支払督促申立書は、裁判所を介して債務者に支払の督促を行うための文書です。
本記事では、支払督促の基本的な仕組みや流れ、必要な書類の書き方と申立て方法、発生する費用についてまとめました。さらに、メリット・デメリットや申立て時の注意点、他の解決方法についても解説します。
支払督促申立書は、裁判所を介して債務者に支払の督促を行うための文書です。
この支払督促手続きは、通常の訴訟に比べて迅速かつ簡便に行うことができるのが特徴です。支払督促申立書は、相手の住所地を管轄する簡易裁判所に必要な手数料および添付書類を添えて郵送や持参、オンラインで提出します。
裁判所に出向く必要がないため、手間と時間を大幅に節約できます。また、一般的な訴訟に比べ手数料が半額で済む点や、オンラインでの手続きが可能であることもメリットです。申立書のフォーマットは、裁判所のウェブサイトからダウンロードするか、簡易裁判所で直接入手も可能です。
支払督促申立書を必要とする「支払督促」とは、債権者の申立てに基づき、簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払いを命じる略式の法的手続きです。ここでは、支払督促と通常の訴訟との違いや、支払督促が利用される事例について解説していきます。
支払督促と通常の訴訟手続きの大きな違いは、手続きの簡便さと迅速さにあります。支払督促は、詳細な証拠の提出などが不要であり、申立書の提出のみで手続きが進行します。
通常の訴訟では半年以上かかることも一般的ですが、支払督促は申立てから約2週間で発付されるケースが多いです。
また、裁判所に納める手数料も通常訴訟の半分で済むため、費用負担が少なく、請求金額に制限もありません。
支払督促は、あらゆる債権回収に有効なわけではありません。この手続きが効果を発揮しやすいケースとしては、主に以下の3つが挙げられます。
これらの条件に合致する場合、支払督促は有効な手段といえるでしょう。
支払督促を行う場合、どのような流れで手続きが進むのか理解しておくことが重要です。債権者、裁判所、債務者それぞれの立場における手続きを把握することで、スムーズな解決を目指せるでしょう。ここでは、支払督促申立ての流れを段階ごとに詳しく見ていきます。
支払督促手続きの第一歩は、債権者による簡易裁判所への支払督促申立書の提出です。支払督促申立書には、必須情報を漏れなく記入し、所定の手数料と書類送付用の切手を添付します。
申立てを行うのは、債務者の居住地を管轄する簡易裁判所です。法人が申立人となる場合は、登記事項証明書の添付が求められます。
支払督促申立書の入手方法は、裁判所での直接受け取りか、ウェブサイトからのダウンロードも可能です。
債権者が支払督促申立書を提出すると、簡易裁判所での手続きが開始されます。裁判所が申立書を受け付けた後は、担当書記官が内容を精査します。申立ての主張に妥当性があると判断された場合、支払督促を発付します。
支払督促は書記官により債務者側に送付されると同時に、債権者には支払督促が発付された旨を知らせる通知が届きます。
支払督促を受け取った相手方は、受領後2週間以内に異議を申し立てる権利があります。異議が申し立てられると、支払督促手続きは通常の訴訟手続きに移行し、裁判による判断が行われます。
支払督促が債務者に届いてから2週間が経過し、異議申立てがない場合、債権者は次の段階として仮執行宣言の申立てを行います。この申立ては、債務者が支払督促を受け取ってから2週間が経った後、30日以内に行う必要があり、この期限を逃すと支払督促の効力が失われてしまうため、注意が必要です。
仮執行宣言の申立てが受理されると、支払督促と同様、簡易裁判所の担当書記官が内容を審査します。妥当性があると判断された場合、仮執行宣言付支払督促が発付され、債権者にもその旨が通知されます。
ここで注目すべき点は、債務者が仮執行宣言付支払督促を受け取ってからの2週間です。この期間内に債務者が異議を唱えた場合、手続きは通常の民事訴訟へと移行します。
債務者が仮執行宣言付支払督促を受け取っても支払いに応じない場合、債権者には強制執行を申し立てるという選択肢があります。この手続きでは、債権者が裁判所に対し、債務者の資産の差押えなどの強制的な措置を要請します。
