請求業務を経理担当者が手作業で行うと、気をつけていてもミスが起こることがあるでしょう。この記事では、請求業務で起こりやすいミスや対応方法について説明します。ミスを減らすために導入したい請求代行サービスについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
まず、請求業務で起こりやすいミスについて説明をします。
請求書の作成で特に誤記入が発生しやすいのは日付や請求金額です。取引内容や支払い条件で記載漏れが起きる可能性もあります。請求書作成で頻発するミスを具体的に紹介します。
請求日および支払日は「月末締め・翌月末払い」「15日締め・翌25日払い」というように、取引先との取り決めに基づいて記載します。日付を間違えると入金時期が遅れてしまう恐れもあり、特に資金不足の状況なら注意が必要です。
たとえば月末締め・翌月払いの場合、請求日が11月30日なら12月31日に支払われますが、誤って請求日を12月1日にしてしまうと、翌年の1月31日に延びてしまいます。1日違うだけで会計処理や資金繰りに影響を及ぼすため、十分気を付けましょう。
決算期の直前は、請求日の記載において、通常とは異なる処理が求められる場合もあります。3月期決算の会社で3月分の入金を期中に依頼したいときは、請求書の発行日を2月末日に変更する必要があります。決算期のみイレギュラーな対応が求められるため、誤記入が生じやすいタイミングです。
請求金額のミスは起こりがちでありながら、信用力に関わるため気を付けたいポイントです。桁数や単価、数量、税額などは特に間違えやすいでしょう。
発注書や注文書の内容を書き写しているならミスは起こりにくいですが、手入力での作成なら注意しましょう。事前に定めた単価に基づき、数量を「1式」と記載するならまだしも、時間や数量によって請求金額が変動する契約だと、毎回入力する数字が増えます。
手入力の必要な項目が多ければ多いほど、誤記入のリスクは高まります。
他の請求書を送ってしまったり、相手方に伝えるべき支払い条件の記載が漏れてしまうなども、ありがちなミスです。同じ会社の別取引ならまだしも、別会社の請求書を送付してしまうのは大問題です。取引先からの信用が失墜し、今後の取引に影響が生じるリスクは否定できません。
支払い条件の具体例は振込手数料や支払期限などが該当します。初めての取引や条件変更が必要なときには、特に記載漏れを起こさぬよう注意が必要です。
請求書を作成したのにも関わらず、請求書を発送し忘れるケースです。請求先は原則、請求書の内容を確認して支払うことがほとんどです。請求先が支払処理をするまでに送付をするようにしましょう。
二重請求があると、請求先としては「きちんと管理できていない会社かもしれない。」と感じてしまう可能性があります。特に、既に支払をしたのにも関わらず再度請求されると取引先に不信感を抱かせてしまうので注意するようにしましょう。
入金額の組み戻しや修正は手間がかかります。上述の通り、必ず請求書発行時に請求先と認識を合わせておきましょう。
すでに請求金額が振り込まれている場合は、速やかに返金手続きを行いましょう。取引先によっては返金ではなく今月分と相殺してほしいと言われる場合があるため、事前に返金して良いか確認をとってください。
返金の方法は以下の3つが挙げられます。
銀行振込や現金書留では、請求書の記載を間違えた側が手数料を負担するのが基本です。手渡しでは企業名や金額を記載した封筒にお金を入れ、相手方に渡しましょう。
請求書を送付した後で間違いに気づいたときは、次の3つのステップを順に対応しましょう。
それぞれのステップで何をすべきか、具体的に解説します。
請求書に間違いがあったときは、気付き次第、迅速に謝罪しましょう。入金額や単価などの取引に大きな影響を及ぼす数字の間違いはもちろんのこと、商品名や取引先の名前なども間違いに気づいたタイミングですぐに連絡し、謝罪することが不可欠です。
誠実な気持ちを伝えるために、お詫び状を送ります。メールで再発行した請求書を送付する場合は、メールの本文にお詫びの文章を記載しましょう。再発行した請求書を郵送する場合には、お詫び状を作成して同封します。例文を参考に、心が伝わる文章を作成してください。
件名:請求書の間違いについてのお詫び
拝啓
貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素より格別のお引き立てを賜り、心より感謝申し上げます。
ご指摘いただきました通り、8月分の請求書に記載されていました単価は誤りです。仕入れの段階で値下げになっていたのを反映せず、先月分の単価でそのまま請求書を作成したことが誤りの原因であることが判明いたしました。
このような不手際により、多大なご迷惑をおかけしたこと、本当に心苦しく感じております。心より深くお詫び申し上げます。また、迅速にご指摘していただき、感謝しております。いつも本当にありがとうございます。
つきましては、訂正済みの8月分の請求書を同封いたしましたので、ご査収のほどお願いいたします。また、大変お手間をおかけいたしますが、同封いたしました封筒で先日お送りいたしました請求書をご返送いただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
二度とこのような誤りが生じないよう、社内でチェックする工程を増やすことにいたしました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
件名:請求書の間違いについてのお詫び
