企業間の支払い方法には、「請求書払い」「口座振替」「クレジットカード払い」などがあり、とくに請求書払いを利用する企業が多くみられます。それぞれの支払い方法の特徴やメリット・デメリットを確認しましょう。BtoB取引とBtoC取引との違いや2022年施行の改正電子帳簿保存法への対応についても解説します。
企業間取引とは、企業間で行われる商取引のことです。たとえば、製造業者が卸売業者に製品を販売したり、卸売業者が小売業者に商品を供給したりする取引などを指します。
企業を対象とした(to Business)取引であることから「BtoB」(Business-to-Businessの略)とも呼ばれます。
BtoC取引(Business-to-Consumerの略)とは、企業と一般消費者間の取引のことです。実店舗での買い物や飲食店での食事、旅行など個人的に消費するものが該当します。なお、ECサイトを介した商品・サービスの購入も、私的な買い物であればBtoC取引に含まれます。
BtoB取引とBtoC取引との主な違いは、以下の3点です。
それぞれの内容について解説します。
BtoB取引はBtoC取引よりも、決済金額が高額になりやすい傾向があります。商品やサービスそのものが高額であるほか、安価な価格設定であっても大量に納品されることにより、最終的な金額が大きくなるためです。
決済金額が高額になると、代金が未回収になった場合のリスクも大きくなることから、一般的に取引相手の与信調査が必要になります。また、ヒューマンエラーを防止するためのチェック回数が増えることが多く、決済に関する業務量が増えやすくなります。
BtoB取引は掛売り(請求書払い)と呼ばれる仕組みを用いることが多く、一定期間ごとにまとめて代金を支払う傾向があることが特徴です。BtoCの取引においても一定期間ごとにまとめて支払う方法は存在しますが、BtoBほど多くはないでしょう。
BtoB取引では、たとえば部品や素材などを仕入れる場合など同じ商品を何回も購入することも多く、購入のたびに支払いをしていると、請求する側も支払う側も手間がかかってしまいます。そのため、BtoB取引では月末にまとめて代金を請求し、指定の期日に支払う掛け払いが一般的といえます。
BtoC取引にはみられないBtoB取引の特徴として、企業間の信用を基盤とすることも挙げられるでしょう。
企業間の取引は何年も継続することが多いため、取引相手との信頼関係がとくに重要です。また、掛け払いが主流であることも、企業間の信用が重視される理由の1つです。先に商品やサービスを提供し、後でまとめて代金を支払ってもらう関係上、信頼できる相手でないとリスクが大きいといえます。
企業間で取引を行うことで金銭等のやり取りが発生し、これを完了させることを決済といいます。決済にはさまざまな方法があり、取引に応じて選んで利用することが可能です。主な種類としては次の3つが挙げられるでしょう。
それぞれの方法の特徴やメリット、デメリットについて解説します。
請求書払いとは、商品やサービスを提供した時点ではなく、後日、送付した請求書を使って支払う方法のことです。いくつかの案件をまとめて請求したり、受取額があるときは相殺して請求したりすることも可能なため、決済の手間を減らせます。
請求書払いは、企業間決済の中ではもっとも多く利用されているといわれている方法です。
請求する側が請求書払いを利用するメリットとして、請求作業と回収確認の効率化が挙げられます。
月中に何度も取引が発生する場合、その都度請求と回収を行うと作業面での負荷がかかりますが、まとめて請求と代金の回収確認ができる請求書払いにすることで、経理業務の効率化につながるでしょう。
企業間の支払い方法を請求書払いにする場合、代金の未回収リスクが懸念されます。商品やサービスを提供した後にすぐに支払いがなされず、いわゆる後払いになるためです。未回収が発生した場合、追加で回収業務を行わなければならないため、金額によっては資金繰りに大きな影響を及ぼします。
請求書払いの場合、請求する側には請求書の作成・送付や、請求書と照らし合わせて1つひとつ消込を行う、入金消込の作業が生じることもデメリットといえるでしょう。
支払う側にとって、請求書払いは支払い業務の効率化と、資金繰りの改善が見込める場合があります。請求書払いであれば、月に何度も取引をした場合であっても、支払い作業が1回で済むため効率的です。