支払督促を行うには、支払督促申立書の記入が必要です。支払督促申立書の書式は「支払督促申立書|裁判所」からダウンロードでき、必要な項目を漏れなく記入することで、手続がスムーズに進みます。以下に、記入のポイントや申立て方法を詳しく解説します。
支払督促申立書の記入方法について詳しく解説します。申立書の1枚目(支払督促申立書)には、事件の概要や債権者の情報など、手続きに必要な事項を正確に記入します。
主な記入内容は下表のとおりです。
申立書の記入が完了したら、次は当事者目録です。
支払督促申立書の2枚目は当事者目録と呼ばれ、債権者と債務者の基本情報を記載するページです。
当事者目録の記入を終えたら、記載内容に間違いがないか再確認しましょう。
申立書の3枚目(請求の趣旨及び原因)では、請求の趣旨と原因について詳しく記入します。
請求の趣旨と原因を正確に記入したら、申立書全体を確認し、必要な書類を添付してから提出を完了させましょう。
支払督促申立の手続きには、以下の書類などの提出が必要です。
次に、申立書一式を相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に提出します。提出方法は、裁判所に直接持参する、郵送する、またはオンラインで行う方法の3つです。
支払督促を申し立てる際には、申立手数料として印紙を貼付する必要があります。この印紙代は、通常の訴訟手続きの半額です。
ただし、相手方が異議を申し立てた場合、手続きが訴訟に移行します。この場合、残りの印紙や訴訟手続きに必要な郵便切手なども追加で用意しなければなりません。
申立手数料は、以下のように請求金額によって決められています。
参考:手数料額早見表|裁判所
【例:請求金額が500万円の場合】
①100万円以下の部分:500円×(100万円÷10万円)=5,000円
②100万円超500万円以下の部分:500円×(400万円÷20万円)=10,000円
申立手数料=1万5,000円(①+②)
仮執行宣言の申立ては、債務者に支払督促正本が送達され、送達日の翌日から2週間以内に異議がない場合に行うことができます。
申立てには、仮執行宣言申立書を「仮執行宣言申立書|裁判所」からダウンロードし、必要事項を記入しましょう。
その後、以下の書類を添えて裁判所に提出します。
仮執行宣言が認められると、支払督促は確定判決と同等の効力を持ち、強制執行手続が可能になりますが、追加の申立てと費用が発生します。
支払督促は、金銭の支払いを求めるための有効な手段となり得ますが、メリットだけでなくデメリットも存在します。導入を検討する際には、それぞれのメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。
支払督促にはいくつかのメリットがあります。まず、手続きがシンプルで短期間で行うことができる点と、手続きにかかる費用を抑えられる点です。債権者の申立てのみで進行し、相手を呼び出したり詳細な証拠調べを行ったりする必要がありません。異議の申し立てなどがない限り、迅速な債権回収を見込める可能性があります。手数料も通常訴訟の半分程度で済むため、費用を抑えつつ手続きを進められます。
また、相手に対するプレッシャー効果もあります。通常の催促とは異なり、法的手段を取ることで債務者が支払いに応じるケースもあるでしょう。
さらに、支払督促の確定後、仮執行宣言が発付され、異議がない場合は強制執行が可能となる点や、消滅時効の期間がリセットされ新たな時効が進行する点もメリットといえます。
支払督促にはいくつかのデメリットがあります。まず、相手が異議を申し立てた場合、手続きが通常訴訟に移行します。この場合、最初の申立て時にさかのぼって訴訟を提起したものとみなされるため、追加の申立手数料が必要です。また、訴訟は相手の住所地で行われるため、遠方の場合には移動が必要です。
さらに、通常訴訟に移行すると、解決までに時間がかかり提出書類も増えるため、手間がかかります。費用倒れのリスクも無視できません。訴訟の結果、債権を回収できない可能性もあり、その場合は訴訟費用が無駄になることもあります。
