請求明細書は取引における請求内容を相手方に伝えるため、請求書とともに送付する書類です。請求関連の処理がスムーズになるほか、記載漏れや過大請求を防ぐ役割があります。本記事では請求明細書と請求書の違い、記載事項、送付方法について解説します。
請求明細書は請求額の内訳を記した書類です。取引の際に発行が義務づけられる書面ではないものの、先方との円滑なやり取りの際に役立ちます。まずは、請求明細書に記載する事柄や発行するタイミングについて解説します。
請求明細書の記載項目にルールは存在せず、発行元によって書き方はまちまちです。一般的に記載する項目は以下の通りです。
など
請求明細書は、合計金額を省いたり、単価や取引数量を記載しなかったりと、発行元ごとに内容に差異はあります。しかし、記載事項はある程度決まっています。内訳がより明確になっていれば、請求額に関するトラブルを防げるでしょう。どの項目を設定すれば良いか分からず困ったときは、上に列挙した項目を参考にしてみてください。
請求明細書には、取引内容の詳細を記載します。以下の項目を記載することが一般的です。
取引額については、本体価格と消費税額を分けて記載するとトラブルを回避しやすくなります。内税表記をする場合は、「税込み」と記載してください。
商品・サービスごとの取引額や消費税だけでなく、取引全体の合計金額も記載することが一般的です。ただし、請求書に合計金額が記載されている場合は、請求明細書には合計金額を記載しなくても問題はありません。
見積書に記載した番号(見積書番号)を、請求書や請求明細書に記載することがあります。同じ番号で見積書や請求明細書を管理すると、取引内容を後日見返しやすくなるだけでなく、数量や単価などを確認しやすくなります。正確に取引を管理するためにも、見積書番号を請求書・請求明細書に記載するようにしましょう。
また、番号をつけて管理することで、二重請求や請求漏れを回避しやすくなります。二重請求は取引先からの信用を失う原因となり、請求漏れは信用の失墜だけでなく資金繰りの悪化の原因にもなりうるため、注意が必要です。
請求書・請求明細書を発行する日を記載します。なお、請求明細書は本来、請求書を補助する目的の書類のため、請求書と請求明細書は同じ発行日にしてください。
また、どの時点をもって請求書の発行日とするか、社内でルールを決めておきましょう。実際に発行・発送する日、もしくは商品やサービスの納品日など、管理しやすいようにルールを策定します。
請求ミスを防ぐためにも、請求先情報を正確に記載してください。請求先の担当者がいるときは、社名→部署名→担当者名(様)の順に記載します。担当者が決まっていないときは、社名(御中)、もしくは社名→部署名(御中)と記載します。
請求先の情報は見積書と同一に記載することが大切です。見積書に担当者名を記載する場合は、請求書や請求明細書にも忘れずに記載してください。
請求先情報に誤りがあると、大変失礼になってしまいます。また、請求先からの信用も失うことになりかねません。手書きで請求書や見積書を作成するとミスをしてしまう可能性があるため、住所録をパソコン内に作成し、コピー&ペーストで請求先情報を記入するなどして作成しましょう。
請求元情報には、次の内容を含めてください。
FAXやメールでやり取りをすることがある場合は、電話番号だけでなくFAX番号やメールアドレスも記載しましょう。また、担当者が決まっていないときは、部署名や屋号を記載することもあります。
請求明細書を発行するタイミングは原則、請求書と同じです。郵送であれば1枚の封筒に同封し、電子メールであれば添付ファイルでまとめて送信します。同じタイミングで発行すれば、取引先はスムーズに請求内容を確認できます。
請求書の内容を間違えて二重計上するヒューマンエラーの発生を防げるのも利点です。掛売りの場合、合計額や「一式」など基本情報しか記されていない請求書では取引の詳細が把握できません。請求書と請求明細書を同時に発行し取引の内容を明らかにすることで、支払時にトラブルが生じるリスクは減るでしょう。
何らかの事情で請求書や請求明細書を再発行するときは、次のルールを守りましょう。
