請求書支払いは、商品やサービスの提供後に代金を支払う方式です。この方式は、企業間取引で広く利用されており、キャッシュフローの管理や取引の柔軟性を高める点がメリットです。一方で、未払いリスクや管理の手間などのデメリットも存在します。
本記事では、請求書払いの仕組みや導入のポイント、メリット・デメリットを詳しく解説し、効果的な活用方法を紹介します。
請求書払いとは、商品やサービスを提供後に代金を受け取る仕組みであり、指定された期日に支払うことが求められます。企業間取引で一般的に用いられ、「料金後払い」や「掛け払い」とも呼ばれる方法です。
請求書には取引内容や金額、支払期日などが記載され、一定期間の取引をまとめて通知します。近年では、クラウドサービスを利用したリモートでの請求書作成や送付が増加しており、従来の方法よりも効率的に対応できるようになっています。
請求書払いは、商品やサービスの提供後に支払いが行われるため、取引先に一定の信用が求められます。この信用を判断するために与信の基準を設けます。
これは、取引先が「後払いでもきちんと支払いをする能力があるか」を判断するための指標です。具体的には、取引先の財務状況や過去の取引実績などを参考に判断します。
与信基準を満たしていない場合は、請求書払いではなく、前払いなど他の支払い方法を検討する必要があります。
請求書支払い導入後の業務フローでは、請求書発行から代金回収までの各プロセスがスムーズに連携することが求められます。ここでは、順を追って詳しく見ていきます。
与信審査は、取引予定先の支払い能力を確認し、適切な与信枠を設定する重要なプロセスです。与信審査を行う理由は、未回収リスクを低減し、取引の安全性を確保するためです。
審査では、取引先の経営状況や資産状況を調査し、自社の与信基準に照らし合わせて評価します。この基準は、未回収リスクと取引機会のバランスを考慮して慎重に設定する必要があります。
判断が難しい場合は、第三者機関に調査を依頼することも検討してみましょう。また、設定した与信枠は、定期的に取引先の事業成績や市場シェアなどをチェックしながら逐次見直していくことが必要です。
商品やサービスの提供後、速やかに請求書を発行・送付することが、スムーズな取引と資金回収を実現する上で重要です。
請求書の内容は、取引の内容に基づき正確に記載する必要があります。誤った請求は、取引先とのトラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。記載ミスを防ぐため、請求書発行システムや会計ソフトなどを活用し、効率化を図りましょう。
請求書には、主に以下の項目を記載します。
請求書の送付方法は、主に以下の3つの方法があります。
電子データで請求書を送付する場合は、改ざん検知や真正性を担保するための電子署名やタイムスタンプを付与など、セキュリティ対策を講じることが重要です。
入金消込は、請求情報と入金情報を照合し、入金予定額を正確に処理する作業です。
請求書を発行・送付した後、支払期日が到来した時点で会社の口座情報を確認し、取引先からの入金が予定通り行われているかを確認します。入金確認ができた場合、売掛金として処理していたデータを普通預金などの他の勘定に振り替え、帳簿を正しく更新します。
特に後払いシステムを採用している企業では、入金が予定通り行われない場合、売上回収に遅れが生じるリスクもあるため注意が必要です。そのため、入金消込は適切なタイミングで行わなければなりません。
Excelを利用して入金消込を手作業で行うことも一般的ですが、取引件数が多い企業では作業が煩雑になり、ミスが発生するリスクも高まります。そこで、業務の効率化と正確性を向上させるために、基幹システムを利用して入金消込を自動化するケースが増えています。
督促と代金回収は、請求書支払いにかかわる業務のなかでも最終段階です。まず、入金が確認できない場合、自社側のミスがないか確認します。問題がなければ、営業担当者が取引先に連絡を取り、支払いの意思を確認します。この段階で、相手方の単純な支払い忘れや請求書紛失などが判明した場合、速やかに入金を促しましょう。