また、相手の住所が不明な場合、支払督促を行えないことにも注意が必要です。
支払督促は、比較的簡易な手続きで行える一方、いくつかの注意点があります。ここでは、支払督促を申し立てる際の注意点を3つ解説していきます。
支払督促を申し立てる前に、申立ての動機を再確認することが重要です。まず、請求金額や納品条件が正しいかを確認し、自分に落ち度がないことを確かめましょう。複数回の取引がある場合は、請求内容を整理して明確にしておく必要があります。
次に、事前に催告書を内容証明郵便で送付し、法的手続きに入る旨を相手に通知しましょう。これにより、支払いが促される可能性もあります。
また、強制執行を見据え、相手の財産や債権の状況を把握しておくことも必要です。複雑な案件や難易度が高い場合は、専門家に相談することも検討しましょう。
支払督促の手続きを円滑に進めるには、債務者の正確な住所を把握することが不可欠です。誤った住所では書類の送達ができず、手続きが停滞してしまいます。債務者が個人の場合は現住所を、法人の場合は登記簿上の本店所在地を確認しましょう。
また、債務者の転居などで住所不明の場合は、新たな送達場所を2か月以内に裁判所に報告する必要があります。これを怠ると申立てが取り下げられる可能性もあるため注意が必要です。
支払督促の申立てには、必要書類がすべて揃っているかを確認することが重要です。申立書、申立手数料の収入印紙や郵便切手、法人の場合は登記事項証明書など、必要な書類を漏れなく準備しましょう。
また、申立書に誤記があると補正を求められるため、慎重に記入しましょう。裁判所のウェブサイトや定型用紙を利用することで、書類の不備を減らすこともできます。
書類に不備が指摘された場合は、速やかに対応し、追加提出の期限を守ることが大切です。
支払督促以外にも、金銭回収のための法的手段には、いくつかの種類があります。状況や条件に応じた方法を選択することが、早期解決の糸口となります。ここからは、支払督促以外の解決方法について見ていきましょう。
少額訴訟は、60万円以下の金銭請求に特化した簡易裁判所の手続きです。迅速な紛争解決を目指し、原則として1回の審理で即日判決が下されます。
ただし、被告には通常訴訟への変更を求める権利があり、即日判決に不服がある場合は異議申立てが可能です。また、被告が期日に出頭せず異議も述べない場合、原告の主張が認められたとみなされます。
民事訴訟は、裁判官が当事者の主張や証拠をもとに判決を下す手続きです。主に財産権に関する紛争を扱い、例として、貸金の返還、不動産の明渡し、交通事故などに基づく損害賠償などがあります。請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所で対応します。
訴訟中の和解も可能であり、判決や和解調書に基づく強制執行も申し立てが可能です。
民事調停は、裁判所が介入し、当事者同士の話し合いで問題解決を図る手続きです。調停委員が双方の言い分を聞き、合意に向けて歩み寄りを促します。
訴訟よりも手続きが簡単で、短期間での解決が期待できます。訴訟ではなく話し合いを重視する場合に適しており、主に貸金や家賃の不払い、土地・建物の登記問題、クレジット・ローンなどが対象です。
支払督促申立書とは、金銭の支払いを求める際に、簡易裁判所を通じて相手に督促状を送付する手続きのために用いる書類です。支払督促は通常の訴訟と比べて手続きが簡便で、費用も比較的安く済むというメリットがあります。
申立書を提出する際には、必要書類を正確に作成し、債務者の住所や申立て内容に誤りがないかを十分に確認することが重要です。また、相手が異議を申し立てた場合には通常の訴訟手続きに移行するため、その可能性についても留意しておく必要があります。
支払督促のメリットとデメリットを十分に理解し、申立ての動機や費用対効果を入念に確認しておきましょう。さらに、少額訴訟や民事調停など、他の解決方法を検討する余地もあります。状況に応じて適切な方法を選択し、効果的な債権回収を行うことが重要です。
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