請求書払いとは、商品やサービスの引き渡し後に請求書を送付し、指定した期限までの入金を求める支払い方法です。取引ごとに都度請求書を発行する手間がなくなり、業務効率化や会計処理上のミス減少が期待できます。
一方で貸し倒れや不渡りが起きるリスクも高まることに注意が必要です。今回は請求書払いのメリットやデメリット、請求フローの流れについて解説します。
請求書払いとは請求書が届いた後、期日までに銀行振込等を行う方法で、掛け売りの一形態です。
企業間取引では商品やサービスの受領と同時に代金が支払われるのが一般的ですが、請求書払いでは上記の原則が適用されません。
具体例としてはECサイトのコンビニ後払いが該当します。オンラインでの購入が完了した後、郵送で届いた請求書に記載された期日までに、店頭で代金を支払います。
請求書払いは企業間取引や個人事業主との取引では一般的な支払い方法です。
双方の信用を担保に成り立つ方式であるため、与信取引とも呼ばれます。納品完了と支払いにタイムラグが生じてもかまわないと考えるのは、取引の相手方を信用しているからです。
取引相手との信用関係が築けていない段階で請求書払いの導入を打診すると、断られる可能性もあります。
請求書払いは多くの企業で利用しており、BtoB取引において一般的な取引方法です。一方で作業量の増加をはじめ、生じるデメリットを看過できず、導入が見送られる場合もあります。
請求書払いの導入が業務効率化をもたらし、企業に良い影響を与えるとは限りません。場合によっては取引先からの信用の低下を招き、取引停止や失注のリスクが生じます。
ここでは、請求書払いのメリット・デメリットを、請求側と支払う側に分けて説明します。
請求する側(請求書を発行する側)のメリットは以下の3つです。
請求書払いのデメリットは以下の3つです。
ここでは、メリット・デメリットの具体的な内容を解説します。
請求書払いを導入した場合、一定期間内に発生した取引分はまとめて請求できるので、請求書の発行や入金確認を都度行う手間がなくなります。
取引のたびに請求すると、単純に業務量が増えるばかりか、利益を生み出す業務以外の負担が増えるので、本来の業務に集中しにくくなります。特に入金後に商品やサービスを提供する取引の場合、よりこまめな確認作業が必要です。
請求書払いを導入すると、基本的に請求書の発行や入金確認の頻度は月一で済みます。作業が減るだけでなく、会計処理におけるミスの削減にもつながるでしょう。
請求業務はミスがあってはいけない仕事です。請求内容に誤りがあると、税務調査により税務署から指摘を受け、追徴課税などのペナルティを受けることがあります。
請求書払いの導入により、請求業務の簡略化につながり、通信費や人件費などのコスト削減も実現するでしょう。業務負担が減ることで、取引先が増加したときに、誤って別の企業に請求書を送付してしまうような単純なミスも防げる可能性があります。
請求書払いの一番のデメリットは、未入金リスクの高さです。サービスを提供した後、取引先の経営状態が悪化し、債権が回収できなくなるケースも起こり得ます。また、未回収が発生した場合、催促を行う手間も生じます。
貸し倒れの金額が大きいときや頻発する状況下では、資金繰りにも悪影響をもたらします。したがって、取引先の経営状態に不安がある場合は、定期的な与信調査が必要です。しかし、これらには工数が伴うため、業務量の増大を引き起こします。
受け取った請求書に基づき、期日までに支払いを行う側のメリットは以下の3つです。
一方で支払いを行う側のデメリットは以下の2つです。
それぞれのメリットやデメリットについて解説します。
請求書払いを導入すれば、原則として支払業務が月一回で済むので効率的です。銀行振込の場合、振込手数料の節約にもつながり、業務負担・コスト負担の両方で良い影響が生じます。
振込のタイミングを先延ばしにできるため、余裕を持った資金繰りが実現する可能性もあります。一般的には1ヶ月程度支払いを遅らせることが可能です。