また多くの場合、請求書払いにすることで商品やサービスへの支払いを1ヵ月程度遅らせることが可能であるため、資金繰りに余裕が生まれるでしょう。翌月に支払う費用を事前にある程度把握できることで、資金計画の作成もしやすくなります。
支払う側にとってもメリットの多い請求書払いですが、商品やサービスの提供を受けてから支払いまでに期間が空くため、支払い忘れが起こりやすくなる点に注意が必要です。支払い忘れや遅延は、自社の信用を損なう要因にもなり得ます。
「口座振替」とは、口座から自動的に引き落としを実施する決済方法です。毎月の取引額が同額であるときなどにしばしば用いられます。
また、請求書払いとは異なり、書類を発行する手間がないことも特徴です。ただし、明細書などが必要なときは、通常は口座振替が終わってから後日の対応となります。
企業間の支払い方法が口座振替の場合、請求書払いと異なり請求書を発行する手間や、代金を回収する必要がありません。
また、商品やサービスの代金を回収できず、未納となるリスクも軽減できます。請求書払いの場合、銀行口座への振込による支払いが多く、その場合は支払う側がうっかりして忘れてしまうケースも珍しくありません。しかし口座振替であれば自動的に代金が引き落とされるため、未回収リスクを抑えられます。
基本的に銀行口座さえ持っていれば利用できるため、従来よりも幅広い相手に対して商品やサービスを販売できることも、口座振替の利点です。たとえば、銀行のATMの操作に不安がある、あるいはクレジットカードを持っていない高齢者にも購入を検討してもらえる可能性があるでしょう。
口座振替は、すべての企業間の支払い方法として選択できるわけではありません。毎月の取引額が同じである取引や、継続的な取引などに利用が限定されることがあります。
また、初回の引き落としまでにある程度時間を要することにも注意が必要です。口座振替での引き落としができるようになるまでには、顧客への書類の郵送をした後、書類への記入・押印をしてもらい、返送してもらうやり取りが生じます。実際に利用できるようになるまで、1ヵ月~2ヵ月程度かかることも少なくありません。
顧客に記入を依頼した申請書類の記入内容が誤っていた場合は、記入と提出を再度依頼しなければならず、実際の引き落とし開始もさらに遅くなるでしょう。
また、口座残高が不足している場合は引き落としができない点もデメリットです。商品やサービスの代金よりも口座残高が少ない場合は支払いが完了しないため、その場合はすぐに顧客に連絡を取り、期日までに引き落としできなかった金額を口座に入金するよう、依頼する必要があります。
支払う側にとっての口座振替の大きなメリットは、支払いの手間がかからない点です。自動的に代金が引き落とされるため、銀行のATMやネットバンキングから口座振込を行う必要がありません。口座振込の作業を毎月行うのは、それなりの負担がかかります。しかし、口座振替の場合は口座に必要な残高が入ってさえいれば、たとえ支払う側が忘れていたとしても支払いが完了します。
また、請求書払いで銀行振込をするケースと異なり、振込手数料がかからないこともメリットです。
請求する側のデメリットと同様に、支払う側にとっても、導入までの手続きが煩雑であることが、企業間の支払い方法が口座振替である場合のデメリットとして挙げられます。
利用に際して口座振替依頼書の記入や押印をする必要があり、実際の引き落としまでにタイムラグが生じます。記入内容や印鑑が誤っていると再度記入をしなければならないため、さらに手間と時間がかかってしまうでしょう。
企業間決済で「クレジットカード払い」も選択できることがあります。クレジットカードには一般的なカードよりも利用できる金額が高く、企業間決済に使いやすい法人カードもあります。
取引額が少ないときや、取引先が多いときなどにクレジットカード払いを用いることが多いです。
企業間の支払い方法がクレジットカード払いの場合、事前に情報が登録されているため、請求書払いのように請求書を作成・送付する必要がありません。それにより、事務作業が軽減されます。また、クレジットカード会社が与信確認を行うため、新規の取引も安心して行えます。
企業間の支払いにクレジットカード払いを利用する場合、クレジットカード決済会社との事前の契約が必要です。契約には審査や手続きが含まれるため、時間と労力を要します。
