督促状は、債務者に対して未払い金の支払いを促す通知文書です。支払期日を過ぎても入金がない場合に送付され、法的な手続きに移行する前の最終通告として機能します。本記事では、督促状の基本から、催促状や催告書などとの違い、送付するタイミング、未回収時の対策、督促後の対応方法などスムーズな債権回収のポイントを解説します。
督促状とは、速やかな支払いを促す書状であり、裁判を申立てる一歩手前の段階といえます。したがって対応しない場合には、法的手段も辞さないとのニュアンスが含まれています。
支払期限までに請求分の入金が確認できない場合、まずは「催促状」を送付し、それでも支払いがなされない場合は「督促状」を送付して未集金の回収を進めるのが一般的です。
督促状と混同しがちな名称として、次のものがあります。
ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
催促状は、支払期限を過ぎても代金を支払わない取引先に対して、未払いの代金を請求するための書面です。「お支払い期限が過ぎていますので、〇月〇日までにお支払いください」などの内容を記載します。
催促状は、単に支払いを促すものであるため、督促状などに比べると効力は弱いものの、初期対応や少額債権の回収に効果的です。
期日までに入金確認ができない場合には、次の段階として督促状を検討します。
督促状と催告書はどちらも支払いを促す文書ですが、内容や届く時期、郵送方法に違いがあります。督促状は支払いを求める内容で、支払期日が過ぎたときに送付され、普通郵便で送られるのが一般的です。
一方の催告書は、督促状を複数回送っても支払いや連絡がない場合に送付され、期限までに支払わなければ法的措置もあり得る旨などが記載されています。
催告書は配達証明付きの内容証明郵便で送られ、配達証明により受け取りを証明できます。これにより、債務者が「書類が届いていない」と主張することはできません。
支払督促は、貸した金銭や家賃、賃金などの未払いがある場合に、簡易裁判所の書記官が申立人の申立てに基づいて相手に支払いを命じる略式手続です。支払督促は裁判所に出向く必要がなく、書類審査のみで行われます。また、手数料は訴訟の半分で済みます。
申立てに基づいて金銭の支払いを命じる支払督促が発付され、相手が支払いや異議申立てをしない場合は、仮執行宣言をによって強制執行を申立てることが可能です。
注意点として、相手側からの異議申立てがある場合には裁判所での訴訟に移行するため、相手の反論が見込まれる場合は、民事訴訟や民事調停を選択します。
実際に督促状を送付する場合には、どのような内容を記載すればよいのでしょうか。
督促状の基本構成要素は、次の項目です。
督促状の例をご紹介します。
下記のようなテンプレートとして作成して、業務の担当者間で共有しておくとよいでしょう。
督促状を作成する際には、丁寧な表現で相手にわかりやすく、事実を端的に記載することが大切です。
代金未回収が確認された場合、まずは催促メールあるいは催促状を取引先に送付します。
催促メールを送るタイミングは、支払期日の当日でも問題はありませんが、催促状は3日~1週間程度経過してからが一般的です。支払期日を過ぎたタイミングで、「〇日までの支払いをお願いしておりましたが、ご状況いかがでしょうか」といった内容で取引先に確認してみましょう。
それでも支払いが行われない場合には、督促状を送付します。
催促状や督促状は通常、普通郵便で送ります。督促状に加えて、支払いを求める内容の請求書やそのコピーを同封しましょう。その際、請求書に「再発行」と記載しておくと、相手が二重に支払うのを防げます。
封筒の表面には、内容物を明示するために「督促状」や「お支払いに関するお知らせ」などを赤字で記載します。
督促状を2度、3度と送付しても入金が行われない場合には、普通郵便ではなく「内容証明郵便」の送付を検討しましょう。内容証明郵便は、送った日、誰から誰に送ったのか、どのような内容の文書を送ったのか、という3点を証明できます。
督促状を2度、3度と送付しても入金が行われない場合には、普通郵便ではなく「内容証明郵便」の送付を検討しましょう。内容証明郵便は、送った日、誰から誰に送ったのか、どのような内容の文書を送ったのか、という3点を証明できます。
催告書では、債務の詳細や支払金額、履行期限を明確に示し、期日までに履行がない場合は法的措置に移る旨を通知します。支払われない場合は訴訟や差押えも辞さない姿勢を示し、相手に「これまでの催促や請求とは違う」と認識させることが重要です。
加えて、契約書の項目に「期限の利益の喪失」がある場合は、分割払いの債務であっても、支払期限を過ぎているのであれば「提示した期日までに一括で支払うよう求めます。
催告書の内容や送付日を証明するために、内容証明郵便を利用しましょう。内容証明郵便を使用する場合、一般書留として配達証明を付けることにより、相手が受け取った事実と受取日も記録されます。
内容証明郵便を利用し、「支払わない場合は法的措置に移行する」と記載することで、債務者に対して法的措置の可能性を伝え、支払いを促す効果が期待できます。
債務者との交渉が決裂した場合には、法的手段に訴えることが必要です。その際、内容証明郵便で送った催告書は、何をいつ伝えたかを証明する重要な証拠となり、言い逃れを防ぐことができるでしょう。
また債権には消滅時効があり、催告をするとその時点から6か月間時効が猶予されます。催告による猶予は一度のみで、繰り返し行っても追加の猶予期間は得られないため注意が必要です。
