請求事務は、取引における対価を回収するまでの一連の業務です。煩雑な工程で手作業で行うことも多く、人的ミスが起こりやすいなどの課題があります。
本記事では、請求事務の流れや課題、効率化により課題を解決する方法などを解説します。請求事務の業務量が増えて効率化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
請求事務は、商品・サービスを提供したあと、代金を回収するまでの一連の業務のことです。請求事務には、主に次のような作業があります。
請求事務は取引先や顧客を相手に行う業務であり、ミスがあれば自社の信用問題にかかわります。請求項目や金額、宛先などにミスがないよう確認しながら、慎重に進めなければなりません。請求漏れが発生すると資金繰りにも影響するため、請求事務を万全に進めることは各企業にとって重要な課題です。
請求書は法律による発行義務はありませんが、取引後、契約通りに代金を回収するために重要な役割を果たします。認識の食い違いや支払い漏れなどのトラブルを防ぐためにも、請求書の発行は大切な業務です。
請求事務は、請求金額の計算・確定から請求書の保管まで、一連の細かい作業があります。
ここからは、請求事務の一連の流れについて工程ごとに見ていきましょう。
まず、請求書を発行するために、請求金額の確定を行います。取引の内容や単価、数量などを確認し、請求金額を算出する工程です。代金に直接かかわる重要な業務であり、ミスがあると取引や顧客からの信用を失う可能性もあるため、慎重に行わなければなりません。
請求には、1回の取引ごとに請求を行う都度請求と、特定の期日までの取引を一括で請求する締め請求があります。
請求内容を確定させるタイミングを間違えないよう、事前に確認しておきましょう。
確定した金額をもとに、請求書を作成します。請求書の記載項目は特に決まりはありませんが、一般的に書くべき項目やファーマットはある程度定まっています。
請求書に記載する項目は、次のとおりです。
このほか、請求番号を入れておくと請求漏れの防止に役立ちます。
請求業務は毎月発生するため、請求書のテンプレートを活用することで効率的に作成できるでしょう。
請求書の作成後、社内での承認が済んだらメールや郵送で送付します。その際、送付ミスや送付漏れが起こらないよう、複数人でのダブルチェックが望ましいです。郵送の場合は「宛先と内容が一致しているか」を必ず確認し、メールの場合も送付先を間違えないよう十分注意してください。
郵送の場合は印刷と封入作業が必要になり、手間がかかります。請求先が増えると作業に時間がかかるため、メール送付や電子請求書の発行も検討してみるとよいでしょう。
請求書の送付後、支払期限が過ぎたら入金確認を行います。入金確認では、入金があったかの確認だけでなく、入金額が一致しているかの確認も重要です。
一致していない場合は事実確認を行います。自社に原因がある場合は、速やかに対応策を考えましょう。正しく請求しているにもかかわらず請求額と入金額が異なる場合は先方に連絡して、追加入金や返金などの方法を話し合います。
入金確認後は、消込処理を行います。消込処理とは、帳簿に計上した売掛金が入金されたことを確認したあとに該当するデータを削除し、入金を管理する業務です。
消込処理により、売掛金が請求通りに回収できているか、回収の遅れが出ていないか、取引請求金額と入金額に違いがないかを確認できます。
売掛金は代金を請求する債権が残っている状態であり、消込処理をすることではじめて月次決算や締め作業に進むことができます。
消込処理は、売上を正確に計上するために欠かせません。しかし、件数が増えるほど担当者の負担も大きくなり、ミスが起こりやすい作業でもあります。慎重で正確な作業が求められるでしょう。
支払期限内に入金がない場合は、電話やメールで支払いの催促を行います。入金を忘れていたなどの場合はすぐに振り込まれる可能性が高いですが、催促後も入金を確認できないときは催促状や督促状の発送が必要です。
督促業務は時間と手間がかかるため、担当者の負担になり得ます。督促状を送っても入金がなく、最終的に法的措置をとることになれば、さらに負担は大きくなるでしょう。
できるだけ未払いが発生しないよう、取引前の与信審査やその後の与信管理が重要になります。
請求書の発行後は、控えを保管します。保管期間は法律で定められており、基本的に次の期間の保管が必要です。
法人の場合、保管期間の起算点は請求書の発行日ではなく、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日からとなるため、注意してください。
請求書控えは書面での保存が原則とされていますが、電子帳簿保存法の要件を満たしている場合、電子データとして保存することも可能です。
請求事務では、主に次のような課題があります。
詳しく見ていきましょう。
請求事務は工数が多く煩雑で、手作業で行うことも多いため手間がかかります。請求額の計算や金融機関へのデータ送付、入金状況のチェックなど細かい業務を正確に行わなければなりません。業務は月末の忙しい時期に集中しやすいことも負担がかかりやすいでしょう。
また、取引先ごとに異なる内容を計算・入力していく作業は集中力が必要で、同じような作業が続けばミスも多くなります。さらに未回収の催促やトラブルへの対応などが発生すると、より業務の負担は大きくなるでしょう。
たとえば規模が小さい企業では、営業担当などが請求事務を行うこともあるでしょう。請求事務に時間をとられ、営業が本来取り組むべき新規開拓や既存顧客のフォローといった業務が疎かになり得るという問題もあります。