取引先から紛失などの理由で、再発行を依頼されるかもしれません。そのようなときは、「再発行」と明記した請求書・請求明細書を作成して再交付してください。万が一、後から見つかったときでも、「再発行」の印があることで重複請求を避けられます。
請求書・請求明細書の内容に誤りがあったときや、取引先から誤りを指摘されたときも、再発行が必要です。ただし、発行元の一存で再発行をするのではなく、取引先から了承を得てから再発行するようにしてください。
また、取引先が了承したときは、元の書類を破棄するように依頼しましょう。その後、新しい請求書・請求明細書を発行し、再交付します。
経理の実務ではさまざまな書類を作成します。請求明細書と混同しやすいのが請求書や支払明細書です。これらは名称が似通っていますが、発行の目的や記載内容に違いがあります。請求書と請求書・支払明細書は何が違うのか解説します。
請求書と請求明細書の本質的な違いは、発行目的にあります。請求書は相手方に支払を求めるために発行しますが、請求明細書には取引の内容を確認する役割があります。
また、請求明細書には請求書の内容を補足する役割もあります。合計額だけでは読み取れない、具体的な取引にかかわる内容が含まれる場合もあるためです。
簡単にまとめると、両者の違いは「提供した商品・サービスの詳細情報を記載しているか」という点にあります。記載していない場合は請求書、記載している場合は請求明細書です。
たとえば、ECサイトの制作を依頼したケースを想定してみましょう。請求書と請求明細書の違いは以下をご覧ください。
【請求書の例】
【請求明細書の例】
近年は両者の書類を一つにまとめて、請求書兼請求明細書を発行する企業も珍しくなくなりました。送付書類の数が減り、作成側と受領側の双方に負担が少ない方法だといえます。
適格請求書とは、請求書の発行者が交付先に対して適用税率や消費税額を伝えるための書類です。インボイスとも呼ばれています。
適格請求書の記載事項は決まっており、すべてが網羅されていない場合は、適格請求書とは認められません。適格請求書以外の請求書を受け取ると、交付先(取引における買い手側)はその取引で発生した消費税の仕入税額控除を受けられなくなります。
適格請求書発行事業者登録をしている課税事業者は、適格請求書を発行することが求められます。課税事業者としての責任を果たすため、また、取引先が適切に仕入税額控除を受けるためにも、正しい適格請求書を発行・交付することが大切です。
適格請求書の記載事項は、以下を参考にしてください。
※小売業、飲食店業、タクシーなどの事業者が作成する書類に関しては、適用税率や税率ごとの消費税額、書類交付先の氏名もしくは名称についてなどの記載を省略できます。
支払明細書は企業間で金銭のやり取りがある際、請求前に金額と内訳を知らせるための書類です。請求書を発行する前に、確定した請求内容に問題がないか、相手方に確認を行うために発行します。
一方で請求明細書は請求書と同時に送る書類です。よって送付のタイミングも支払明細書とは異なります。また、支払明細書は企業間取引の際に発行する以外にも、給与明細の代わりに作る場合があります。
給与明細は支給額と控除額が混在し、内訳が分かりにくいものです。計算も複雑になりやすく、明細を発行することで従業員に何がどれだけ控除されたのか知らせる意味があります。
請求明細書のメリットは、発行元・送付先の双方が請求書の処理をスムーズに行い、請求漏れをはじめとしたトラブルの防止につながることです。
また、請求明細書を見返すだけで取引の詳細が分かり、効率的な業務を進行できます。請求明細書を作成する具体的なメリットを詳しく見てみましょう。
請求明細書を通して請求書の内訳が明確になり、確認の手間が減って、業務がスムーズに進行します。特に取引の件数が多い相手とのやり取りに効果があり、個別に請求発生日や金額を把握できるのは利点です。合計額のみの請求書を送付した場合と比較して、請求明細書もついてれば、請求金額との照合や、取引内容と支払対象に相違はないか一目で分かります。