しかし、取引先の経営悪化や故意の支払い拒否の場合、より積極的な督促が必要です。督促状の送付は有効な手段ですが、法的効力はありません。そのため、「法的手段の検討」といった文言を書き添え、強い意思表示をすることが重要です。
督促状送付後も進展がない場合は、支払督促や差し押さえなどの法的措置を講じる必要があります。
また、民法により売掛金は5年で消滅時効となります。このリスクを回避するためにも、適切な督促の実施が不可欠です。
請求書払いは、請求側にとってメリットとデメリットの両面があります。業務効率化や取引拡大の利点がある一方で、資金繰りや未回収リスクなどの課題も存在します。双方を理解し、適切に運用することが重要です。
請求書払いは、請求側にとって多くのメリットがあります。主なメリットは下記のとおりです。
請求書払いは企業の業務効率と収益性を向上させ得る有効な手段です。適切に運用することで、ビジネスの成長を加速できるでしょう。
請求書払いには、請求側にとって注意すべきデメリットも存在します。主なデメリットは下記のとおりです。
上記のように、資金繰りや未回収リスクなど、ビジネスに影響を与える可能性がある点を理解しておくことが重要です。
請求書払いは多くの企業間取引で採用されていますが、導入を検討する際にはメリットだけでなくデメリットも理解しておくことが重要です。支払側にとってどのようなメリット・デメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。
請求書払いは、請求する側だけでなく、支払う側にも多くのメリットをもたらします。
支払側の請求書払いのメリットは下記のとおりです。
これらのメリットを享受することで、企業は資金繰りの安定化を図りながら、事業の成長につなげる時間を創出できるでしょう。
請求書払いには、支払側にとっていくつかのデメリットも存在します。これらのデメリットを理解した上で、自社にとって本当にメリットのある決済方法かどうかを見極めるようにしましょう。主なデメリットは下記のとおりです。
請求書払いは、計画性と管理能力が求められる決済方法といえるでしょう。
請求書払いは多くの企業で採用されている一方、導入を見送る企業も少なくありません。その背景には、作業プロセスの煩雑化や与信管理の難しさなど、複数の要因が存在します。これらの課題について詳しく見ていきましょう。
請求書払いの導入を見送る背景には、作業プロセスの煩雑化が大きな要因のひとつです。請求書払いを採用すると、各取引ごとに請求書の発行、入金確認、消込作業などが必要です。取引先や取引回数が増えるほど業務負担が大きくなり、効率的な管理が難しくなります。
特に、取引先ごとに精密な与信管理を行う必要があり、正確性を保つためのノウハウが必要です。これらの作業は、経験と手間がかかるため、請求書払いを導入する企業にとっては大きな障害となる可能性があります。
請求書払いの導入が見送られる背景には、与信管理の難しさも挙げられます。与信管理では、取引先の信用状況を調査し、リスクを評価しなければなりません。これには高い専門知識が求められます。
特に、適切な与信基準の設定は難しく、基準が不適切であれば未回収リスクが増大します。また、取引が増えると与信管理の作業量も増え、管理の精度を維持するのは困難です。このような理由から、請求書払いの導入が進まない場合もあります。
請求書払いを始める際に注意する主なポイントは、以下のとおりです。
それぞれについて解説します。
請求書への押印は法的に義務付けられているわけではありませんが、実務上は押印することが一般的です。押印をすることにより請求書の信頼性を高め、取引先とのトラブルを未然に防ぎます。
なかには押印がない請求書を受け付けない企業も存在するため、取引先との関係性を良好に保ちスムーズな取引を行うためには、請求書に押印しておく方が無難といえるでしょう。
請求書の内税・外税の確認は、取引の透明性を保つために重要です。内税・外税の表記が異なる場合、誤解を防ぐため、取引開始前にどちらの方式を採用するかを確認しておく必要があります。
内税では税込価格を提示するため消費者にわかりやすく、外税では税額が明示され、会計処理が簡便になります。ただし、内税と外税が混在すると計算が複雑になるため、事前の確認が必要です。