また、営業部と経理部が部門をまたいで経理業務を行う場合は、責任の所在が不明確になるという課題も発生し得るでしょう。
データの入力や金額の計算、宛先の記入などを手作業で行っている場合、人的ミスが起こりやすい点も課題です。最新の注意を払っても、人が行う作業にはヒューマンエラーが起こる確率が高まります。取引先が関わる請求事務では、ひとつのミスでも信頼を大きく損ねてしまう可能性があるため、十分に注意しなければなりません。
毎月のように「ミスしてはいけない」というプレッシャーがかかることは、担当者にとって大きな精神的負担になるでしょう。
ミスを防止するため、ダブルチェックを行うのもひとつの方法です。しかし、人手不足の会社ではチェック体制に回る人員がいないといった課題もあるでしょう。
掛け売りには、常に未回収金のリスクが伴います。取引前に十分な与信調査が行われないと、未回収のリスクは高まるでしょう。
催促や督促状の発行などの業務は担当者の負担となり、対応にはコストも発生します。
代金を回収できないことでキャッシュフローが悪化し、自社の債務の支払いが滞るなど資金繰りに困る可能性もあるでしょう。
売掛金が未回収になると、自社の信用が低下することにもなり得ます。金融機関からは資金管理ができない会社だと思われ、融資審査でマイナス評価を受ける可能性があります。
また、未回収の債権が増えると、帳簿上では利益が出ているにもかかわらず資金繰りが悪化し、黒字倒産になるというリスクもあります。
請求事務の課題を解消するためにも、業務の効率化が必要です。効率化の方法には、業務フローの見直しやペーパーレス化など、いくつかの方法があります。
詳しく見ていきましょう。
まず、現在行っている業務フローを見直してみましょう。業務の流れを書き出し、どこに課題があるかを明確にします。
誰がどの業務を、どのくらい時間をかけて行っているかを可視化してください。そこから、「無駄な部分はないか」「ミスが多いのはどの業務か」「効率化できる部分はどれか」を確認しましょう。
請求書の作成に時間がかかっているのであればテンプレートを利用し、請求金額の計算によるミスが多い場合は計算システムを導入するなどを検討します。請求書の封入作業に時間がかかっている場合は、メール送付にするなどを検討するとよいでしょう。
効率化が難しい工程があり、人手が足りないという問題があるときは、アウトソーシングを利用することも選択肢のひとつです。
請求書を紙媒体で作成している場合は、ペーパーレス化による効率化を検討できます。書類をデータ化すればシステム上で自動計算できるため、ミスの発生を抑えることができるでしょう。
印刷・封入などの手間が省けるだけでなく、印刷紙代や郵便料金などのコストも省けます。さらに、請求書を保管・管理する手間やコストも抑えられるでしょう。
また、請求書のペーパーレス化により、会計ソフトや請求管理システムといったシステム導入を進めやすくなります。
ペーパーレス化によってインターネット環境とパソコンがあれば請求事務ができるようになり、テレワークにも対応できるようになるでしょう。
ただし、ペーパーレス化を行う場合は自社だけの判断では進められず、取引先の意向も確かめなければなりません。
紙でのやり取りを希望する取引先がいる場合は、ペーパーレス化が難しくなる場合もあるでしょう。
可視化した業務フローをチェックし、自動化できる作業はないか確認してみましょう。請求事務を自動化することで、人的ミスを抑え、時間やコストも削減できます。いきなりシステムを導入するのが難しければ、手計算で行っている金額の算出をExcelで自動計算するだけでも効率化が期待できます。
大幅な請求事務の効率化を目指す場合は、請求管理システムの導入がおすすめです。請求管理システムは、請求書の作成・送付、入金管理、入金後の消込作業までを自動化できるシステムです。手作業で行う請求事務が少なくなるだけでなく、人的ミスの発生も防止できるでしょう。
人が行う業務を大幅に減らせるため、従業員の負担が減り、ほかのコア業務に集中できるのもメリットです。
請求管理システムはさまざまな種類があるため、自社に必要な機能があるかをよく確認して選ぶとよいでしょう。紙の請求書と電子請求書のどちらにも対応できるシステムを選べば、取引先の状況にかかわりなく利用できます。
請求代行サービスを利用するという方法もあります。請求代行サービスは、請求事務の一連の作業を依頼できるサービスです。請求書の発行から入金確認、消込など幅広い業務をアウトソースすることができ、代金の未回収がある場合は回収業務も任せられます。
請求事務にかかる負担を解消したいという方におすすめなのが、『マネーフォワード ケッサイ』です。
『マネーフォワード ケッサイ』は、請求書の発行・発送、入金管理、与信審査など、請求事務を一括で任せることができる請求代行サービスです。自社で行う必要があるのは顧客と取引先の登録だけで、面倒な請求事務をすべて一任できます。未入金の場合のフォローも行うため、支払いがない場合に催促するなどの手間もありません。
条件を満たすと100%入金保証を受けることもでき、未回収のリスクもなく安心して取引ができるでしょう。
請求事務は請求金額の計算や請求書の作成など、細かく煩雑な作業が多く、ミスが起こりやすいという課題があります。課題を解決するには、業務フローの見直しを行うとともに、ペーパーレス化・自動化などの検討も必要です。
請求代行サービスを利用すれば一連の請求事務を任せることができるため、請求に関わる業務を効率化でき、従業員の負担も大幅に削減できるでしょう。
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