万一請求内容に誤りがあった場合でも、どこが間違っているか即座に判明し、訂正作業もスムーズに進むでしょう。内訳が記された請求明細書を同封すれば、経理部門には請求書、仕入れ部門には明細書というように各部門での管理も行えます。
取引の内訳が分かる請求明細書には請求漏れや過剰請求を防ぐ役割もあります。
誤請求を発見できず、入金処理が行われてしまえば、返金処理やクレーム対応で業務が煩雑になってしまいます。請求書の明細をつければ水増し請求や不正をしていないという証明にもなります。
過去の取引記録を確認する際に、明細まで記載された請求書の写しもあると便利です。遡って取引履歴をチェックしたい場合、契約書や発注書を探し出さなくても、請求書があれば確認できるためです。
請求明細書の作成において気をつけたいポイントは次の5つです。
具体的に何に注意すべきか、なぜ意識しないといけないのか解説します。
請求書と請求明細書で書式を統一しましょう。フォーマットが揃っていれば確認しやすくなります。書類の体裁だけでなく、項目の書き方まで統一していれば、見比べたときに違いを見つけやすいでしょう。
たとえば請求書では単位が「m(メートル)」明細書では「㎝(センチメートル)」では比べにくいです。統一感を重視して、フォーマットの選定や書類の作成を行いましょう。
明細書をメールで送付する場合、事前に取引先に確認をとりましょう。請求書は企業が取り交わすさまざまな書類の中でも、金銭に関する重要な書類です。
そのため、メールでの授受を禁止したり、原本での受領を必須としているなど独自の規定を設けている場合があります。確認の相手は経営者である必要はなく、日常的にやり取りを交わす担当者で問題ありません。
明細に記載する取引内容は詳細かつ正確な記載が求められます。商品やサービスの名称は省略せずに記載し、請求書では「一式」と省略される個数についても具体的に記しましょう。
請求明細書のフォーマットや記載項目に明確なルールはありませんが、誰が見ても分かりやすい書き方を心がけるべきです。後で取引の内容を見返す可能性もあるためです。直接取引に関与していない別部門の人物でも理解しやすい書き方を意識しましょう。
追加発注や途中で単価の変更があった場合は、その旨も請求書に記載します。イレギュラーな案件を相手方に伝えるには備考欄の活用がおすすめです。
請求明細書の再発行が必要になるケースは、取引先の紛失または相手方からの誤記入の指摘などです。もちろん企業同士で送付する書類に誤記入や記載漏れがあってはいけません、しかし、人の介入がある以上、人為的なミスのリスクを完全にはゼロにできないという事情もあります。
取引先から指摘を受けて請求明細書を送り直す場合は、再印刷して送付し直すだけではなく、請求書番号を付して元の請求書との違いが分かるなどの対応が必要です。
相手方に送付した請求明細書は請求書同様、控えが必要です。請求書類の保存・管理では、2024年1月から原則すべての企業が対象になる、電子帳簿保存法に準拠しなければなりません。
電子メールで送付した請求書は電子データ保存のルールに沿った形式で、電子上での保管を義務づけられます。今まで紙に出力して保管していた企業は、業務フローの変更が求められます。
電子帳簿保存法の対象となるのは、電子取引により生じた書類です。現在の取引で該当するものを把握し、紙から電子への移行作業が膨大になるのであれば、必要に応じて電子保存に対応したシステムの導入を検討しましょう。
取引先ごとに取引の頻度が異なる場合、複数の管理手法を取り入れるのも効果的です。毎月、何度も取引が発生する相手方には、締め日までの取引を一通にまとめる一括請求によって請求書発行の負担を抑えられます。
毎月1回または不定期で取引が発生する相手方には、1回の取引ごとに請求明細書を送付する、都度請求が適しています。締め日を設けることなく、任意のタイミングで請求できるため、資金繰りの面でも便利でしょう。
請求明細書の送付方法は、郵送・メール・FAXの3パターンがあります。信書の形式に則った郵便または電子メールのPDF添付で行うのが一般的です。FAXは相手方から了承を受けた場合のみ使用できます。それぞれの送付方法の正しいやり方と注意点をみてみましょう。