拝啓
貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素より格別のお引き立てを賜り、心より感謝申し上げます。
大変恐縮ではございますが、先日弊社からお送りいたしました8月分の請求書に誤りがございました。単価が仕入れの段階で値下げになっていたのを反映せず、そのままになっております。実際は請求書に記載されている1,500円ではなく1,380円です。本当に申し訳ございません。
弊社の不手際により、多大なご迷惑をおかけしたこと、本当に心苦しく感じております。心より深くお詫び申し上げます。つきましては、訂正済みの8月分の請求書を同封いたしましたので、お手間をおかけしますが、ご査収のほどお願いいたします。
また、同封いたしました封筒で先日お送りいたしました請求書をご返送いただけないでしょうか。大変お手間をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
二度とこのような誤りが生じないよう、社内でチェックする工程を増やすことにいたしました。何かご不明な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
取引先が請求書の間違いに気付いていないときでも、放置してはいけません。気付いたタイミングですぐに連絡してお詫びの気持ちを伝え、請求書を使用しないように注意を喚起する必要があります。
請求書に間違いがあったときは、訂正せず、再発行することが原則です。二重線を引いて正しい内容を記載することや、修正テープや修正ペンを使って上書きするなどの行為は、いずれも止めておきましょう。
再発行するときは、二重請求にならないように元々の請求書を回収・破棄することが必要です。その際、次の2点に留意しましょう。
それぞれのポイントについて解説します。
請求書を再発行するときは、元々の請求書と混同しないための対策が不可欠です。次の2つの対策を実施しましょう。
請求書のタイトルに「再発行」と記載すると、元々の請求書と混同せずに済みます。また、備考欄にも再発行であることや再発行した日付、理由などを記載しておくと、よりわかりやすくなるでしょう。
また、枝番を振ることも有用です。例えば、元々の請求書の固有番号が「N2208」であれば、「N2208-01」のように下位番号をつけましょう。
請求書は訂正しないことが原則です。ビジネスの文書では二重線と訂正印を用いて訂正することがありますが、請求書は改ざん防止のためにも訂正印による対応はしないことが一般的とされています。取引先に不信感を抱かせないためにも、訂正せず、再発行しましょう。
請求書に間違いが生じないように再発防止対策を立てましょう。一度のミスで取引先からの信用を失うことはなくても、二度、三度と続けば信用を失い、取引の継続が難しくなるかもしれません。
例えば、ミスが生じやすいポイントを複数の人数でチェックする、ミスをしそうになったときは関連する社員で状況を共有するなどの対策を検討できます。
請求書の再発行は正しい手順に則り、進める必要があります。まず間違いの箇所を把握し、修正します。新しい請求書を作成したら「再発行」と記載しましょう。相手方に送付する際は、一緒に送付状を沿える必要があります。
取引先と連絡を取り、間違いがあった請求書の内容を確認しましょう。自社の控えと照合をとることで、スムーズに確認できます。再び誤った請求書を送付してしまわぬよう、取引先とのチェックは必ず行ってください。
再度請求書を送付する際は、再発行である旨を明記しましょう。相手に確実に伝えるために、市販のスタンプなどを活用して、赤字で目立つように書き入れるのがポイントです。
間違いのあった箇所だけ修正して再発行すると、二重請求を引き起こす危険もあります。返金処理や振込手数料の負担など、無用な業務の発生を防ぐために「再発行」は必ず記載しましょう。
請求書番号を入れている場合、番号を変える、もしくは新たに枝番を付して元の請求書と区別がつくというような工夫が必要です。
一度送っているとはいえ、請求書をそのまま送るのは失礼に当たります。送付状を作成して、同封する必要があります。
送付状の文面は以下を参考にしてください。
・送付状記入例
平素より大変お世話になっております。
先日ご依頼のあった、〇月分の請求書を送付いたします。
なお、同封の請求書は再発行となるため、先日お送りした書類が手元にございましたら、差し替えのうえ破棄していただけますよう、宜しくお願いいたします。
請求書のミスを起こしてしまった際は、謝罪のためにお詫び状を同封しましょう。
お詫び状のテンプレートや書き方について紹介します。
お詫び状は一般的なビジネス文書の一種です。お詫び状に記載が必要な項目と書き方のポイントを紹介します。
お詫びする相手の氏名や名称を記載します。社長宛ての場合「〇〇株式会社代表取締役△△様」、個人の担当者宛てなら「☓☓株式会社□□支店〔役職名〕~~様」と書きましょう。
差出人の会社名、部署名、担当者名を記載します。社判は同封する請求書に押せば問題ありません。
件名は「請求書の誤りに関するお詫び」「誤請求のお詫びと請求書の再発行について」など、一目で何の書類か分かるよう端的に記載します。
お詫び状を書いた日付を記入します。
前文とはお詫び文の最初に書く文章で、頭語・時候の挨拶・繁栄を称える言葉の3つから構成されます。文書の最初に書き入れる頭語の代表格は、拝啓や前略です。時候の挨拶は季節によって変わりますが、お詫び状では省略される場合があります。繁栄を称える言葉とは「貴社はますますご清栄のこと、お喜び申し上げます」「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」などが該当します。