請求書払いを始める際、支払期日の確認は欠かせません。支払期日を事前に確認しておくことで、支払いミスや遅延、取引先とのトラブルを防げる場合があります。
多くの企業は「月末締めで翌月末もしくは翌々月末に支払い」を採用していますが、すべての取引先が同じではありません。そのため、契約時に支払期日を明確に定め、請求書にも正確に記載することが重要です。
請求書払いを始める際には、振込手数料の負担者を確認しておくことが重要です。契約時に負担者を明確にしておかないと、支払側と請求側の間でトラブルが生じる可能性もあります。
多くの場合、手数料は支払側の負担ですが、企業によって異なるため、確認しておくことが重要です。取り決めが曖昧な場合は、請求書に振込手数料の負担について明記すると担当者が理解しやすいでしょう。
ここでは、請求書払いの悩みを解消する方法として、次の4つを紹介します。
請求代行サービスは、請求業務の負担を大幅に軽減する効果的な解決策です。請求代行会社によってサービスの内容は異なりますが、例として以下の5つが挙げられます。
これらの機能により、企業は次のようなメリットを享受できます。
特に、請求件数が多い企業や今後の増加が見込まれる企業、未回収金による経営リスクを抱える企業にとって、請求代行サービスは有効な選択肢となるでしょう。導入を検討する際は、自社のニーズに合わせてサービス内容や決済手段の多様性を比較し、現在の状況に適したサービスを選択することが重要です。
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与信管理システムは、取引先の経営状況や与信限度額などの情報を一元管理するシステムです。主な機能として、「取引先情報の自動収集」「モニタリング」「アラート通知」などがあります。
これらにより、与信判断の精度とスピードが向上し、リスク管理の効率化が図れます。具体的なメリットは以下のとおりです。
さらに、判断基準の明確化により、属人化や判断ミスの防止にもつながる可能性があります。また、与信管理の流れや判断基準の可視化により、社員の意識向上や理解の深まりも期待できるでしょう。
売掛保証サービスを利用することで、未入金リスクの低減が期待できます。売掛保証サービスは売掛金が回収できない場合に保証を受けられるサービスで、高額取引や取引先の資金繰りに不安がある場合に有効です。
たとえば取引先の倒産や支払い遅延などが発生した際に、保証会社が売掛金の100%を支払ってくれるため、企業のキャッシュフローや業績の悪化を防げます。手数料は発生しますが、これにより未回収のリスクを軽減し、安心して取引を進めることが可能です。
ファクタリングサービスは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取るサービスです。これにより、取引先からの入金を待たずにキャッシュフローの改善が可能です。特に急な投資や資金繰りが必要な際に有効といえるでしょう。
なお、ファクタリングは融資ではないため、負債を増やすことなく資金調達ができます。また、審査も売掛先の信用力に基づくため、中小企業や個人事業主でも利用しやすいのが特徴です。迅速に現金化できる点と、少額からの取引も可能な場合がある点もメリットといえるでしょう。
請求書払いは、企業間取引において多く利用される便利な決済方法ですが、導入には与信管理や業務フローの整備など、いくつかの課題も存在します。
請求書払いを円滑に行うためには、押印・税区分・支払期日・振込手数料など、注意すべきポイントを事前に確認しておくことが重要です。
また、業務効率化やリスク軽減のために、「請求代行サービス」「与信管理システム」「売掛保証サービス」「ファクタリングサービス」などの外部サービスの活用も有効な選択肢といえます。
特に請求代行サービスは、請求書発行や入金消込などの請求業務を一括しておまかせすることにより、請求書払いに伴う悩みを総合的に解決したい企業におすすめです。
請求書払いのメリット・デメリット、注意点、そして活用できるサービスを理解した上で、自社のビジネスに適した方法を選択しましょう。
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