売掛金・未収入金・未収収益の違いがよくわからず、迷ったことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。たしかに、売掛金・未収入金などは間違えやすい科目です。そこで今回は未収入金・売掛金・未収収益の違いについてわかりやすく解説いたします。
売掛金や未収入金、未収収益などは全て会社の債権であり、多少の違いはあるものの、いずれも今後の会社に入金予定があることを示す勘定項目です。
どれも債権であることには変わりがないため、人によっては間違えて覚えてしまっていたり、時には混同して勘違いしてしまったりすることもあるでしょう。
そこでまずは、未収入金とは何かということから解説します。
未収入金とは、営業活動以外の取引において未回収のままとなっている債権のことです。
具体的には、土地や車といった固定資産を売却した後そのまま未回収となっている利益や、不動産の貸付利益などのことを指します。
未収のままとなっている債権という意味では売掛金や未収収益とも似ていますが、帳簿上は明確に違う勘定項目となっているため、混同して覚えてしまわないように注意が必要です。
未収金と表記されることもありますが、表記が異なるだけで未収金も意味としては未収入金と同じとなっています。
先述した通り、売掛金・売掛金・未収収益はいずれも会社の債権であり、同時に流動資産でもあります。
そして、未収入金は基本的には流動資産ですが、1年以内に回収できる見込みがない場合は「長期未収入金」という固定資産に変わります。
そのため、流動資産と固定資産が分けられている貸借対照表などでは、その時の未収入金がどちらの区分に分けられているのかなどを勘違いしないように気をつけましょう。
売掛金や未収収益と間違えやすいと言われている未収入金ですが、実際の帳簿上では、具体的にどのように仕訳されているのでしょうか。
未収入金の具体的な仕訳例について、未収入金が「長期未収入金」になる場合とあわせて解説いたします。
2021年10月に、A社が不要になった備品を100,000円で売却しましたが、代金は12月に受け取ることになりました。この場合の10月の仕訳は以下のようになります。
そして、12月になり、備品の代金100,000円を受け取りました。
長期未収入金とは、回収まで1年以上かかると見込まれている未収入金のことです。
未収入金として計上された当時は回収まで1年以上もかかると思われていなかったものでも、何らかの理由で回収することが難しくなってしまい、その後1年以内での回収が難しいとみなされると、未収入金から長期未収入金へと振り替えられます。
例えば、先ほどのA社の未収入金が何らかの理由により、当初予定していた12月に代金を受け取ることができず、翌期になっても1年以上回収の見込みがないと判断されると、以下のような仕訳が行われます。
この仕訳によって、回収の見込みがない未収入金100,000円は、長期未収入金という他の未収入金とは異なる科目へと振り分けられます。
また、未収入金は流動資産ですが、長期未収入金になると固定資産に変わるため、流動資産と固定資産が別々に表記される貸借対照表などでも、金額を混同しないよう注意が必要です。
1年以上回収の見込みがない未収入金が長期未収入金に振り替えられ、固定資産として計上されるという原則は、「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」と呼ばれています。
これは未収入金だけでなく、借入金などにも該当するルールですが、棚卸資産に関しては1年基準が適用されないため、同じものとして考えないように注意が必要です。
同じ債権ということで比較的間違えられやすい未収入金・売掛金・未収収益ですが、具体的には、それぞれ何がどう異なっているのでしょうか。
未収入金・売掛金・未収収益の間違えられやすいポイントや具体例などを解説いたします。
売掛金とは、提供した商品・サービスの対価として将来的に金銭を受け取れるという権利、売掛債権のことです。
売掛金と未収入金の違いとしては、売掛金が明確な営業上の取引の結果生じた債権であることに対し、未収入金は固定資産など商品以外のものを売却した時の代金や、不動産の家賃収入など、本業以外で生じた債権のことを意味しており、本業と本業以外という違いがあります。
売掛金と未収収益との違いとしては、売掛金が基本的に営業の結果生じる売上の対価という債権である事に対し、未収収益は継続的に行われている取引における支払期日前の債権のことであり、単発的な取引の債権と継続的な取引の債権という違いがあります。
未収収益とは、受取家賃など、継続的にサービスを提供しているもののうち、決算時点でまだ受け取り終えていない対価のことです。
未収収益と未収入金の違いとしては、未収収益が継続的に行われている取引における支払期日前の債権のことであることに対し、未収入金は固定資産の売却益などといった本業以外で生じた債権のことであり、こちらも、継続的な取引の債権と単発的な取引の債権という違いがあります。
売掛金・未収入金・未収収益が間違えやすいのは、収益の回収ができていないという共通点があるからでしょう。それぞれの勘定科目の意味を理解すれば違いがわかり、間違いを減らすことができます。
また、本業かそうでないかだけの違いの売掛金と未収入金、単純に言葉の語感が似ている未収収益と未収入金など、それぞれ間違えやすそうな組み合わせもあるため、混同しないように注意が必要です。
ここからは、売掛金・未収入金・未収収益の具体例について紹介していきます。
まず、売掛金についてですが、これは本業の営業取引において未収となっており、なおかつ1年以内に回収できると判断されている債権のことを指すものです。
10月にA社が販売先B社に商品を50,000円で掛販売を行い、代金を12月に回収予定とすると、以下のような仕訳になります。
そして12月になり、販売先B社から売掛金の回収ができた場合の仕訳は以下のとおりです。
次に、未収入金についてですが、これは本業における営業取引以外で掛販売を行った際に未収となっている債権のことを指します。
例えば、A社が販売している商品とは別の余剰品がたまたま10,000円で売れ、なおかつその代金が来月入金予定の場合の仕訳例は以下のとおりです。
そして翌月の仕訳は以下のようになります。
また、備品や土地、車両などとして既に資産に計上されているものを売却して、その代金が翌月以降に入金予定の場合は、雑収入ではなく、貸方にその資産項目が記載されます。
例えば、A社が使わなくなった備品を50,000円で売却し、その代金が翌月以降に回収予定の場合の仕訳例は以下のとおりです。
最後に、未収収益についてですが、これは長期間継続して提供しているサービスにおいて、その時点の収益としては計上するものの、回収はまだできていない収益のことを指します。
例えば、不動産を賃貸しているA社が2021年度に受け取るべき賃料のうち、50,000円分がまだ未収となっている場合、決算時の仕訳例は以下のとおりです。
しかし、実際には50,000円分の受取家賃は未収であるため、翌期首、すなわち2022年度の期首には以下のように振替仕訳を行わなければなりません。
このように、売掛金・未収入金・未収収益は未収の債権という意味では一見似ているようにも思えるかもしれませんが、実際の仕訳では使い方や必要とされる場面が大きく異なるため、何の仕訳にどの勘定科目が必要とされているのかを覚えておくようにしましょう。
売掛金・未収入金・未収収益の見分けは難しそうに感じるかもしれませんが、実際には、本業の商品・サービス代金の債権、本業以外の債権、長期間取引が続いている債権の未受取分と、それぞれ大きく異なる科目であることがわかります。それぞれの勘定科目の性質や違いを理解し、混合することのないように気をつけましょう。
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