主文には、謝罪の言葉・お詫びをするに至った経緯・解決策を書き記します。具体的な改善策を示すのが難しければ「今後は再発防止のために細心の注意を払います」と記載しましょう。
末文とは締めの挨拶のことで、あいさつ文と結語から構成されます。結語は頭語に対応しているのが特徴で、拝啓なら敬具、前略なら草々と記載しましょう。
請求書のミスに関するお詫び状のフォーマットは特に決まっていません。文言は以下を参考にしてください。
・お詫び状記入例
令和〇年〇月〇日
☓☓株式会社
□□支店〔役職名〕△△様
☓☓株式会社
□□部△△
請求書の誤りに関するお詫び
拝啓
平素より大変お世話になっております。
先日ご連絡をいただいた〇月の請求書の件です。
弊社にて調査したところ、ご指摘の通り、請求金額に誤りがあることが判明しました。
(誤) □□□円
(正) △△△円
早急に正しい請求書を再発行いたします。このたびはご迷惑をおかけして、大変申し訳ございませんでした。
大変お手数ではありますが、お手元の請求書は破棄していただきますようお願いいたします。
今後はチェック体制を強化し、二度と同じミスを起こさぬよう、管理を徹底して行いますので
ご容赦のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。
敬具
では、請求業務でミスが起こる理由について説明します。
取引先が多いと、請求書の発行が増えるのでミスが起こりやすいです。特に、毎月取引が発生しない企業の場合、請求書を発行すること自体を忘れてしまう可能性があるので、請求書発行が必要な企業のリストを作るなどして管理しましょう。
対大企業の取引では、1社に対して複数の部署から請求を行う必要があります。例えば、大手自動車メーカーに対して部品メーカーの各部署から部品を納品しているケースです。複数の部署からの請求書を1つにまとめて大手自動車メーカーに発行する場合、ある部署の計上が遅れることで、計上が遅れた部署の取引分を載せないまま請求書を発行してしまうこともあるでしょう。
取引明細の記載漏れを防止するためには、請求書を取り仕切る代表者がすべての部署が計上を終えているかをよく確認する体制作りが大切です。
請求業務のミスは、確認漏れのヒューマンエラーによって引き起こされることがほとんどです。例えば、メールで請求書を送付する際に宛先を間違えると、情報流出問題となります。このような事態が発生しないように、メールを送る際には宛先のダブルチェックが必要です。メールを送る際には、複数人の目で宛先を確認してもらうようにすれば、宛先間違いは減らせるでしょう。
請求書の間違いをなくす方法としては、次の2つが挙げられます。
それぞれの方法について解説します。
担当者が1人で請求書の作成から発行、発送までを行っていると、ミスがあっても気付きにくいかもしれません。作成したタイミングで複数の担当者がチェックし、早期にミスに気付けるようにします。また、構築したチェック体制を表などで明記して壁などに貼っておくと、新体制に早く機能するでしょう。
なお、再発行した請求書に間違いがあると、さらに信用を失うことになりかねません。再発行するときもダブルチェックを実行し、間違いがないように確認してから発行・送付するようにしましょう。
請求業務でミスを回避するためには、請求代行サービスの利用がおすすめです。請求代行サービスのメリット・デメリットを説明します。
請求代行サービスを導入することで、次のようなメリットがあります。
それぞれについて解説します。
請求代行を導入することにより、経理部による請求書の作成・送付が不要になります。取引先が多かったり、取引量が多かったりして請求業務が複雑になっている場合には、請求代行を導入することで一気に業務が効率化するでしょう。
未回収時には、請求代行会社が催促も対応してくれます。催促業務はストレスがかかりやすいです。それを代行してもらえることで、経理担当者のストレス軽減に繋がります。
入金保証サービスのある請求代行を利用すると、売掛金が未回収の場合でも支払期日に入金を受けられます。売掛金が回収できないと資金繰りが悪化するので、このような保証があるのは安心です。
請求代行サービスを導入することには、次の懸念点もあります。
それぞれについて解説します。
請求代行を利用すると、請求書の発行元や支払先が請求代行会社になります。そのため、請求代行を利用する場合は、取引先に事前に説明しなくてはいけません。
請求代行を利用すると手数料がかかります。取引先の数が少ない場合などは、手数料負担を重く感じるかもしれません。手数料の他に、月額・初期導入費用・保証料などがかかる場合もあります。費用は請求代行会社により異なります。請求代行サービスの導入前には数社に問い合わせを行い、サービス内容と手数料の比較をした方が良いといえるでしょう。
請求業務は手作業で行うと、請求漏れや二重請求などのミスがどうしても起きてしまいます。特に取引先の数が多く、取引明細が多いと発行漏れや確認漏れをしやすくなるでしょう。
請求業務のミスを減らしたいのであれば、請求代行サービスの導入がおすすめです。請求代行は様々なサービスがあるので、費用やサービス内容を見比べて導入の検討をしてください。
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