本稿では、ここ数年社会問題化した「給与ファクタリング」について解説する。
「給与ファクタリング」とは、労働者個人が勤務先から受け取る給与(債権)を給与ファクタリング業者に売却し、給与支給日より前に、手数料を差し引かれた額で現金化するという個人向けサービスである。
ここ数年このサービスを手掛ける業者が増えたが、悪質な業者も多く、一昨年頃から、利用者のなかには、高率の手数料負担から、経済的に窮乏するケースが少なからずみられ社会問題化した。実際、悪質な業者から、年率で数100~1,000%超の極めて高額な手数料の支払いを求められるケースもあった。
こうした動きを受けて、金融庁は、昨年3月に、給与ファクタリングは貸金行為に該当するとの見解を示した。これに伴い、貸金業登録を受けていないまま、給与ファクタリングを業として行っている業者はヤミ金融業者とみなされ、その行為は違法であることになった。また、同月には東京地裁が給与ファクタリング業は貸金業に該当する旨の判断を示した。
給与ファクタリングが貸金業に該当する根拠は、給与の性質にある。労働基準法では、賃金(給与)は、①現金かつ日本円で、②労働者本人に直接、③全額、④毎月1回以上、⑤一定の期日に、支払わなければならない旨が定められている(賃金支払いの5原則)。業者が給与債権を譲り受けた場合でも、給与は労働者本人に直接支払われたうえで当該労働者が業者に支払いをすることになる。
このため、給与ファクタリングでは、業者から労働者への資金の提供だけでなく、業者による労働者からの資金回収を含めた資金移転システムが構築されており、これは経済的に貸付と同様の機能を有していると考えられている。
こうした行政等の対応を受けて、現在では給与ファクタリングは下火になっているとみられるが、いずれにせよ、無登録の給与ファクタリング業者を含めヤミ金融業者は絶対に利用すべきではない。
(参考情報)
金融庁:「給与ファクタリングに関する注意喚起」
https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html#02
警視庁:「無登録の給与ファクタリング業者に注意!」
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/yamikin/kyuyofakuta.html
以上
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