翌月の売上を見込んで予算を確保でき、ミスのない支払い計画の立案にもつながります。債務の弁済を月一回にまとめられるので、担当者の業務負担を軽減できるでしょう。
請求書払いの最大のデメリットは、支払い忘れや遅延によって取引先からの信用が悪化するケースがあることです。
営業と経理の連携がうまくいかず、受領した請求書の存在を忘れ、支払いに漏れが発生することがあります。
支払い忘れは請求書払いでなくても起こり得ますが、請求書払いの場合、一度の金額が大きくなるので取引先にとっては由々しき事態です。信用の損失だけでは済まず、取引先の資金繰りの悪化や資金計画の策定にも影響を与えかねません。
請求書払いは便利な反面、今後の取引の継続にも悪影響を与える可能性があることを認識しましょう。
請求書払いの導入に伴い、取引先からの与信調査に対応しなければなりません。直近の決算書類等の提出を求められるなど、調査を通過するための業務が発生します。
請求書払いの基本的な業務の流れは「与信管理」(契約の締結)→「請求書の送付」→「入金消込」→「入金催促」です。
入金が確実に行われるように事前の与信管理が重要です。請求書の送付や入金消込、入金督促などの工程は従来の処理と相違ありません。
請求書払いの各工程について、行うべき作業や注意点を解説します。
契約前に取引先の支払い能力を審査する与信調査を実施します。請求書払いは後払いのため、支払い遅延や不渡りを起こさないために、契約の相手方の経営状況を精査します。
与信管理規定に基づき、与信基準を決め、運用するのが一般的です。与信管理規定とは企業ごとに与信業務に関して定めたマニュアルやテンプレートを指します。
取引先に対して与信審査をすることで支払い能力を確認し、問題がなければ支払い期日や請求書の受け取り条件などをすり合わせるという流れです。
審査では請求書払いの可否だけでなく、取引先ごとに与信限度額を決めます。限度額とは倒産や貸し倒れリスクに備えて、取引先の経営状態も踏まえて決めた債権額の上限のことです。
原則、上限額を超えた場合は取引の中止や拒否の対応がとられます。与信限度額は高すぎると不良債権のリスクが高まり、低すぎても売上の低迷を招くので、適切な水準の設定に努めましょう。
請求金額の確定後、請求書を作成して取引先へ送付します。請求書の記載項目の例は次のとおりです。
請求書のタイトルは「御請求書」や「〇月分御請求書」と記載するのが通常です。請求番号は社内の管理に用いる通し番号を指します。宛名には取引先の会社名・住所・担当者名などを書き入れ、商品名・単価・数量・消費税額・消費税率・合計金額などを記載。
振込先には口座情報のほか、相手方に振込手数料の負担を求める場合、その旨を記載したほうが親切です。
請求書の発行日は取引先の締め日や支払日に合わせて決めるのが作成のポイントです。請求書の送付方法は紙による郵送や電子データ化してメールで送る方法、請求書発行クラウドサービスの活用などが考えられます。
送付した請求書通りに支払いが行われているかチェックし、入金が確認できた場合は入金消込を行います。
売上が直接手元に入るまでにタイムラグが生じるため、事前に売掛金の処理が必要です。入金消込とは期日に無事入金が確認できた場合、金額を照合のうえ、売掛金のデータを消す作業です。
売掛金と実際に入金された額の突き合わせは担当者の目視のほか、システムで自動的に処理が行われる場合もあります。
入金回数が多いほど確認の手間がかかるため、請求書払いを導入したほうが業務の負担軽減につながることがあります。
請求書の記載の期日までに入金がされていない場合は取引先に確認し、入金の催促をしてください。
顧客との窓口は営業担当が担うため、声をかけるのは経理担当者ではないのが一般的です。確認し、ミスや勘違い、入金期日を忘れていたなどの事情があれば、入金の催促を行います。
問題なのは故意に支払いを行わないケースや、経営悪化ですぐには入金できないなどのケースです。催促だけでは目的を達成できないので、次の手段として督促状を発行します。
督促状には期日を設け、再度振込の確認が取れなかったときは法的手続きに進むとの文言を添えましょう。
