間以内に異議を申し立てないときは、債権者は財産差し押さえなどの強制執行をかけられるようになります。
督促状の書き方の基本は、丁寧かつわかりやすいことです。債務者が「書面を受け取ったけれどもどうすればよいかわからない」となってしまうと、督促状の意味がありません。
誰が読んでもわかりやすい平易な文章で、どのような約束が守られていないのか、いくらの金額をいつまでに支払えばよいのかを明確に記載しましょう。
また、督促状は支払期限が過ぎてから送付される書面ですが、債務者が支払ったにもかかわらず、金融機関側や郵便側の事情により債権者が代金を受け取っていない可能性も想定されます。債権者側の確認ミスで、債務者の入金に気づいていない可能性もあるでしょう。
このような状況で督促状を送付してしまうと、債務者に不快な思いをさせてしまうだけでなく、信頼関係が崩れるかもしれません。万が一の状況も想定して、債務者に失礼がないよう、丁寧な文面で記載することが必要です。
督促状の内容に過不足があると、再度書面を送り直すことにもなりかねません。債務者に一度で伝えるべきことを伝えるためにも、次の内容を忘れずに含めるようにしてください。
督促状は債務者に伝わりやすい文章であれば、特に決まりはありません。一般的な未払金に対する督促状の文面をテンプレートにしましたので、参考にしてください。
督促状を送付するには、マナーを押さえておく必要があります。一般的な送付方法と送付のタイミングについて説明します。
督促状は普通郵便で送ることが一般的です。社名入りの封筒がある場合は会社の封筒を使い、ない場合や個人事業主として送付する場合は茶封筒を使いましょう。
封筒の宛名には債務者の社名と担当者名、送り主には債権者の社名と担当者名を記します。封筒の表に「督促状」や「お支払いについてのお知らせ」などと内容物がわかるように記載しておくと、送付の意図が開封前に伝わり親切です。赤字や太字で記載すると、さらにわかりやすくなります。
封筒のなかには次の2点の書類を入れ、途中で開くことがないようしっかりと封をしてください。
請求書を2枚渡すことにならないよう、請求書のコピーには「再発行」や「コピー」などの印をつけておきましょう。
また、督促状を折らずに送付する場合であれば、A4やB4の大きめのサイズの封筒に入れます。その場合は、督促状と請求書のコピーに書類のリスト(督促状、請求書のコピー)を記載した添え状をつけると、債務者が書類の内容を確認しやすくなります。
状況にもよりますが、通常は、支払期限を過ぎただけでは督促状は送付しません。支払期限の翌日でも入金を確認できない場合は、メールで支払いを促します。普段の連絡をメールでやり取りをしていない場合は、電話で連絡することも可能です。
指定した支払期日から1週間程度経過しても連絡がなく、入金を確認できないときは、督促状を送付するタイミングと判断できます。債務者の資金繰りに問題がある場合、支払期限から間が空いてしまうと回収できる可能性がさらに低くなってしまいかねません。タイミングを逃さず、迅速に督促メールから督促状の送付へと進めていきましょう。
督促状を送っても入金を確認できないときは、次の流れで対応を進めていきます。
順を追って説明します。
督促状を送っても入金を確認できないときは、再度督促状を送ります。ただし矢継ぎ早に送るのではなく、郵便事情などにより債務者側への到着が遅れる可能性や入金にかかる時間なども考慮し、十分に日数を空けてから2通目を送りましょう。
2通目以降の督促状は、1通目よりも文言を強めるほうがよいと考えられます。債務者が「早く連絡しよう」という気持ちになるように、今後想定される法的措置などについて具体的に記載するのもひとつの方法です。
督促状を再送付しても1週間以上反応がない場合は、債務者に電話で連絡をしましょう。ただし、あくまでも丁寧な態度は崩さず、未払いによって帳簿上の手続きに不具合が生じて債権者側が困っているというように伝えると良いでしょう。
また、債務者から「すぐに入金が難しい」といった反応が返ってきたときは、いつなら入金できるのか具体的な日付についても確認しておきましょう。
督促状を複数回送付し、電話でも支払いを請求したにもかかわらず、まだ入金を確認できないときは、催告書を送付します。催告書は普通郵便ではなく、内容証明郵便で送ることが一般的です。
内容証明郵便で送付することで、送付した日付や内容、送り主・宛先を証明できるようになります。後日、法的措置を取るときにも、内容証明郵便を送付していることが求められるため重要なポイントです。
催告書を内容証明郵便で送付したにもかかわらず、入金を確認できないときは、支払督促の段階に進みます。支払督促は裁判所が送付する督促通知です。
裁判所に申し立て、受理されると、裁判所から債務者に直接支払督促が送付されます。支払督促を送付しても債務者側から反応を得られないときは、裁判や差し押さえなどの法的措置に進むことが一般的です。
また、弁護士などの専門家に早めに相談することも重要です。未払金の金額によっては、裁判を行うほうが金銭的に損となるケースもあるでしょう。どのように対処するのがよいのか、専門家と話し合って決めていきましょう。
督促状を受け取る立場になることもあります。督促状を受け取ったときは、次の順に対応していきましょう。
各対応について順に説明します。
督促状を受け取ったときは、まずは本当に取引先から来たものか確認してください。また、取引先の名前が記載されている場合でも、請求されている金額が正確か、実際に行った取引なのかを確認します。
裁判所や債権回収業者を装った架空請求詐欺も少なくありません。請求されたから支払うのではなく、自社が払うべき未払金なのかどうかを慎重に見極めましょう。
自社が払うべき未払金であることを確認したら、可能な限り早く支払いましょう。督促状には、新しく設定された支払期限が記載されていることもあります。入金方法によっては取引先が受け取るまでに時間がかかるため、逆算して遅れないように送金します。
また、本来の支払期限を過ぎたことで、遅延損害金が発生しているかもしれません。取引先に問い合わせて、正しい金額を入金できるようにしましょう。
入金する前に、取引先に電話をすることもおすすめです。遅れてしまったことに対して誠意を持って謝り、信頼関係を維持できるように努めましょう。
支払いが難しいときは、取引先に相談してみましょう。場合によっては、分割での支払いや支払期限の延長といった対応が可能になるかもしれません。
また、分割や支払期限の延長などの対応を受けたにもかかわらず、支払えない場合もあるかもしれません。そのようなときでも督促状を無視するのは禁物です。まずは少し待ってほしいことを取引先に伝え、対応方法を弁護士などの専門家に相談しましょう。
会社は取引によって利益を得、企業としての活動を続けていきます。しかし、取引先が代金を支払わないときは、取引が成り立たず、企業としての活動を続けていけなくなってしまいます。適切なタイミングで督促状を送付し、場合によっては督促状の再送付や催告書の送付、支払督促などの措置を行うようにしましょう。
また、代金回収をスムーズに進めるサービスを利用することもひとつの方法です。請求代行サービスの「マネーフォワード ケッサイ」では、請求書の作成・発行から入金確認、未回収時の取引先への連絡や督促業務にも対応しています。
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