また、手数料の支払いも避けられません。クレジットカード決済を利用するたびに、売上の一部を手数料として支払うことが求められます。手数料は業種や契約内容によって異なり、数パーセントであることが一般的ですが、利益率に影響を及ぼす場合があります。
クレジットカード払いは、銀行の営業時間以外にも24時間いつでも実行できるため、決済しやすい点がメリットといえるでしょう。また、支払う側にとっては手数料がかからないこともクレジットカード払いの魅力です。
さらに、企業間の支払い方法にクレジットカードを利用することで、決済のたびにポイントがたまるなどの特典が受けられる場合があります。たまったポイントはオフィス用品や出張費用に活用できる可能性があり、経費削減につながります。
企業間の支払い方法にクレジットカードを使用するデメリットとして、クレジットカードごとに利用上限額が定められているため、あまり金額が大きいときには利用できない点が挙げられます。また、情報漏洩リスクがあることもデメリットの1つです。
改正電子帳簿保存法の施行により、企業間決済も電子システムへの対応を進めていくことが求められます。まずは社内で使用している会計システムが改正法に対応しているか確認しましょう。また、電子取引に利用するメールや販売管理システム、帳簿管理システムなども、改正法の要件を満たしている必要があります。
改正電子帳簿保存法へ対応していない場合や不明な場合は、外部の請求代行サービスを利用することもひとつの対策です。例えばマネーフォワード ケッサイでは、与信審査、請求書の発行・発送、入金状況確認、未入金時の取引先への連絡まで、請求にまつわる全ての業務を代行します。改正電子帳簿保存法にも対応しているので、決済業務だけでなく納税時の手間や時間の削減効果も期待できるでしょう。
請求代行サービスとは、企業間取引の支払い方法の主流である請求書払いに関して、与信審査・請求書作成・入金消込・代金回収および未入金フォローなどの業務を代行するサービスのことです。
与信調査によって請求書払いが可能な取引先かどうかを判断するほか、限度額の設定などの与信管理業務も行う場合があります。
請求代行サービスの利用によって得られるメリットとしては、未回収リスクを軽減できることが挙げられるでしょう。企業間決済においては、支払い漏れや売上債権の回収漏れなどはたびたび発生します。請求代行サービスは、精神的な負担の大きい未入金フォロー業務を代わりに担ってくれます。万が一、未払いが起きた場合でも、入金保証のあるサービスであれば未回収リスクを回避できるため安心です。
また、与信審査や審査を行うための情報収集などをアウトソースすることで、取引先に対する取引可否の判断を得られます。与信審査が整っていない企業の場合、その体制を整えるだけでも多大な労力が必要です。ノウハウと経験が豊富な請求代行サービスに任せれば、自社ですべて行うよりもコストを抑えられる可能性があります。
さらに請求代行サービスは請求書の発行や送付、入金消込などの業務も代行してくれるため、経理担当者は煩雑な業務から解放され注力すべき業務にリソースを割けます。それにより、企業全体としての生産性向上が期待できるでしょう。
企業間決済の方法としては、現状では請求書払いが一般的です。請求書を発行して銀行振込や現金などで代金の支払い・受取を行いますが、手間がかかること、人為的ミスが生じる可能性があることなどのデメリットもあります。また、請求書を紙で発行・管理している場合は、郵送や保管にもコストや工数が多く掛かってきます。
ペーパーレス化・電子化の流れに対応するためにも、請求業務のクラウド化を検討することが必要といえます。請求代行サービスに依頼すれば、与信から入金確認、クラウド上での請求書の管理まで任せることができます。ぜひ請求代行サービス「マネーフォワード ケッサイ」もご検討ください。
2022年1月から施行された改正電子帳簿保存法に対応していくためにも、紙を使わない決済方法、データ保存が求められています。電子化の流れに乗り、なおかつ取引をよりスムーズに行うためにも、企業間決済の方法を見直していきましょう。
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受賞歴:ITreview Grid Awardにて、最高評価である「Leader」を受賞