掛け払いとは、先にサービスや商品を提供し、後でまとめて支払う方法のことです。掛け払いと後払いは、いずれも支払いが後日になる点では同じですが、用いられる場面が異なります。
今回は、この「掛け払い」サービスについての仕組みやメリット・デメリット、また「後払い」との違いについて解説します。請求代行サービスの選び方についてもご紹介しますので、最後までご覧ください。
「掛け払い」とは、サービスや商品を提供したときに代金を支払ってもらうのではなく、ある一定の期間に行った取引に関する代金を後でまとめて支払う方法のことです。一定期間に行われた取引代金をまとめた請求書を発行し、取引先はその請求書を元に支払いを行うことから「請求書払い」ともいわれています。
どちらも支払いが後日になるという点では同じですが、用いられる場面の違いで区別されます。
掛け払いと後払いの違いの一つが、取引相手です。一般的に販売する側および購入する側の双方が企業である企業間取引(BtoB)では、「掛け払い」と呼ばれています。
一方、企業が一般消費者向けに商品やサービスを提供する場合(BtoC)では、「後払い」という言葉が使われます。
掛け払いと後払いでは、支払いのサイクルが異なります。企業間で行う取引の場合には、1ヶ月ごとに取引を集計し、請求書が届いてからまとめて支払う流れが一般的です。
一方で一般の消費者が相手のBtoCでは、1回の取引ごとの後払いが主流になります。同じ月に複数回取引が発生しても、基本的にはその都度支払期日が設けられ、都度後払いの対応が必要です。
利用上限も一般消費者と法人では異なり、企業間取引の場合は上限が高額なケースもあります。
販売側と購入側それぞれの、掛け払いを導入することで得られるメリットを解説します。
販売側が掛け払いを導入することで得られるメリットは、主に以下の3点です。
掛け払いを提供することで顧客に柔軟な支払条件を提示できるため、すぐに現金を用意できない顧客や、資金繰りに余裕がない顧客との取引が可能になります。これにより、新規顧客の獲得につながるでしょう。
また、掛け払いに対応すると顧客に対する信頼を示せることから、信頼されていると感じた顧客との長期的な取引関係の構築を目指すことができます。継続的な取引が促進されるほか、顧客からの紹介や口コミによるビジネスチャンスの獲得も期待できるでしょう。
さらに、請求業務を簡略化できることも、掛け払いのメリットです。商品やサービスを販売するたびに決済を行う場合、その都度請求内容の入力や請求書の発行、入金確認などを行わなければなりません。しかし、掛け払いであれば代金はまとめて支払われるため、これらの作業は1回で完結できます。
購入側が掛け払いによって享受できる主なメリットは、以下の4点です。
掛け払いでは取引ごとに支払う必要がないため、一時的な資金負担を軽減でき、手元に残った資金を仕入れや投資などの重要かつ戦略的な支出に回せます。商品やサービスをすぐに利用できることから、業務の継続性や効率性を追求することも可能になるでしょう。
また、まとまった支払いとなるため資金繰りの計画を立てやすいことも、購入側のメリットの1つです。販売側と同様に、購入側にとっても支払い作業が1回で完結することも利点といえるでしょう。
メリットの多い掛け払いですが、デメリットも存在します。販売側と購入側、それぞれの立場におけるデメリットを押さえておきましょう。
掛け払いの導入による販売側のデメリットとしては、以下の2点が挙げられます。
販売側は、掛け払いを導入することで未回収のリスクが懸念されます。掛け払いは、双方の信頼の元で成り立ちます。しかし、顧客が期日までに支払いを行ってくれない場合、売上債権を回収できません。未回収リスクを回避するには、取引を開始する前に与信審査を実施する必要があるものの、与信審査を行ったときは問題がない取引先であっても、予期せぬ理由で急激に業績悪化に陥ることも珍しくないでしょう。
顧客の入金が遅れると、販売側の資金繰りに影響を及ぼすリスクがあります。販売側は顧客の入金遅れによって、一時的に手元資金が不足してしまう可能性もあるでしょう。
掛け払いの利用によって考えられる、購入側のデメリットは以下の2点です。
掛け払いは取引をした後、しばらく経ってから支払いを行うため、取引後にすぐ支払うケースよりも支払いを忘れてしまうリスクが生じます。これによって、遅延損害金が発生したり、企業としての信用が低下したりする場合があるため、注意しなければなりません。
また、掛け払いを利用する際、多くの場合に信用調査が行われることも購入側のデメリットといえるでしょう。信用調査の結果に応じて掛け払いの利用が制限される、あるいは取引条件が厳しくなることも想定されます。
掛け払いを導入した場合に、販売側に発生する主な業務は以下のとおりです。