請求書は郵便法や信書便法上、信書にあたる書類です。請求明細書を同封する場合も、信書の発送ルールに従って送る必要があります。具体的には普通郵便を利用しなくてはならず、宅配便やゆうパック、ゆうメールの送付は認められません。
送付する際は、定型郵便やレターパック、スマートレターなどを使用します。宅配会社でも信書の配送サービスを提供しているため、普段の方法で送付すれば問題ないでしょう。
請求書や請求明細書を送付する際は、ビジネスマナーを守る必要があります。代表的なマナーの一つが送付状の同封です。宛先や送付枚数を記載した送付状を別紙としてつけることで、取引先は送付内容を確認しやすくなります。特に請求明細書を送る場合、枚数が増えることを明示するためにも忘れずに同封しないといけません。
請求明細書を電子データに変換して、メールで送る方法もあります。改ざんの心配がないPDF形式はスキャナ読み取りで書面のまま保存可能で、表記の崩れが起きないという利点もあります。
ひと手間加えて、請求書と請求明細書を一つのPDFにまとめれば、保管の際にも便利です。メールで請求書を送る場合、取引先への送付方法の確認とともに、誰を宛先に入れるべきか聞いておきましょう。
企業によっては、請求書と請求明細書を別々の部門で管理する場合があります。通常やり取りを交わす経理担当者以外に、CCで他の従業員も含めてほしいという要望はないか確認したほうが良いでしょう。
請求書は国税関係書類に該当し、受領者には7年間の保管義務が設けられています。請求データをメールで送る際には、相手方が管理・保存しやすいよう、ファイル名への配慮が求められます。電子帳簿保存法の検索要件に合わせて「取引年月日」「取引金額」「会社名」などを設定するのがおすすめです。
取引先から請求内容の確認のため、急いで請求明細書を送付してほしいと頼まれたときは、FAXによる送信も可能です。ただしFAXの利用は相手方から了承を得た場合に限ることに注意してください。
解像度が低く書類の視認性が落ちることなどから、FAXによる書類の送付を禁止する企業もあるためです。基本的には緊急時をはじめ、相手方が要望する場合に限定した方法です。郵送での送付と同様、送付状も合わせて送付します。また、確認漏れや廃棄を防ぐため、送付後は電話で取引先に連絡を入れることを忘れないようにしましょう。
FAXによる請求書の送付後は、原本を郵送する必要があります。あくまでも緊急時の代替手段にとどまり、FAXを送付しただけでは手続きが完了しない点には留意しましょう。
請求明細書は、取引や取引先の数によって毎月送付する書類です。業務の負担を考え、テンプレートを活用して効率的に作成できる仕組みを整えることも検討できます。
請求明細書は必ず作成すべき書類ではなく、項目の規定もありません。しかし請求内容を相手方に正しく伝えるための記載項目はある程度決まっています。WordやExcelなどのオフィス系ソフトで使える無料のテンプレートを活用すれば、たとえば前月と比べて著しく取引量が増えた場合でも、項目を追加して容易に対応できます。
テンプレートを利用すれば、所定の項目に沿って情報を入力するだけで作成が完了するのも魅力です。
請求明細書は必ず送付が求められる書類ではないものの、発行する意義はあります。発行元・送付先双方で請求内容のチェックが容易になり、ミスの発生を防げるためです。また、後々取引の内容を確認したいときに詳細を把握しやすいのも利点です。
現在請求書のみ送付している企業は、少々面倒でも請求明細書を作成することをおすすめします。テンプレートを活用すれば、短時間で大量の書類を作成可能です。ぜひ請求明細書の作成を検討してみてください。
請求業務に関するお役立ち情報を、マネーフォワードケッサイ株式会社が提供いたします。マネーフォワード ケッサイは、掛け売りに必要な与信審査・請求書の発行発送・入金管理・未入金フォローなど、請求にかかわるすべてのプロセスを代行する企業間請求代行・決済代行サービスです。
受賞歴:ITreview Grid Awardにて、最高評価である「Leader」を受賞