債務者が話し合いに応じず、支払督促が効果的でない場合は訴訟を検討します。訴訟で勝訴しても財産がない場合には、売掛金の回収は困難なため財産の仮差押えを行います。仮差押えは相手の財産を処分されないようにする暫定的な手続きで、強制執行の実効性を高めます。
訴訟の目的は「債務名義」(強制執行を行う際に、その前提として必要となる公的機関が作成した文書)の取得であり、債務名義により強制執行が可能です。
強制執行可能な財産としては債権や不動産、動産などがあります。ただし、不動産に抵当権がついているときや、財産が見つからない場合は回収が難しくなります。預金債権は比較的強制執行しやすい財産で、債務者の代わりに支払いを受けることが可能です。
企業間取引において、代金未回収のリスクは常に付きまといます。未回収が続けば、経営の健全性に影響し、最悪の場合は資金繰りに重大な問題を引き起こします。
このような状況を避けるためには、効果的な対策が必要です。取引先の経営状況の悪化や支払いの遅延が発生した場合、迅速に対応することで、リスクを最小限に抑えられます。
ここでは、代金未回収を回避するための具体的な方法を紹介します。
支払金額や期日を調整し、分割払いなど柔軟に対応することも重要です。取引方法を見直し、即時の現金決済のみとするなど、必要に応じた処置を講じる必要があります。
何度かメールや電話で催促しても支払いがない場合は、自社の貸し倒れリスクが高まっている兆候と考えられます。放置しても事態は改善されないため、積極的に働きかけることが必要です。早めに督促の書面を送付し、形に残る方法で支払いの約束を取り付けましょう。
支払能力の低下が長期化すると取引先が会社更正手続き(経営が困難な株式会社を再建するために、裁判所の監督下で会社を根本から立て直す手続き)に踏み切る可能性もあり、そうなれば売掛金の回収が困難となるため、貸し倒れによって自社が損失を被ります。
企業間の取引において代金が回収できないというトラブルは、利益の損失に関係し、資金繰りにも影響します。
また、代金未回収が多いと、仕入先や取引先から管理能力が低いとみなされ今後の取引にも影響しかねません。そのため、最も回避したいリスクの一つとして業務担当者は常に心理的負担を抱えることにもつながります。
入金の確認ができない相手先へ、幾度も支払い催促の連絡を入れたり、催促状の送付、更には督促状を送るという作業は非常に骨の折れる作業です。そのため、バックオフィスの要ともいえる経理業務の負担軽減は、企業における課題の1つでもあります。
ここでは、督促状を受け取った場合の対応方法を次の4ステップで解説します。
督促状を受け取った際は、まず請求内容が正当かどうかを確認する必要があります。特に、メール・ショートメッセージ・SNSなどで受け取った場合、架空請求の可能性もあるため、実際に取引があったかどうかを慎重にチェックしましょう。
また、なぜ支払いが行われていなかったのか、その原因を突き止めることも重要です。代金の未払いは企業の信用に大きく影響するため、全社的に再発防止策を講じなければなりません。
請求が事実であれば、速やかに督促状の発行元に連絡し、お詫びとともに支払いを完了する旨の連絡をしましょう。
督促状を確認し、支払いが必要であると判断した場合は、できるだけ早く支払いを行うことが重要です。特に継続的な取引先の場合、信頼関係が悪化すると今後の取引に悪影響が生じ、最悪の場合、取引停止のリスクもあります。
提示された期日までに支払いを済ませればトラブルを避けられ、遅延損害金もその分少額で済むでしょう。支払いが遅れる場合には、具体的な支払日とその理由を伝え、誠意を示すことが大切です。支払いが困難な場合も取引先に連絡を取りましょう。
督促状が届いた場合、無視するのは絶対に避けなければなりません。督促状を放置して支払いをしないままでいると、最終的には強制執行に至る可能性があるためです。
たとえ督促状に記載された期日までに支払いが難しい場合でも、早めに取引先に連絡を取り、事情を説明して期日の延長や分割払いの交渉を行うことが重要です。支払いが困難な理由や状況によっては、分割払いの許可や支払期限を延長してもらえることもあるでしょう。
督促状が届いたとしても、すぐに支払えない場合は、弁護士や司法書士の専門家に相談することも検討しましょう。督促に対応しなければ、相手が支払督促や裁判といった法的措置を取る可能性があるためです。早期に専門家の助言を受け、適切な対応策を講じることが重要です。
もし交渉で解決できない場合は、「任意整理」も検討しましょう。任意整理は、支払い負担を軽減するために、利息のカットや長期の分割払いを申請することで、将来の返済負担を軽減する方法です。
任意整理の手続きは自分で直接交渉することも可能ですが、専門家のサポートを受けることで、よりスムーズに進められます。
今回は、督促状の書き方や送付のタイミング、支払いが行われない場合の対処法などをご紹介しました。
代金未回収は、売上はもちろんのこと、資金繰りにも大きく影響が及びます。督促状を送付せずに時間が経過すると、5年で消滅時効となり、その後は請求できなくなってしまうというリスクも。
そのため早急な対応を求められますが、業務担当者の負担が大きくなることも否めません。どうしても支払いに応じてもらえない場合には、税理士や弁護士に相談して早急にアドバイスを求めることが必要です。
このようなリスクを回避し、業務効率化を図る上でもマネーフォワード ケッサイのような「請求代行サービス」の利用がおすすめです。代金未回収や業務過多でお困りの方は、導入をご検討してみてはいかがでしょうか。
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