それぞれの業務内容を解説します。
与信とは、取引先の信用情報や支払能力を評価し、安全な取引をするために取引先ごとに「信用を供与する」ことです。
与信管理業務では、取引先の信用調査を行い支払能力によって与信枠を設定するほか、その後も継続的に調査し、情報更新を行います。
掛け払いは「請求書払い」とも呼ばれることからわかるように、請求書発行が欠かせません。
請求書発行業務は、取引の後に請求書を発行したり代金を回収したりする業務です。売上管理や支払い処理、データ入力やチェックなどの幅広い業務を含むことが一般的です。
入金消込業務も、掛け払いを行う際には必須の業務といえるでしょう。入金消込とは、提供した商品・サービスの代金が支払われた際、帳簿から当該の代金の記録を消去する作業のことです。
通帳記帳やネットバンキングなどで入金情報を照合し、入金が確認できた案件から順番に消込作業を行います。
支払い期日までに入金がない顧客に対して行うのが、状況の確認や督促です。電話やメールなどで支払いが遅れていることを通知したり、必要に応じて督促状を送付したりします。
掛け払いは販売側、購入側のいずれにもメリットが多い支払い方法ではあるものの、自社のみで掛け払いの仕組みを導入するのはおすすめできません。掛け払いの導入にあたり、作業量が増加してしまうためです。
たとえば、取引を開始する前の与信調査を行うだけでなく、調査基準の設定などから行う必要があります。また、一度与信調査を行ったらそれで終わりではなく、継続した与信管理が求められます。
さらに、適切に調査を行うためのノウハウも必要です。社内にノウハウがない場合は、たとえ与信調査を行ったとしても、そもそもの調査基準に誤りがあると未回収リスクを防ぐという本来の目的を達成できないでしょう。
掛け払いにはいくつものメリットがありますが、未回収リスクが生じるデメリットもあります。掛け払いのデメリットを回避し、請求書業務をスムーズに行う方法の一つとして、「請求代行サービス」の利用がおすすめです。
請求代行サービスとは、企業間の取引の際に生じる請求業務を代行するサービスのことです。掛け払いに必要となる与信調査、請求書発行、入金消込、未入金フォローなどの業務をアウトソースできるサービスを指します。
請求代行サービスを利用するメリットは次のとおりです。
このように請求業務負担を軽減できる上に与信管理が徹底できるため、売掛金の未回収リスクに備えられます。各メリットについて確認しましょう。
請求代行サービスを利用することで、掛け払いのデメリットである売上債権の未回収リスクを軽減できます。
適切な与信管理を行うには一定の経験やノウハウが必要であり、これらが不足している状況で正しい与信判断を下すのは困難です。多くの請求代行サービスには蓄積された取引データがあるため、自社で与信管理を行うよりも売上債権の未回収を回避しやすい可能性があります。
スピーディーに取引を始められることも、請求代行サービスに依頼するメリットの1つです。自社で与信審査を行おうとすると、審査基準の設定などに時間を要してしまうため、機会損失につながりかねません。請求代行サービスを利用すれば、早期に取引を開始できるでしょう。
請求代行サービスを利用することで、請求業務が効率化することも大きなメリットです。掛け払いは、与信管理や請求書作成・発行など、作業量が増加してしまう側面があります。しかし、請求代行サービスに依頼すればそれらの作業から解放され、注力すべき業務にリソースを割けるようになるでしょう。
請求代行サービスへの依頼によって未回収リスクが軽減すると、資金繰りが改善する可能性があります。入金保証や早期入金サービスを提供する請求代行サービスを利用すれば、販売側はより確実に代金を回収でき、キャッシュフローの安定化を図れるでしょう。
入金保証とは、条件を満たせば購入側の入金遅延や貸し倒れが発生した場合でも、請求額から手数料を差し引いた額が入金されるサービスです。また、早期入金サービスは、販売側の資金繰りに適した入金サイクルを設定できるサービスを指します。
取引の透明性が向上する点も、請求代行サービスに依頼するメリットの1つといえるでしょう。基本的に取引の記録が電子化され、請求書の発行や入金確認がしやすくなり、トラブル回避につながります。
さまざまな企業が請求代行サービスを提供しているため、いざ請求代行サービスを導入しようすると、何を基準に選べばいいのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。請求代行サービスを選択するときに大事なことは、自社にとって優先順位は何であるかを明確にすることです。
請求代行サービスを選択する際の判断基準項目は、次の5つです。
各項目の内容について解説します。