請求書払いを取り入れる際に注意すべき点を紹介します。まず与信管理は契約当初に一度行えば良いものではなく、定期的に行う必要があります。
契約後のトラブルを防ぐために、支払期日や振込手数料の負担などの条件面について事前に詳細を話し合いましょう。また、法律上義務があるわけではないのですが、請求書への印鑑は押したほうが良いこともあります。
取引先の経営状況が変わることもあるため、継続的に与信管理をする必要があります。与信審査を怠ったことで赤字が常態化して倒産寸前の状況であったのに気づけず、未回収につながる恐れもあるからです。
複数の請求書払いで回収できないと経営管理に不安がある会社だとみなされ、信頼度の低下を招きかねません。
与信限度額は期限を定めて、最低でも年に一回の見直しを推奨します。取引金額が当初の見込みを超え、限度額を超過することになったときは増額します。
逆に信用不安のサインが見られる、実際に貸し倒れが発生したなどの状況では与信限度額を減らする対応が必要です。
取引後にトラブルにならないように、事前に支払期日や振り込み手数料などの条件を取引先とすり合わせる必要があります。
期日は他の会社と統一を図るのが基本です。一般的には、月末締めで翌月末、翌々月末支払いとされます。
必ずしもすべての企業がこの基準を守るべきではありませんが、一社だけ異なるとミスを引き起こしかねないため、先方への確認が必要です。
請求する側はできるだけ早く売掛金を回収したいとの希望を持っています。しかし、期日の余裕がないと今度は回収不能のリスクが高まります。
余計な気を回さずに済むよう、他社と同じ期日の設定がおすすめです。
法律上、請求書への印鑑の押印は義務づけられていません。とはいえメリットを考慮すると捺印がおすすめです。請求書の偽造を防ぎ、ビジネスマナーを遵守する会社として信頼度の向上が期待できます。
取引先によっては、印鑑がないと請求書が受理されない場合もあるため注意が必要です。
一般的に請求書で使われるのは会社の認印の役割を持つ角印です。法務局で印鑑登録を行った丸印や、口座開設時に金融機関へ届け出る銀行印などを活用しても問題ありません。
しかし重要な印鑑を多用すると、摩耗や紛失のリスクを高めます。請求書には何度も繰り返し使える角印の活用が適切だと考えられます。なお、請求書には原則として記入ミスをした場合に使用する訂正印は使えません。
作業プロセスの煩雑化と与信管理の難しさを背景に、請求書払いの導入を躊躇する企業があるのも事実です。元々取引先が多い場合、すべての取引相手に対して、与信管理を実施する手間が生じるので、重い負担がのしかかります。
ある程度のノウハウがないと何をどのように調べて良いか検討もつかず、右往左往してしまう危険も。「後払いを導入したいけどうまくいかない…」とお悩みの人は、請求書業務の効率化に役立つ代行サービスの活用がおすすめです。
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万一入金が滞り、貸し倒れが生じた場合でも入金を保証するため、安心して利用できます。
必要な作業に応じて請求業務をアウトソーシングできるので、ぜひ活用してください。
請求書払いの導入によって、請求書の発行や入金確認などの業務を一括で行うことで、業務負担の軽減や人件費の削減、ミスの減少など多大なメリットをもたらします。
一方で従来の業務フローに加えて、取引先ごとに与信調査が必要となることから、導入に踏み切りにくいのも事実です。
また、請求書払いは後払いのため、売掛金の未回収リスクを減らすために、事前に支払い能力を調査するのは必須です。
与信管理は一度だけでは済まず、取引先の経営状況の変化に合わせて定期的に行わなければなりません。
「請求書払いを導入したいけど与信審査が面倒。ノウハウが足りていない」とお悩みの場合、請求書代行サービスの活用がおすすめです。
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