本稿では、ここ数年社会問題化している、2者間ファクタリングを装った実質的には貸付である「偽装ファクタリング」について解説する。
ファクタリングの一種である2者間ファクタリングは、主として中小企業の資金調達手段として活用されている。当社では、「マネーフォワード アーリーペイメント」という名称で同サービスを提供している。
2者間ファクタリングは、ファクタリング業者に売掛債権を売却することで資金を調達するが、売掛先にはそのことを知られない。中小企業にとっては、売掛先に債権を売却したことを知られるとその後の取引に影響が出るという不安がある。この点が、2者間ファクタリングが活用されている理由である。
ここで注意が必要なことは、ファクタリングサービスを提供していると謳う業者のなかには、2者間ファクタリングを装い高額な手数料を要求したり威迫的な取立て行為を行ったりする「偽装ファクタリング」を手掛けている悪質な業者が少なくないことである。
悪質業者による偽装ファクタリングに手を出してしまった結果として、多大な金銭的被害を被ったり威迫的な取立てを受けるなどの企業も出てきているが、裁判で、悪質業者による偽装ファクタリングは貸付行為であり貸金業登録を要する(登録していなければヤミ金業者に該当する)との判断を示されたケースも散見されている。
偽装ファクタリングにはいくつかの特徴があるが、通常の2者間ファクタリングとの決定的な違いとして、売掛先からの回収不能リスクを誰が負担しているかという点を説明したい。
まず、通常の2者間ファクタリングでは、売掛先の支払い不能リスクは売掛債権を購入した業者が負担する。一方で、偽装ファクタリングでは、一般的に、悪質業者は売掛先の支払い不能リスクをファクタリング利用企業に負担させている(注)。たとえば、売掛先が支払い不能になったら、悪質業者は一旦買い取った売掛債権をファクタリング利用企業に買い戻させることで、損失を免れようとするのである。
(注)通常のファクタリング業者のように売掛先の支払い不能リスクを負担していることを「償還請求権なし(ノンリコース)」、悪質業者のように同リスクを負っていないことを「償還請求権あり(リコース)」と呼ぶ。
この点、売掛債権担保貸付の場合、担保価値が減価したとしても、借入先の要返済額は変わらない。したがって、偽装ファクタリングは、実質的に売掛債権担保貸付と同一の経済行為であるとみなすことができると考えられる。そうであれば、過去の判例にもあるように、貸金業登録が必要であり、登録されていなければヤミ金業者ということになる。
このように、万が一にも偽装ファクタリングを利用することはあってはならず、細心の注意を払ったうえで、通常の2者間ファクタリングを提供している業者のサービスを利用することが重要である。
(参考情報)
金融庁:「事業者向けファクタリングに関する注意喚起」
https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html#03
以上
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