サービス提供会社ごとに、利用限度額と与信審査のタイミングや回数が異なることを押さえておきましょう。与信審査のタイミングには、「顧客との取引前」と「顧客からの注文毎」の2つのパターンがあります。
継続して取引する顧客が多い場合には事前審査、単発での取引が多い場合には取引ごとに審査を行うパターンが適しています。
自社ではどちらのパターンが多いかを考慮して検討してみましょう。
請求代行サービスの内容は、与信審査・請求書発行・代金回収・入金管理・売掛金の入金保証など、多岐にわたります。
請求代行サービス会社によって、代行できる業務の内容や範囲が異なります。自社の業務内容に合ったサービスを提供してくれるか、必要としている業務を満たしてくれるかを確認しましょう。
請求代行サービス会社により、以下のように料金体系はさまざまです。
初月・月額費用が無料でも手数料・利用料率によってはコストが高くなります。自社が必要とするサービスを満たしている請求代行サービス会社を数社選び、見積書を取り寄せてみましょう。
請求代行サービスを検討する際、代行手数料の金額もチェックしましょう。代行手数料は、請求金額に応じて支払うケースが主流です。手数料は請求金額の0.5〜2%程度と、請求代行サービス会社間で開きがあります。手数料水準はさまざまな条件によって設定されるため、商談する際に交渉しておくとよいでしょう。
なお、手数料に加えて月額費用がかかる請求代行サービスもあります。その場合は比較的手数料が安い傾向があるため、費用が高いか安いかについてはトータルの料金で判断することをおすすめします。
自社にとってサービスが使いやすく、確実に業務効率化に寄与するかどうかも、請求代行サービスを選ぶ基準の1つといえるでしょう。たとえば請求書の分割や統合を部署や拠点を越えて行えるかどうかなどは、確認すべきポイントといえるでしょう。
そのほか、相手側の状況に応じた柔軟な対応ができるかどうか、既存の会計システムと連携できるかどうかなども場合によっては確認が必要です。自社と顧客の状況に応じて適切に対応できれば、取引を継続しやすくなるでしょう。企業間後払い決済・請求代行サービス『マネーフォワード ケッサイ』は、会計システムとの連携が可能です。これにより、仕訳連携まで自動化することが可能です。
ここでは、請求代行サービスを導入する際に気をつけておくべき点をいくつか紹介します。
請求代行サービスを利用することを、事前に取引先への説明しておきましょう。取引先への影響は直接ありませんが、第三者である請求代行会社から請求書が届くことになります。事前に連絡がない場合、取引先よっては不信感を抱かれる可能性があるので注意が必要です。
あらかじめ請求代行会社から請求書が届くことを通知していれば、取引先へ不安を与えることなく、スムーズに導入できるでしょう。必要な資料は請求代行会社が提供している場合もあるため、具体的なフローなどを事前に確認することをおすすめします。
請求代行サービスの利用により、取引先との間に請求代行会社を挟むことになります。そのため、自社と取引先のコミュニケーションが希薄になりかねません。
取引先が期日通りに支払いを行っているかなど、請求代行サービスを使ってこまめに確認しましょう。また、取引先の経営状況や動向についても常に把握しておくことが大切です。
請求代行サービスでは与信審査のアウトソースが可能な場合があります。しかし、取引を予定している企業が与信審査に通過しない可能性もあります。その際、取引を取りやめるのか、もしくは自社で請求を行うのかなど、どのように対応するのかについて事前に社内でルールを作成しておく必要があります。
『マネーフォワード ケッサイ』では与信審査に落ちてしまっても、請求書の発行・送付を代行するサービスもあるため(※)、審査否決時の対応も可能です。
※1請求あたり付随請求事務手数料300円(税抜)がかかります。
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「掛け払い」は、一定期間に行われた取引を一括で請求・支払いを行う企業間取引です。掛け払いと後払いは支払いが後日になる点では同じですが、取引相手や支払いのサイクルなどが異なります。
掛け払いを業務効率化のため導入したものの、社内のワークフローがうまく構築できず、逆に煩雑になってしまうケースも少なくありません。
請求代行サービスを上手に活用することで、社内業務の作業・管理を効率よく進めることが可能です。この機会に、請求代行サービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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受賞歴:ITreview Grid Awardにて、最高評価である「Leader」を受賞